News >「仕事日記」2007年3月


3月3日(土) クロニクル
6連弾もそうだがこのクロニクルバンド(といえればの話)も去年9月以来の再演でまとまりがグンとアップした。僕から見たところ、いずれ名うてのミュージシャンたちの持ち味や卓越した技量、サポート参加で各人ワンコーナーしかフィーチュアリングがないにも拘わらず、いやそれだからこそ雇い主(それは僕だか音楽監督の三木か主催者か、はたまた直接ギャラをくれるエージェントか等はともかく)に対してではなく、目前の聴衆そのものに、独立・確立した一プレイヤーとしてのアピール・アイデンティティをかけて、ある者はクールに、ある者は熱く演奏する様子を味わい、楽しむことが出来た。

ところでセンテンスが以上に長くなっているのはここのところ読んでいるジョイスの影響か。同じアイルランド人でありながら、ジェイムス・ジョイスの和訳よりハーンの原文のほうがわかりいいのは不思議。尤もこちらは“怪談”だからね。能祖君と司馬遼太郎。別方面からのそれぞれの影響がとおい島国で交差するも愉。
3月4日(日) 6連弾 ひたちなか
クロニクル後そのままひたちなかに入って(地名がひらがなというのはこういう時にもややこしくなる)宿正面のすし屋で飲んでいるとテレビのバラエティで世田谷線特集。住人である島健と国府が大いに盛り上がる。まぁこの面子(この二人プラス塩谷)はそうでなくてもわいわいやってはいる。

本番のボレロはじわじわと胸に迫るものがあった。前回山下さんが“オケのメンバーに聞いたことのある、パートとしての喜びというのを実感したよ”と仰っていたことが少しは実感できた気がした。

打ち上げになんと洋輔さん、先日のワイン残り4分の1ほどを皆のために持参。澱が相当溜まっているとのことでフィルターも持参。ゆっくりと落ちてくるのを会館のご好意で用意していただいたワイングラスで少しずつ回し飲み。鉄さび色した六十有余年のワイン。こうなると感想などは起こってこないものですね。旨いとか好みとかは、やがて思い出として湧いてくるであろう印象を待つことにしよう。
3月6日(火) レコーディング@山中宅
名古屋NHK夕方のニュース番組のテーマ曲を録音。オープニングや天気予報など。演奏時間やモチーフ選び、打ち合わせなどには時間がかかったが、録音事態は手馴れた行程でスムース。
今回打ち込みを手伝ってくれた山中さんは僕がメザーハウスで教えていたごく短い時期に生徒でいたそう。ギターも弾くがドラムのパターン作りがすごくうまくて早くて、音楽の理解、曲想のくみ取りがよく、才能を感じた。ベースの音は二人一致でジャコ・パストリアスのフレットレス。気持ちよく音数が多くなっていく。テレビではこの音域はさほど出ないから大丈夫。
3月7日(水) M’s 新発田
瀬木貴将で随分お世話になった小柳さんに今度はM’sで呼んで頂いた。つい先日は近くの別場所で瀬木と弘太のデュオを制作してくれたそうな。広がりというのか、狭まりというのか。
3月8日(木) ソロ 浜松ヤマハ
-----ミュージカルスタンダード
All The Things You Are
My Favorite Things
-----ジャズスタンダード
Round ‘bout Midnight
A Night In Tunisia
-----バッハ
ゴールドベルク変奏曲より アリア〜Var1、Var25
-----ジャズマン・オリジナル
Spain
So Tender
-----日本人ジャズマン・オリジナル 
板橋文夫 グッドバイ
本田竹広 T,T,C And T
-----シャンソン
松田昌  孤独
バルバラ 群集
-----佐山オリジナル
Sand Witch 3-2-3
Tears Of Nature
-----ラスト
ガーシュイン ラプソディ・イン・ブルー

Enc1: ???

