発行日:’91年9月30日(月)
発行:守山リス研事務局

リス研通信 No.61


オニグルミ確保のために書状発信

91.9.21

岐阜県O郡
T.O.殿

リス研 K

前略

9月8日の午前中に、貴殿の家のまえで、いろいろ貴重なお話として、栃の花の密の事や、今ちまたで有名な「とりかぶと」の現物を教えて頂いたり、またオニグルミの木をいろいろお持ちで、土に埋めればいい事など伺い有り難うございました。

車2台で、9人が御世話になりましたので、ここで改めてお礼申しあげるとともに、その際写した写真を一枚ですが、同封申しあげますので、お納め下さい。

実は、Oさんにお願いがあり、ここにお手紙を書いています。私達のグループは、毎年オニグルミが定期的に20Kgとか30Kg必要としており、今回その調査にいったわけです。幸い長田さんの山や近くの人の所にオニグルミがある事がわかりました。そこで、次のような事をご検討して回答を頂けたら有りがたく存じます。

Oさんご自身や、近くのお仲間の人と一緒でもかまいませんが、私達が毎年オニグルミを一定量買いたい場合、

  1. どれくらいまとめられるでしょうか?例えば 20Kgとか30Kg/年とか、数量、例えば 3000個とか5000個とか、

    推定ですが、当方としては、5000個から1万個程来年の10月は購入し、それ以後は、毎年1万個から2万個購入したいと考えているからです。

  2. その数量を購入する場合、およそいくらぐらいで、当方が購入できるのでしょうか? 送料は別にして、その値段を、教えて頂きたく存じます。

    例えば 1000個可能の場合
    10個○円として○万円とか(皮がないもの)
    20個○円として○千円とか(皮付きのまま)
    中古のダンボールか袋にいれて、送料○○○円

    Oさんを窓口として購入できる数量と凡その値段をご連絡下さい。

  3. 送付できる時期について、お教えください。

    • 皮付きなら 10月上旬
    • 皮なしなら 11月上旬とか、

    Oさんの経験から、凡その時期をご連絡ください。

突然のぶしつけなお願いですが、よろしくご検討をお願い申しあげます。オニグルミを購入する理由は、私達の近くの東谷山という山には、野生のニホンリスが生息していて、私達のグループ「守山リス研究会」(通称「リス研」)が市民のボランテイア活動として、絶滅しつつあるこのニホンリスを増やして、野生動物と一緒に生活できる環境をつくろうとしております。そのリスの餌として、購入して餌付けし、リスを増やして行きたいからです。一方ではクルミの木やどんぐり、椎の木を植え、リス自身が自分で食べるように将来はして行きたいと考えています。参考に私たちの活動の資料を一部同封申しあげます。まったくボランテイアで、オニグルミを売って儲けようというような事ではまったくなく、Oさんのご配慮・ご検討をお願い申しあげます。上記について、お手紙をお待ち申し上げます。

草々

添付:リス研通信No.55,リス研コミック


国際ナチュラリスカレッジへの書状発信

’91.9.28

名古屋市名東区
国際ナチュラリストカレッジ
T学院長殿

リス研 K

前略

先月の中日新聞に掲載されていました「野生の旅- 二十歳のサファリ1500キロ」について興味をもって拝見させていただきました。特に「野生動物観察を通して自然を考える」というコンセプトにはまったく同感です。

T学院長が、元東山動物園の園長をおつとめであった事を失礼ながら最近知りました。実は、下記のようなお願いがあり、ここにお手紙する次第です。ぜひご検討のうえ、なんらかのご連絡を頂ければ有りがたく存じます。

私達は、正式名称「守山リス研究会」と称し、東谷山、森林公園に現存する野生のニホンリスを保護し、増殖させ、自然のサイクルの中で生存させ、その一部を絶滅してしまった小幡緑地公園に取り戻そうという計画で活動しています。東谷山、森林公園では、ホンドリスがいることは、私達の調査の結果で確認されています。

京大霊長類研究所の瀬戸口美恵子先生を指導者として、また個別相談として天白の農業センターへ移動された橋川獣医、東山動物園の渡辺獣医、井の頭自然文化園の関係者等とも相談しながら、学習と調査・検討を中心に進めています。詳細は、同封しました活動記録としてのリス研通信をご覧下さい。

