スキーチューンナップ講座

オフシーズンからオンシーズンへ備えて

シーズン中のメンテナンス
基本編
初級編
中級編
上級編
超上級編
オンシーズンからオフシーズンへ



オフシーズンからオンシーズンへ備えて

そろそろ山にも雪の便りが聞こえ、待ち遠しいウインタースポーツシーズンです。
シーズン到来に備えて、ウェアを新調したり、ゴーグル等の小物を手入れしたり、
宿の予約をしたり、はたまた慌てて筋力作りをしたり、うかれていることでしょう。
さて、滑りにいく前に、道具を引っ張りだして見てみましょう。
昨年使ってからそのままにしていませんか?
スキーもスノーボードも道具です。しっかりしたメンテナンスが必要です。
車のタイヤと同様、しっかり走って(滑って)しっかり停止できなければなりません。
エッジがなまくらでは、停止することすらできません。
せっかくWAXを塗っても汚れた板では、ゴミの上に塗っていることと 同じになってしまい全く効き目がありません。
スキー理論を知れば知るほど、滑走面とエッジが良い状態を保っていなければ いけないことがわかります。
例えば、滑走面やエッジに傷があればそれが雪面との抵抗となり、 きれいな円弧を描いて滑ることは不可能です。

それでは、シーズン前にやっておきたい最低限のメンテナンスを御指南いたしましょう。
チェックポイントは、スキーも、スノーボードも一緒で、エッジ、滑走面、(図1)
とビンディング(スノボードには不要ですね)の3点です。

なお、理想的なスキー&スノーボードの状態とは、 エッジは 滑走面側もサイドも滑らかでかつ、尖っていること、 滑走面は 穴や傷がなくフラットで、汚れたり酸化していないこと、 ビンディングはスムーズに動くこと、が基本です。
ビベリングなどの高等チューンナップもこの状態から行うことになります。

ちなみにレンタルスキー屋で借りられるスキー板の状態は私にいわせれば最低です。
エッジは錆びているし、滑走面はボロボロなのがほとんどです。
海外のレンタルスキー場は日本よりもしっかりしているし、 上級者用の板が借りれたりして充実していますが、でも不満が残ります。
私の場合は、必要とあれば自分で手入れしてから使っています。

ま、なにはともあれ道具を引っ張り出してチェックみましょう。


チェックポイント対応策
エッジ
エッジが壊れていませんか? A)修理に出すか捨てましょう
滑走面エッジが錆びていませんか? B)滑走面全体を削りましょう
エッジが欠けていませんか? C)サイドエッジを砥ぎましょう
サイドエッジが錆びていませんか?
サイドエッジは尖っていますか?
滑走面 滑走面に凹みや傷はありませんか? D)リペアしましょう
滑走面が黒や茶色に汚れていませんか? E)リムーバーをかけましょう
滑走面が白っぽく酸化していませんか? B)滑走面全体を削りましょう
ビィンディング編 バネが錆びていませんか? G)捨てましょう
開放値が自由に調節できますか? F)油をさしてみましょう
トップもテールもスムーズに動きますか?


それぞれのチェックポイントに対する対応策は以下に記します。

A) 修理
修理は一般の人ではできません。
購入したお店を通じてスキーメーカーに依頼しましょう。
だいたい2万円ぐらいかかるとおもっていてください。

B) 滑走面の研磨
滑走面全体を人手で削るのは、非常に高い技術が必要です。
よっぽど経験を積んだ人でも真っ直ぐ平らに削るのは至難の技です。
スキーショップのマシンで削ってもらう方が精度も高いし安全です。
一番安い料金でいいですから削ってもらいましょう。

C) サイドエッジの研磨
サイドエッジを砥ぐのはそんなに難しい作業ではありません。
スキーを万力などで固定し、全体に均一にヤスリをかけます。
このときもちいるヤスリは必ず単目を使ってください。
滑らかに仕上げるために大切なことです。
3000円ぐらいからシャープナーという、サイドエッジを滑走面と直角に削る
ものが売っていますから、トップからテールへ砥ぎます。
自信がなければやっぱりスキーショップでチューンナップを依頼しましょう。
一番安いセットで十分です。

