発行日: '99年 5月30日(日)
発行:守山リス研事務局

リス研通信 No.676

山梨県大月市 団地現地観察結果報告 7/7

日時
1999. 5. 2-3
場所
山梨県大月市パストラルびゅう桂台

3.「リスの橋」と周囲の環境の観察・調査(C地区)(続き)

8)団地東側の孤立林での状況(A地区)

このA地区は、二つの沢に挟まれた孤立状態の森林で、ここに巣箱や給餌台が数台設置されていた。

樹種や樹木の特性としては、道側にはスギが多数あり、山側に登るにつれ、ケヤキ、シデ、アベマキ、アカマツ、ヒノキが点々と存在していた。

空白域には、イロハカエデが多数植栽されていた。この森も30年から60年という樹齢のようで団地造成時の他の地域と同じ状況だが太陽に面する事で、シデやアベマキ、ケヤキなどの樹種が大きく育っているように思われた。ただアカマツは広葉樹に囲まれ、樹勢が弱く、松枯れているものも散見された。ここでも広葉樹への遷移が感じられた。

[孤立林の調査]

孤立林A地区の調査状況

Kさんが口に指を当てて、シーとしてみせ「ムササビが巣箱の中にいる」と小声で。そっと見にゆくと、たしかに巣箱から黒い鼻が見え、しばらくしてひっこんだ。それから数秒すると中から、ひらりと動物が飛び出してきて、枝づたいにすばやく移動した。なんとそれは、鼻から顔半分くらいまで黒で、4本の足の接地部が靴下をはいたように真っ黒。「テンだ!」と叫ぶ。

[テンが飛び出してきた巣箱]

リスように設置された巣箱の中の動物を観察
(逃げ出した動物はテンだった!)

写真を取るまもなく数秒で目の前から消え去った。それからそれぞれが樹木の調査をしているとIsさんが「巣箱の中から遠くに呼びかけるようにミーミーという鳴き声が聞こえる。」と報告。テンが繁殖していたのである。リスの巣箱にムササビが生息し次にテンが。そして巣箱の真下近くにテンの糞らしきものには骨と毛が混じっているではないか。

[テンの糞]

巣箱の下で発見された糞
(糞の中に細かいアバラ骨のような骨片が多数と毛が混じっている。
骨の太さからリスかムササビの骨のように思われる。)

[孤立林A地区]

孤立林A地区

結論

  1. 緑の回廊としては既存の森林を出来るだけ利用し、繋げることが大事。
    街路樹のような樹木として薄い列では天敵に狙われる可能性あり、もっと幅広い樹林が必要か。(2列から3列以上)
    それでも、アカマツやリスの餌がなる木の列としての植樹が8〜10年先を考えて必要。
  2. リスの橋は、分断された森林を接続する上ではかなり有効と思われた。但し天敵対策を考慮すること、寝場所、餌場所を含めて接続する森林を豊かに維持し、明確化する事でないと橋を渡る意味がなくなる。
    ロードキルを減らすのは、動物のためで人間の免罪符ではない。
  3. 野生動物の行動をきちんとつかみ、繁殖する場所(ゆりかご)、餌の場所、点在する寝場所を、予め想定してそれぞれに適した森林、樹種の育成と保全を図る事が重要と思われ、大変有意義な調査旅行であった。いろいろな資料準備や現地案内をして頂いたKさんに、この紙面を借りてお礼申しあげます。


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