最近では、森林公園の武藤課長殿との話で、

  1. リス用の給餌台を園内に設置してもよい事( 場所は、相談をして選定する)
  2. リスの餌としてのオニグルミを今から育てるため、適当な場所を一緒に検討し、オニグルミの種を蒔いたり、実生を育て移植する事を進めても良い事、
  3. リス研のメンバーの学習のため、森林公園の若い専門家の人にりすの餌となる植物の樹種、樹齢、実のなる時期、等

の指導を植物の面で指導して頂く事に、快諾を得ました。

今後はこの愛知県森林公園協会と一緒に活動していく予定です。そこで、お願いなのですが、貴学院のご協力をぜひともお借りしたいのです。それは、私達の活動に参画あるいは、共同して、動物を専門に勉強しておられる、講師の方や、学生の方に広く呼び掛け、一緒に活動して頂ける方、指導して頂ける方を募りたいのです。

以上について、

  1. 資料に目を通された後、貴学院の本件を担当して頂ける窓口的な人をお決め頂き、
  2. 直接リス研のメンバーと面談しながら、ご判断していただける場を、ご都合の良い時に設定して頂き

いろいろ参画、ご指導以外にも相談したく、よろしくお願い申しあげます。必要であれば、橋川獣医や渡辺獣医に私達リス研がどういう活動をし、どういう考えかご確認頂ければ、更にはっきりすると考えます。

どうかご検討の上、ご連絡をお待ち申し上げます。

草々

同封:リス研通信他全資料 No.1〜No.58


リスのしっぽの役割

出典
「ナチュラリスト入門 - 春」岩波ブックレット
担当著者
今泉 吉晴 氏 No.150, P55-56

(都留市十日市場の)観察小屋ですごすうちに自然に少しづつ見えてくることがありそう。…

……ある日わたしは、小屋から200m程はなれた八沢の水場にでかけて、小屋への水の取入口の手入れをしていた。ふと斜面をみあげると、ヒノキ林のへりにリスのしっぽが落ちている。ふんわりとして軽いリスのしっぽを手にした時の印象は、なんとも複雑だった。

いったいなぜリスは尾をなくすはめに陥ったのだろう? テンに襲われたのだろうか? 尾を失ったリスは、いまでも木から木へとうまくジャンプできているのだろうか? ネズミ、ヤマネ、リスの尾はそっとひっぱるだけで、尾の骨を残して皮膚ごとすっぽり抜けてしまう。(どれほど簡単にまた見事に抜けるものかは、これらの動物の剥製標本をつくろうと皮を剥いだ経験のある人ならすぐわかると思う)おそらくこれは、補食者に尾を捕らえられた時に、ちょうどトカゲのシッポ切りのように尾を与えて逃げようという「自切」の仕組みなのだろう。八沢の水場で拾ったリスのしっぽも骨のない抜け殻でふわふわとまるで綿のように軽く長い毛の房だった。

ドイツのある動物行動学の教科書に、りすは木のこずえに追い詰められると地表に向かって飛び降りる。その時、尾のふさ毛がパラシュートの役割を演ずると書かれている。リスはなんら傷をおうことなく着地し、走り去ることができるという。そして尾を失ったリスが木のこずえから、飛び降りるとリスはバランスを崩し地面に叩きつけられ死ぬという。となると尾を失った八沢のリスの運命はまずは心配しなければならない。だがわたしの心配は別の疑問へと移っていった。

リスの尾を拾うというまれな出来事にわたしは遭遇できた。ではそれよりも頻繁に起こると思われる。テン( あるいは補食者) がリスを木のこずえに追い詰め、リスが木のこずえから地面へと飛び降りる場面にわたしがい合わせる幸運な可能性はいったいどれほどあるのだろうが。わたしは、小屋で毎日リスを見ているのに、リスがパラシュート降下する場面は一度も見ていないし、今後も見られそうにないように思えているのだが。…

【リスのしっぽについての解剖学的な観察が妙に新鮮に感じましたので、ここに紹介します】


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