D) 滑走面のリペア
リペアとはリペア材といわれる滑走面と同じ材質をはんだゴテで溶かして 空気が入らないように埋めます。
埋めたあと、さらに上から板等を使って押さえつけます。
あとは盛り上がった部分をカッターで削り取るだけです。

E) リムーバーでの掃除
リムーバーとは、滑走面のごみを取り除くものです。
一種の溶剤で古いワックスやゴミを取り除けます。
板を傷めることになり兼ねない両刃の剣ですが、 手入れをしていない板にはゴミや古いワックスが付着しているので、 一度リムーバーをかけましょう。

F) ビィンディングの油
ビィンディングに油をさすのは自転車のチェーンに油を指すのと同じ要領です。
周りから染み込ませてください。

G) 板を捨てる
あまりに古い板はとっとと捨てましょう。
最近の板の進歩は目覚しいものがあります。新しい板の方が絶対上達します。
古い板で困った癖をつけるより、新しい板にした方が、心機一転して巧くなれると思います。

いろいろ書きましたが、去年のシーズンオフに使ったままほっといたとか
水分をだけを取った程度では、板が痛んで人手では修復不能な場合がほとんどです。
#レンタルショップの板もほとんど人手では修正不可能なくらいボロボロです。

安い料金のチューンナップでいいですからお店に出すことをお勧めします。
チューンナップにはお金が必要ですが、せっかく大金出した購入した板ですから、 性能をフルに発揮させるために維持費と思いましょう。

お店のメンテナンスのコースは、一番安い料金でいいです。
それで滑走面のリペアと、機械でフラットに仕上げ、かつ、 ベースワックスを塗ってくれるはずです。
機械で滑走面をフラットにしてもらうだけで、エッジはかなり尖ります。
メンテナンスのコース、滑走面をストーンでしあげたり(ストーンフィニッシュ)、 ストラクチャーをいれたり、エッジにビベリ角をつけたり(ビベリング)、 エッジの角度を直角以外の鋭角にしたりするのは、 よほどスキーの技術が上達しないと意味がありません。


シーズン中のメンテナンス

シーズン中もメンテナンスはとっても大事です。
シーズン中の板のメンテナンスポイントも、やっぱり滑走面と、エッジです。
滑走面のメンテナンスは、スキー用ワックスをぬることです。
エッジは、ヤスリで研ぐことです。
スノーボードの場合も全く一緒です。違いはありません。
スノーボード用ワックスというのは、実は、スキー用WAXのレベルの低いものです。
スノーボードの方が面積が広く、ワックスを必要とするためと、
ボーダーはスキーヤーほどスピードにこだわる人が少ないため、
安価なWAXですまされているのです。

まずはメンテが必要かどうかの見分け方です。

滑走面(図2):
滑っているとき、板の裏をひょい!とひっくり返してみてください。
雪の固まりがついていなければ良い状態です。
雪がブロック状になって固まっていたらそれは、滑走面が汚れている証拠です。
汚れをとってWAXを塗る必要があります。
なお、板の滑走面がブラックなものは、滑走性に優れるかわりに、
材質が柔らかく痛み易いという特徴があります。
主に競技用やエキスパート用の板の滑走材に使われています。
こうした板をもっている方はWAXを毎日塗りましょう。


エッジ:
エッジを素手で触って見ましょう。
足の内側つまりインサイドのブーツの真下の部分に爪をあてて、 エッジと直交する方向へ動かして見ましょう。(図3)
鰹節をけずるように爪の表面がめくれれば合格。
なお、エッジは局所的に摩耗していきます。
トップやテールなどの両端はギンギンでも、ブーツ下だけ なまっていることがあります。
ブーツ下が一番良く使いますから一番最初になまるのは仕方がありません。
でもブーツ下全部がなまっていたら砥ぎ時です。

基本編

スキーやスノーボードをむき出しのまま車のキャリアに積まないでください。
なんらかのカバーをかけてからキャリアに積みましょう。
100kmも走れば車のボディだって汚れます。当然板も痛みます。
また、滑り終わったらかならず良く水気をとって乾かしてください。
下手をすると一晩でエッジに錆びが浮きます。
毎日WAXを塗ったり、エッジを研いだりするのは大変しょうけど、
これだけは最低限守ってください。
ちゃんとした乾燥室のある宿なら、放っといても平気ですが、
そうでない宿が多いですから注意しましょう。

初級編

液体ワックスを使ってみよう!

