東横線の祐天寺の街が好き。


 祐天寺といえばカレーのカーナ・ピーナ(電話5721−1718、月曜定休)だ。祐天寺駅から、ゆっくり歩いて5分の近さ。ここのレギュラーカレーのホットは官能的で、たいへんにエモーショナルなテイストである。

このカレー屋については、料理の専門雑誌「DANCYU」('95年8月号)にこう書いた。

奇跡的に晴れ上がった梅雨の日曜日、多摩川中流の河原でカレーを食す。それもインドのロイチョウドゥーリ・ジョイさん直々の指導の元に、娘の桃子(小学5年生)といっしょに材料づくりからトライ。

 いつもの日曜日なら、パソコンに向かってキーボードを叩くか、150インチの大スクリーンの前で映画を見るか、モニターテレビの前でブルー画面のノイズをチェックするか……と、いたって不健康な生活をしている。ところがここはブルーでも、ノイズひとつない本物の青空の世界。

 私はカレーと聞いただけで、味覚神経が刺激され唾が出てくるほどのカレーフリークである。かつて、毎土曜日はカレー日と決めて、必ず世田谷は用賀の「カーナ・ピーナ」という専門店に通っていた。マトンカレーのこってりとした、光彩豊かなくせに、鮮鋭なテイストは、5日目ぐらいになると恋しくて恋しくて禁断症状に陥るほどだった。

 しかし、その店が3月でクローズし祐天寺に移転してからは空虚な一日を過ごしていた。毎土曜日にはシトロエンを駆って家のまわりの店を彷徨してまわるのだが、どうもいまいちの味ばかり。それがどうだ、今日は、本場のロイさんが作りかたを教えて下さる。ロイさんといえば、ダンチュウ95年2月号で壮大なカニカレーなど凄いカレーテクニックを披露した名人だ。そんな大先生に直に指導を受け、本物のオーセンティック・カレーに挑戦できるのだから朝から興奮。

 朝の多摩川は気持ちがいい。しかも、爽快ウエザー。水も温い。ロイさんの子供3人と桃子はすぐに仲良くなって水遊び。水面がキラキラ輝いている。中流といっても意外に勢いは強いから、「オマエタチ、気をつけろよ!」と叫ぶと、「大丈夫だよ! それより、こんなの取ったよ。カレーにいれちゃおうか」。冗談じゃないよ、なめくじなんて食べたくないよ。(以下、略)

 この話には後日談があった。この「DANCYU」の先生のロイチョウドゥーリ・ジョイさんは、昔カーナ・ピーナに勤めていたことが、最近判明。世の中って狭いねと、カーナ・ピーナのマスターと喋った。









写真は上から、カーナ・ピーナの外観
豊醇でハイエナジーのマトンカレーのホット。
カレーガールズ。


 祐天寺駅からカーナ・ピーナに行く途中に、10月10日に誕生したのが菜果とハーブの専門店「香草屋菜果」(電話3791−4210)。野菜のお菓子の面白さも、ハーブティーの美味しさもさることながら、ウリは看板娘の知子さん、恵子さん。笑顔がさわやかで、美味な雰囲気。

 この道は、最近おしゃれな花屋や子供服屋ができ、ファッション・ストリートになる予感も。



写真右は「香草屋菜果」の看板娘の知子さん

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