歌舞伎 夏祭浪花鑑  
なつまつりなにわかがみ

日時:2004.09.26(Sun) 22:00 〜 NHK教育放送「劇場への招待」(2004年07月NYリンカーンセンター収録。平成中村座NY公演より)
作:並木千柳、三好松洛、竹田小出雲

配役:
団七九郎兵衛:中村勘九郎
団七女房お梶:中村扇雀
三河屋義平次:笹野高史
玉島磯之丞:中村芝のぶ
傾城琴浦:中村七之助
大鳥佐賀右衛門:片岡亀蔵
一寸徳兵衛:中村橋之助
釣船三婦:坂東弥十郎
ほか

内容:
 幕が開く前から大勢の役者たちが夏祭りをうろつくように、団扇で扇ぎながら客席内を思い思いにウロウロ。その内なにやら小競り合い。それを仲裁に入った団七が反って喧嘩に。団七は牢に入ることになってしまう。
 幕が開き、まずは英語のナレーションによる登場人物紹介。

序幕
 第一場 お鯛茶屋の場

 傾城琴浦に現を抜かす磯之丞(女のような顔の優男)を家に帰すために徳兵衛が一芝居を打つ。これに心を動かされた磯之丞が家に帰ると言い出し、芝居は成功。この芝居を頼んだのはお梶であった(磯之丞は彼女の主筋のようである)。

 第二場 住吉鳥居前の場
 磯之丞の父の計らいで(磯之丞の身を守ることを条件に)釈放されることになった団七を兄貴分の三婦が迎えに来る。ヒゲも月代の伸び放題。髪結い床でさっぱりして来い、と三婦は団七を床屋に入らせる。サッパリして出てくる団七。そこへ磯之丞を追って来た琴浦に出合う。磯之丞の行き先を教えてやる。更に琴浦を追って、徳兵衛がやって来る。彼は磯之丞と琴浦を引き離そうとしているのだから、団七と喧嘩となる。それをお梶が止める。主として磯之丞を思う気持ちは二人とも同じ。互いの着物の片袖を交換して義兄弟の契りを交わす。

 第三場 釣船三婦内の場
 三婦の家で磯之丞と琴浦が匿われている。夏祭りの獅子舞(もどき)が去ると、三婦が帰宅。徳兵衛女房お辰(勘九郎、二役)が訪ねてくる。三婦の妻おつぎが磯之丞を玉島(磯之丞の実家、備中)へ送ってくれるないかとお辰に頼む。それでは男が立たぬと三婦は反対。なぜなら色気のある(器量のよい)お辰と同道させるのは心配だと。ならば女が立たぬと、お辰は火箸で自分の頬を焼いてまで意欲を示す。
 琴浦を狙っている佐賀右衛門の手下二人が、琴浦の居場所を嗅ぎ付けて三婦の家に乗り込んで来る。三婦は二人を追い出し、そのまま花道へ。続けてお辰が磯之丞を連れ立って玉島へ向けて出て行く。
 更にお梶の父・義平次が訪ねてきて琴浦を籠に乗せてどこかへ連れていく。三婦、団七、徳兵衛が揃って帰宅すると琴浦がいない。連れ去られたと知って団七は一人それを追う。

「だんじり」の演奏。鉦と太鼓のノリのよいリズム。祭りらしい。

 第四場 長町裏の場
 琴浦を乗せた籠と義平次を追いかけてくる団七。引き留められた義平次は娘婿にあたる団七を何やかやと責める。義平次は琴浦を佐賀右衛門に引き渡して金をもらおうとしている。団七は何とか義平次を騙して籠を戻す。騙されたと知った義平次は激怒し、争いになる。その内、団七は義父を斬り殺してしまう。この間、舞台はほとんど暗闇同然で、後見が掲げる灯りで照明を得ている。次第に形相が変わってくる団七。舞台は不気味な殺害現場となり、いつの間にか色を付けた水を溜めた水溜りが出来ている。義父を殺した後、ハッと我に返る団七。自分のした事の重大さに気付き、思わず合掌。そして花道へ。そこへ徳兵衛が現れ、団七が忘れていった片方の雪駄を拾う。

二幕
 第一場 九郎兵衛内の場

 徳兵衛が団七を訪ねてくるが義父の死がショックと偽って彼は臥せっている。徳兵衛は団七に玉島行きを誘う。用は無いと断る団七。その彼に徳兵衛は例の雪駄を見せる。白を切る団七は再び床へ戻る。何を思ったか徳兵衛はお梶を自分のものにしようと彼女に手を出す。気付いた団七と斬り合いとなる。義兄弟の縁も切る。そこへ三婦が仲裁に入る。義平次殺しの容疑で団七を捕らえに役人が来る。それを知って徳兵衛はお梶や子の市松を逃がす。

 第二場 同 屋根の場
 舞台にミニチュアの町並みが広がる(屋根の上から見た眺めだろう)。大勢の捕り手らと団七との格闘が始まる。梯子を使った大立ち回り。小さな人形を使ったのはご愛嬌か。徳兵衛の助太刀に入る。格闘の末、逃亡を始める二人。いつしかパトカーのサイレンが鳴り響く。次第に二人の動きがスローモーションとなり、動きが止まると、その背後にはピストルを構えたアメリカ警察官が居並ぶ。これで幕。客席から割れんばかりの拍手が起きる。

 幕の後、出演者全員による挨拶。「だんじり」の演奏が響く。観客たちはスタンディングで拍手を送る。

メモ:
 日本人にも難しい歌舞伎。観客には英語の解説があったようだが、どれくらいアメリカ人に理解されただろうか。しかし何かしら彼等にも伝わるところがあったのだろう。幕の後の彼等の拍手が物語っている。
 一番の見所は親殺しの場面だろう。暗い舞台での勘九郎と笹野高史の鬼気迫る演技。役者たちが客席の間を行ったり来たりするなど、観客たちも歌舞伎を身近に感じることが出来ただろう。「だんじり」の演奏は如何にも日本的だが、そのリズムに乗って体を動かす客の姿も見られた。
 

参考資料: 歌舞伎ハンドブック(\1,500 三省堂)

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更新日: 04/10/17