滑走面:
まずはお手軽に液体WAXや固形の生塗りWAXをためしてください。
スプレータイプでも、押し付けるタイプでもいいです。
これをこまめに塗りましょう。
朝一番、滑る前に塗る。お昼ご飯の時に塗る。夜は水気をとる。
これを繰り返してください。
固形WAXはそのまま墨をするように滑走面にごしごし押し付けて塗りこみます。

なお、塗ったけど滑らないじゃないか!という人。
それは、滑走面がすでに汚れているからです。
汚れた滑走面にWAXを塗ってもゴミの上に塗っているだけですから全く意味がありません。
そういう人は、リムーバーという汚れ落とし溶剤がスキー用として売っていますで塗って見てください。
それでもだめなら滑走面が酸化しているのです。全体を削りましょう。

エッジ:
錆びさせないように注意しましょう。それには水気を拭く以外ありません。

中級編

ホットワックスとエッジの研磨

滑走面(図4):
ホットワックスをためして見ましょう。

ワックスは、滑走面に微粒子レベルで染み込ませてこそ実力を発揮します。
液体や、固形の生塗りでは、板への染み込みが十分では有りません。
すぐにワックスの効き目が落ちてしまいます。
一方、ホットワックスとは、電気式や燃料式のアイロンを使って、 熱を利用して染み込ませます。
手間はかかりますが、効き目は絶大かつ長持ちします。
本来、競技用やエキスパート用などの上級者向けの板は、 ホットワックスすることが前提で設計されています。
上級者用の板をもっている人はできるだけホットワックスをしましょう。
とくにブラックソールは滑走面の保護のためにも絶対にホットワックスをしましょう。
実際の作業ですが、まずワックス用のアイロンを用意します。
家庭用の電気アイロンでも平気です。
ですがスチーム用の穴の空いたタイプはやめましょう。
固形ワックスをアイロンで溶かして滑走面全体に塗り広げ染み込ませます。
固形ワックスはコンケスト社のピンク色のタイプが安くてお手軽で、 入門用としては最適です。
次いで、ワックスを塗ったら、しばらく寝かせます。
最低1時間。夜寝る前に塗るというのが最適でしょう。
翌日滑りだす前に、ワックスをきれいに剥がしましょう。
ワックスを剥がすためには、 プラスチックスクレーパーというものが300円ぐらいからあります。
プラスチックの定規の様なものです。これを使って丹念に剥がしてください。
万力などを利用してスキーの板を固定したほうが剥がしやすいですが、
万力がない場合には、なんとか工夫してください。
手で抑えるだけでそれなりに剥がせます。
なお、せっかく塗ったワックスだから剥がすの勿体ないという人がいますが、 余分なワックスが滑走面に付着したままだと、
逆に雪上のゴミを引っ掛けて滑走性が悪くなります。
これではワックスを塗る意味がありません。
面倒くさがらずにしっかりとワックスを剥がしましょう。

エッジ:
エッジは、サイド側のみを単目ヤスリで削りましょう。(図5)
決してスキー用のヤスリにこだわる必要はありません。
金属加工用の単目ヤスリならなんでも良いです。
スウェーデンのオバーグ社製のものが安くて良く削れてお勧めです。
東急ハンズで1000円〜1500円ぐらいで販売しています。
ものの本によっては荒目→単目とヤスリを取り替えるべきだと書いてありますが、
荒目をとばして単目だけでも十分です。
時間がちょっとかかりますが、別に問題有りません。
細目だけ用意してからチューンナップをしましょう。
一般の人が削って良いエッジのは、サイド側だけのエッジだけです。
滑走面側をいじると板の調子が狂いますので、手を出さないようにしましょう。
下手をすると板が意図しない方向に勝手に進むようになります。
サイドエッジを削るために、ガイドやシャープナーと称して、
滑走面と直角にヤスリをエッジにあてて、研ぎやすくするものがあります。
3000円ぐらいからあります。
これを使って滑走面に押し当てて、均一に引けば削れます。
シャープナーは、滑走面を痛めることになりますが、
まぁ、些細なことですから、この程度はとくに気にすることはないでしょう。
なお、エッジの研磨には、非情に力がいります。
万力などでしっかり固定してから削りましょう。
また、金属の削り屑がでますので、お肌を傷つけないように、
軍手やエプロンなどをつけて作業することをお勧めします。