店長の趣味は靴磨き。出かける前の10分間はひたすら磨いて瞑想段階にまでなるという。男の趣味としては相当良い。たしなみか、、、。
3月10日(土) ジャズ絵本 愛知県岩倉市(その幼稚園 卒園コンサート)
園長さんのご子息がアメリカにも留学したことがあるほどのジャズドラマー志向で、その彼に無理やりつれてこられたM’sライブ@スターアイズを見て、卒園公演をジャズで、そのお申し出だったのをアレンジしてのジャズ絵本。
幼稚園の卒業のはなむけに絵本の朗読会とは洒落ている。ここの園は毎年コンサートを卒園児にプレゼントするそうで、素晴らしいことである。特に今年は一年を通じて絵本の読み聞かせに重点を置いてきたとのことでタイムリーな企画でもあった。
3月11日(日) 三木俊雄 結婚披露宴
新郎側の主賓で呼ばれて少々迷惑気味。乾杯の音頭は小曽根真氏。奥様は女優さんで和田誠さんとも交流があるとのことで話がそこそこ弾んでよかった。
居並ぶジャズミュージシャンのつぎつぎのセッションの中。大坂昌彦がさすがにピカいちだったが、なみいるミュージシャン特にドラマーどもを容赦なくやっつけちゃう演奏で、大人気ない、といえば言えなくもない。
3月12日(月) The Wada Makoto Song Book レコーディング サウンドシティBst 
M’sに道下を加えてのリズムセクションに一曲一人のゲストプレイヤーを迎えて7曲録りおろし、東芝にある7曲の音源とあわせて、和田誠作品14曲のアルバムを作る。歌はすべてデュークエイセス。とても素敵な企画。アルバムというのはこのようにしっかりした動機とコンセプト、そしてタイミングで制作したいものである。そうでなくても和田さんとの仕事は書いていても弾いていてもとても楽しくやりがいを感じる。

Four Hands Groove ブルースアレイ
Blues Everywhere
Three Views Of A Secret
The Dog
You Hide Something
Cantarope
It Don’t Mean A Thing If It Ain’t Got A Swing
In Your Quiet Place
Summer Night
T,T,C And T
On Fire
3月13日(火) The Wada Makoto Song Book レコーディング サウンドシティBst
今日からコーラスも録るがデュークの皆さん頑張って歌ってくれている。年をとって(平均70歳そこそこ)予習をじっくりするようになっているのが良い方向に向いているのではないか。
3月14日(水) The Wada Makoto Song Book レコーディング サウンドシティBst
飯倉交差点の中国飯店。北京ダックで紹興酒。久しぶりの基本セットだがことのほかおいしかった。和田さんといるからか。
3月15日(木) The Wada Makoto Song Book トラックダウン サウンドシティMix Room
六本木のバーへ行く。ホキ徳田さんと10年以上ぶりに再会。嬉しいほどではないが懐かしい。藤子・F・不二雄さんがご機嫌だった。73歳くらいのはずだが毎日文士飲みをしている。即ち湘南の自宅で陽のあるうちは働いて、夜になると銀座で飲む。最近の銀座は気の利いた会話が出来る女の子もいないし仲間も随分減ってしまってつまらない、と仰る。じゃぁ飲まなきゃいいじゃないですかと言うと、ほかに楽しみもないし、安孫子さん(二人で一人のペンネーム:藤子不二雄のもう一人)は酒もタバコもなにもかもやらず、漫画一筋だったから早死にしたのだ、と頑なに信じていらっしゃる様子(ちょっと同感)もあり。そこで六本木のこのバーに飲み直しに来ることになると言う。ほぼ毎日。

和田さんが僕を再紹介してくれるのに、いつかのコンサートで“少年時代”を弾いたことを思い出してくれたのは良いが、その後が困りつつも面白かった。

思いのたけで作った映画の主題歌を以前からの友人である陽水さんに頼んだときに実は詩も渡していたんだそうで、陽水さんが曲を作るときに詩も大幅にというかほぼ書き下ろした、というのがいまだに気に食わないらしい。バーのママが“だからヒットしたんじゃないですか”なんて言うもんだから余計に面白くない。“だいたい風アザミってなんなんだよゥ”と荒れて和田さんの胸倉をつかむ。これは傍で見ていて転げるほどにおかしいのだが、当の和田さんはたまったものではなく“陽水に言え!陽水に!”
3月16日(金) The Wada Makoto Song Book トラックダウン サウンドシティMixRoom
青山“ラジオ”で飲む。大人が酒を飲むのはこういうことだなぁ、と感じる店。和田さんのお知り合いからシャンペンの差し入れアリ。今度お見えになったら、とお預かりしていたという。大人ですねぇ。なんとかいうステージマガジンの編集長が居合わせ、僕が表紙コンサートの話をすると是非役立たせて下さいと言ってくれて嬉しかったのだが、和田さん自身は飲んでるときに仕事の話をするのは無粋だとでも思ってらっしゃるかして無表情。

