スーパー歌舞伎 新・三国志U〜孔明篇  

日時:2004.02.22(sun) 22:00 〜 NHK教育放送「劇場への招待」(収録・2002年3月2002.3月 福岡・博多座(スーパー歌舞伎シリーズ第八弾))
原作:羅貫中「三国志演義」
演出:市川猿之助

配役:
諸葛亮孔明:市川猿之助
司馬懿仲達:金田龍之介
関平、孫権(二役):中村歌六
彩霞、曹叡(二役):市川門之助
ほか

内容:
 「新・三国志」の続編。
 劉備、関羽、張飛なき後、蜀の国を一人で背負うことになった軍師・孔明。キーワードは夢。

第一幕 
・プロローグ
劉備、関羽、張飛が孔明を軍師に招く回顧シーン。舞台後方の台上に3人が並ぶ。孔明が登場。台が下がり彼ら姿を消すと、孔明の愛しい人・翠蘭がセリ上がりで登場。劉備らと国家統一のため立ち上がることに決めた孔明は翠蘭としばしの別れを惜しむ。しかしそれは永遠の別れであった。彼女が弾く琴の音色が以後の本編中にも重要な役割を担う。

・第一場 南方国
南方国の主・孟獲(象に乗る)と木鹿大王(孟獲の叔父)らは魏と結んで、劉備ら亡きあとの国力の衰えた蜀を攻めようと企んでいた。まさに孔明率いる蜀軍との戦争が始まらんとしていた。京劇か中国雑技団のようなアクロバティックな演技が始まる。孫悟空を思わせる大勢の猿面の男達。
孔明が関平、馬謖、安仁らを伴い登場。忽ち南方国との戦いとなる。南方国には白黒の(?)虎が戦力になっている。蜀はこれに火薬の力で応戦。蜀が優勢となり、孟獲は捕らえられる。これを解放する孔明。が再び戦いに。孟獲はまたしても捕らえられると、ついに孔明に屈服。孔明は助命し、両国は友好を結ぶことに決する。

・第二場 魏の都・洛陽
魏の帝・曹叡は連携していた南方軍が蜀と結んだことを知り、南方国に遠征中の魏軍の不利が不利と考え、軍師・仲達に援軍の派遣を命じる。援軍の指揮を姜維に命じる。

・第三場 南方国・孟獲の館
孟獲の館に招かれていた孔明ら。その夜、孔明の寝所に孟獲の妹・祝融が忍んでくる。自分を抱けと迫る彼女に、孔明は本当の恋をせよ、と説く。

・第四場 南方国・朱堤城
姜維が率いる援軍が魏軍の撤退のために向かう。蜀軍と激突。援軍によりなんとか総崩れを免れる魏軍。孔明が姜維へ和戦し、戦場から双方が撤退することを申し込んだのだ。

・第五場 南方国・森
帰国途中の蜀軍。森の中で突然、毒矢が孔明を襲う。木鹿大王が登場。彼は蜀との講和を望んでいなかったのだ。大王軍との戦い。

第二幕
・第一場 蜀の都・成都、孔明の館
蜀までついてきた祝融らの看病で一命はとりとめた孔明が帰国。

・第四場 魏の都・洛陽
孔明が30万の大軍で魏へ攻め込んだとの知らせを聞く仲達。

・第五場 魏の国・天水城
蜀軍は天水城を攻めていた。軍律違反で姜維は魏によって捕らえられそうになっていた。孔明は姜維を味方にしたいと考え、これを一旦は捕獲するが解放する。更に進軍するべく馬謖が先陣を申し出る。孔明は彼に陣立てを指示し、補佐として王平を付ける。

・第六場 魏の国・街亭
馬謖は孔明の意に反し、街道沿いではなく山頂に陣を構える。王平はこれに反対し、部隊は分裂。これが敗北につながる。

・第七場 魏の国・天水城
街亭で馬謖らの部隊が大敗したとの知らせを受ける孔明。一度は手にした魏の城であったが、撤退の時間稼ぎのため関平(関羽の義理の子)らを城には残し、進軍中の仲達軍を迎え討たせる。城に迫った仲達軍に対し、門を開いて打って出る関平ら。舞台には天上から水が滝のように流れ落ち、双方が水をかぶりながらの戦い。関平はここで命尽きる。