上級編

傷が入った板の修復技術

滑走面のリペア(図6):
滑走面に入った傷を補修し、均一にする作業です。
滑走材を半田ゴテなどを使って高温で溶かして穴を塞ぎます。
このとき空気が入らない用に、滑走材周辺を溶かしてから、 滑走材をとかしこむと良いでしょう。
穴を塞ぐぐらい溶かしたら、盛り上がった部分を削りとります。
まずは、カッターで削りとります。
次ぎに、フラッターや金属スクレーパーという金属の板で 滑走面全体と同じ高さになるように削ります。
下手に削りすぎると、滑走面を凸凹にしてしまいがちですので、気をつけましょう。
あんまり傷が多ければお店で滑走面をマシンでまるごと削った方が早いです。

エッジのリペア:
岩や、他の板の上を滑るとエッジが欠けて、黒く変質します。
これは、摩擦熱によって、エッジが加熱され、変質して固くなってしまうからです。
この場合通常のの金属製のヤスリでは歯がたちません。
オイルストーンという砥石を使ってその部分だけ研いでから、 最初からやり直してヤスリがけしましょう。
なお、オイルストーンは液体につけて、砥石の目がつまらないようにして使います。
この液体は、オイルではなく、真水を使いましょう。
オイルストーン用のオイルは板を痛めます。

ビィンディングの固定:
ビィンディングの流れ止めは、板の下に飛び出していてメンテナンスのときには、 作業の邪魔になります。
これはゴムで縛るなどして、邪魔にならないようにしましょう。
なお、サロモン社のビィンディングは流れ止め部分だけ、ネジ一本で外せます。
チロリアのビィンディングは、専用のストッパーが販売されています。

超上級編

ビベリング、ストラクチャー、ここは紹介だけです。
実践する必要はないし、実践する人はこんなもん読んでいないでしょう。

ビベリング(図7):
エッジが滑走面と完全なフラットだとひっかかります。
そこで、少しだけエッジの方を滑走面から垂らします。
エッジが滑走面より高いと引っかかって曲がれません。
滑走面の方が高すぎると板がきょろきょろして安定しません。
やった方がいいのですが、素人が手をだす領域ではありませんのであしからず。
また、ビベリングをすると滑走面に対して直角でない角度ができます。

したがって滑走面と直角の角度でエッジをたてても、エッジそのものは鈍角になってしまいます。
こういう場合、エッジの面にたいして直角になるように角度をつけるため、滑走面にたいしては鋭角で削ったりすることもあります。

ストラクチャー:
滑走面にストラクチャーマークをつけて滑走性を上げようとするものです。
タイヤのドレッドパターンのようなマークをいれます。
マークをいれる専用の機械がありますので、これを使います。
トップレーサーぐらいじゃないと意味のないものです。

ワックス:
今回は万能ワックスしか紹介していませんが、ワックスを組み合わせることで、 少しでもスピードを上げています。
とくに、ダウンヒルなどの高速系の競技では選手の技量が拮抗していることから、 ワックスで差がでる場合があります。
たとえば、スイスチームが上位を独占した!なんてことになったら、それはワックス等のチューンナップがばっちり雪の状態とマッチしたってことです。
ワールドカップやオリンピックをこういう視点でみてみるのも面白いと思います。




シーズンオフのメンテナンス

スキー場の雪は、通常の水からできた雪だけでなく、
塩を撒いてあったりするため、エッジ、滑走面の酸化に気をつける必要があります。
これを防ぐ最高の方法は、空気から遮断することです。
すなわちホットワックスでふたをしてしまうことです。
スキーとスキーの間もこうしておくとなお良いでしょう。
面倒ならスキーショップにメンテナンスをお願いすることです。
エッジはキレイにしてくれるし、滑走面の傷もうめてくれます。
そのうえ、ベースワックスを塗ってくれます。
次のシーズンに入る前に慌てることもないし、お店に頼むのが一番良い選択でしょう。

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