レミさんに申し訳ないから和田さんと飲み歩くのは2〜3日に一回にしようとは思うのだが、ついつい楽しくて4日間連続二人で飲み歩いてしまった。
3月17日(土) 松田昌デュオ 山口親子劇場
山口宇部空港から市内まで随分あるが、萩に立ち寄りなどもままならず折角の維新好きも空しく会場へ。
3月18日(日)
宿を出て散策してみるといつか月猫で来ていた事を思い出した。中原中也記念館が美しい。
3月19日(月) 欧陽菲菲 パーティ
新年会をやろうと言っていたのがメンバーの都合が中々合わず今日になった。中国の正月(日本で言う旧正月の日)も過ぎている。フィフィの妹さんが経営している代官山のおしゃれな中華レストラン。お洒落でそこそこ有名でもあるらしい。アップライトピアノが置いてあって宿願(?)の式場さんとのデュエットを果たす。フライミートゥザムーン。
3月21日(水) 菅野こうめい打ち合わせ 代々木マナセスタジオ
ミュージカル“Show店街組曲”の初顔合わせ・打ち合わせ・プロモーションTV撮影・キー合わせを一気に行う。公演は決まっていながらすでに押し押しのスケジュール。これから本番までのばたばたが容易に予想されて怖い。
3月22日(木) M’s ウイズ Prisca 名古屋スターアイズ
スターアイズ3デイズのはずが23日に寺井尚子女史とのデュオの話が入ったためとんぼ返りになったところへ、それなら、というのでデュークエイセスのNHK出演も手伝うことになりヒィヒィいうスケジュールになってしまった。それでもM’sとプリスカのライブは楽しく3時に“世界の山ちゃん”で解散するまで飲み歩いてしまった。
3月23日(金)
NHKに入るとデュークのレギュラーピアニストという若者が挨拶に来て“勉強に来ました”。なかなかいい青年だとおもいつつ無事本番を終えて相模原に向かう途中にハタと気が付いた。万が一(僕が名古屋から間に合わなかった時)のための押さえ・保険だったのだ。なんだよ〜ぅ、とは思わない。信用してくれないほうがありがたいのである。なまじの信用はひょっとしたときの事件を大きくするばかり。お互いにさりげなく信用しない関係性のほうが穏やかで良いんじゃないか、などとにたにたしながらホールに着いてしばらくすると寺井尚子バンドのレギュラーピアニスト北島直樹が“おはようございま〜す、お久しぶり。今日は勉強に来ました〜”。思わず“何か言い含められてないか?”

しばらくすると石井彰まで現れて、深読みすることしきり。しかし、寺井・佐山デュオと聞いてピアニスト仲間が興味を持って見に来てくれる(偵察?)というのは嬉しいことである。コンサートは実にはじけたいいものだった。寺井尚子一曲入魂。
3月24日(土) M’s ウイズ Prisca ゲスト:三木俊雄
一日抜けるお詫びにピアノの代役(森下滋)を入れるとともに三木俊雄をおまけにつけた。ついでに今日の日はそのままクァルテットで演奏。楽しかった。川嶋の演奏よりも落ち着いた音色とプレイの三木のテナーが、パリパリしがちなM’sや僕のピアノには相性というか相乗効果が良いようだ。森下の評判もよくまずはひと安心。しかし移動疲れがきつい。
3月26日(月) 銀座スイング セッション
5月の末になってこれ(3月中旬以降)を書いている。大抵のことはムフムフと思い出して書ける。日記をつけることの楽しみはこの二重味わいにもあるのだが、この日のセッションの内容がはっきりと思い出せない。細野だったか市原ひかりちゃんだったか、、、。
3月28日(水) 原氏披露宴
姫路の時にいつも泊めていただくクレール日笠のオーナーの披露宴にDustでお祝い演奏。
3月30日(金)えほん音楽会 千駄ヶ谷 津田ホール
ジャズ絵本とクラッシック絵本のダブル朗読。動物の謝肉祭が面白かった。ドビュッシーを人前で弾くので柴野さつきちゃんにレッスンまでしてもらったのに客席の先生を意識してかなかなかボロンチョな演奏。終わって探しても先生はいない。来てね、とは言ったが日にちなど詳しいことをお知らせし忘れていたことが発覚。生徒失格の巻、である。とほほ。

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