うなぎ屋さんで「お笑いを一席」

17日に新百合ケ丘駅前で

落語ファンが長年の夢果たす


 駅前のうなぎ屋の座敷で落語はいかが――麻生区内の落語ファンが友人のうなぎ屋の主人をくどき、若手落語家を育てるために17日に寄席を開く。永く放送局で芸能を手がけたキャリアを生かし、新興住宅地に大衆文化の芽を育てようと企画したものだ。
この「あさお・うな吉寄席―若手落語家を育てる会」を企画したのは、同区高石2丁目のNHK関連会社に勤める白井康幹さんと、白井さんの20年来の友人で、新百合ケ丘駅前のマプレ・グルメ街で割烹「うな吉」を経営する横田正夫さんだ。
 定年退職する2年前までNHKで紅白歌合戦をはじめ大衆芸能やバラエティーなどを中心とした数々の番組を手がけた白井さんは、舞台の進行などのノウハウをすべて知りつくした経験を生かし、これまでも地域の文化団体が主催する洋楽、邦楽、歌謡ショーなどの裏方を手伝っている。
 白井さんは「演出、構成は自分の楽しみで手がけたが、一番好きな落語で裏方をやりたい」と場所を探していたところ、「うな吉」の座敷に舞台があるのに気づき「落語のネタにはよくうなぎが出てくる。ここで寄席を開かないか」と横田さんに持ちかけた。
この舞台は、横田さんが新百合駅南口に新たに出店する際、宴会時のカラオケ、特別室として使おうと考え設置したもので、約22畳敷きの座敷の奥に、約10センチ高い約6畳の板の間を設置、スポットライトもついた本格的なもの。このスペースを営業時間外の昼の休憩時間などに有効利用したいと考えていた横田さんは、「新百合ケ丘には『芸術のまち』構想があるが、小さな劇場は予定されていない。落語に限らずさまざまなジャンルを行う地域のシアターとして使ってもらえるなら月1回無償提供しよう」と快諾。白井さんと横田さんの2人の「席亭」は、常設の演芸場が次々と姿を消し、本業の落語で芸を磨く機会の少ないなかで、若手落語家を呼び、地域の落語ファンが育てる寄席にしようと張り切っている。
 初回の17日は、午後2時から三遊亭金時さんと春風亭あさ市さんが出演、高座を務める。金時さんは父の4代目金馬さんに入門、あさ市さんは小朝さんの弟子で2人とも数年前に二ツ目に昇進、芸熱心で知られる期待の若手。入場料は2000円だが、客席が数十名のため満席で2人にギャラを払うのがやっとで、切符の印刷などの経費のかかることはやめポスターも手づくり、当日は白井さん、横田さんの家族も木戸番を務める。
横田さんらは毎月第3日曜の午後、店を開放する予定だが、2回目以降の寄席の運営については、当日参加したお客と相談して決めることにしたいと話している。
問い合わせはTEL044(952)5550うな吉。(「くらしの窓」95年9月5日号)
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