・第八場 魏の国・西城
関平の死が孔明に知らされる。かつての大軍も兵三千に減じ、仲達軍が迫り西城も危うい。孔明は応戦も撤退も命ぜず、城を開け放ち、夜その楼門の上で孔明自らが琴を奏でる。それを聴いた兵士たちは夢見る心地。これを見た仲達は何か奇計に違いないと怪しみ、進軍を止め撤退を始める。所謂、「空城の計」である。九死に一生を得る蜀軍。
安仁、馬謖らが戻る。縄を掛けられた馬謖には四万の兵を失った罪がある。助命を請う王平ら。しかし軍律違反を曲げることは出来ない。自らの後継と期待していた馬謖に孔明は死罪を申し付ける。これが名場面「泣いて馬謖を斬る」である。
孔明のところへ姜維が馬謖の件でお悔やみを言いに来る。蜀と魏の違いを語る姜維。彼は蜀の配下に加えて欲しいと願い出る。手を取り合う2人。

第三幕
・第一場 呉の都・建業
呉の王・孫権、軍師・陸遜らを孔明がはるばる訪ねてくる。同盟を結ぶ二国。魏を攻めるために援軍を願い出る孔明に、孫権はそれを断る。このとき孔明は重病に冒されており、一日も早い国家統一事業の成功を望んでいた。

・第二場 蜀の都・成都、孔明の館
帰国した孔明を姜維が訪ねる。孔明は秘策を思い付く。孔明は姜維に昔、翠蘭からもらった桃の花弁を姜維に与える。実は姜維もこれと同じものを持っていた。

・第四場 蜀の都・成都
残りの命が短いことを悟った孔明は魏との最後の戦いを決意し、ずっと従ってくれた祝融を南方国へ帰そうとする。
安仁、王平に秘策を明かす姜維。上方谷の兵糧倉に運ばせた麦俵は魏軍を誘う囮であった。蜀の帝・劉禅が孔明の出陣を見送る。

・第五場 上方谷
蜀が運び込んだ兵糧倉から麦俵を運びだそうとする仲達軍。俵の中に火薬が詰められているのに気付く。しかしその時、一斉に火の手が上がる。蜀・魏両軍が激突。魏には不利な状況であったが、雨が降り出すと火の勢いは収まり、これ幸いと魏軍は撤退を始める。決着をつけることは出来なかった。

・第七場 五丈原
再び病に倒れる孔明を夕暮れ、春琴が琴を持って訪ねてくる。彼女は翠蘭の娘であった。祝融が翠蘭のその後について調べていたのだ。なんと姜維は春琴の兄であった。そして翠蘭の死も知る。翠蘭と瓜二つの春琴が琴を弾く。あの曲だ。音色を聞き、孔明は安心したかのように、「信ずれば夢は叶う」と言い残して息絶える。孔明の死を秘したまま軍は撤退する。魏軍には孔明の死の噂が伝わる。そこへ仲達もいつか聴いた琴の音色が響くと、孔明は生きているに違いないと退却を命じる。「死せる孔明に走らされる仲達」である。またしても救われる蜀軍も撤退を始める。それを宇宙の彼方で見守る星になった孔明。翠蘭も現れる。宙乗り(ケレン)で孔明と翠蘭は空中浮遊を始める(かなり高度がある宙吊り)。

・エピローグ
桃園での祝融らの舞い(京劇風)。花弁が舞い落ちる。花道へ退場すると、続いて孫権の呉軍(緑が基調の衣装)が登場、これが退場すると仲達の魏軍(紫が基調)が登場。次は馬謖、その子と妻・才鴻(祝融の妹)。退場後、姜維ら蜀軍(赤が基調)が登場。最後は孔明と翠蘭。

メモ:
 歌舞伎を超える歌舞伎、”スーパー歌舞伎”。噂には聞いていたが初めて見たそれは、歌舞伎とは一風違っていた。音楽は伝統楽器ではなく西洋音楽だし、メイクもちょっと違う。台詞回しこそ歌舞伎だが、アクロバットは京劇っぽい。舞台が中国だから仕方がないのか。すすんで京劇を取り込んだのか真意は定かではない。宙乗りは猿之助ならでは。

参考資料: 歌舞伎ハンドブック(\1,500 三省堂)

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更新日: 04/03/27