あさおうな吉寄席 事始め

席亭ごあいさつ


ハチ「日曜日の散歩の途中寄席によって落語でも聞けたらいいね」
クマ「落語どころか、街へ出て遊ぶといえば、せいぜいパチンコ屋。チト寂しかないかい」
隠居「だけどなお前さんたち、川崎の麻生区には芸術の街、文化の街構想というのがあるんだよ。映画学校とか、音楽学校もできたし、劇団民芸のけいこ場だってあるんだよ。もう少しお待ちよ、きっといい街になるから」
ハチ「とはおっしゃいますけどね、ご隠居、あっしら、このトシで学校でもねえし、でえいちあっしは勉強とハチの頭はガキのころからでえきらいで。せめて、その学校で映画を見せてくれるとか、カラオケをやらせてくれるとか、できればタダで」
隠居「それは、そうかもしれないねえ」
クマ「落語ぐらい聞けるところがあってもいいんじゃねえんですかねえ。オレたちがからっきしねえんですから、この街にゃ」
ハチ「休みの日なんか、ホント退屈で退屈で、畳の目を数えるとか、ご隠居のくだらねえお説教を聞くぐらいしか……」
隠居「なんだって、ハチ」
ハチ「アワワ」
隠居「マ、しかしお前さんたちの気持ちもわからないでもない。そこでだ、そこの『うな吉』のダンナに頼んで、座敷を貸してもらって寄席をやってみようと思うんだが、どうだい」
 というわけで、「あさおうな吉寄席」が9月に誕生しました。
(記事参照)

ところが、この寄席、なんの因果か、最初からまさに「前途多難」を絵に描いたような障害にぶつかりました。
 まず、のっけから台風の洗礼です。忘れもしません、17日の第1回目は、朝から超大型台風が来襲。これでは、とてものことじゃ、開けそうもないと観念しましたが、なんと、雨と風の中を25人のお客さんが決死の覚悟で来てくださったのです。「気軽な街の寄席」どころか、「命がけの寄席」でシャレにもなりませんが、スタッフ一同、大感激でありました。
 続く、10月の2回目は、うって変わって秋晴れ。ところが、運悪く隣の多摩区と宮前区で区民祭。落語よりお祭りっていう人が多かったのでしょうか、入りは前回より少ない20人。「麻生の人は落語がきらいなんかねえ」というつぶやきが、思わずスタッフからもれました。
 このままじゃ、ハイハイもできないうちに終わるんじゃないか、とヒヤヒヤしていたところを救ってくれたのが、「ご隠居さんの会」でありました。
ご隠居、などという年齢には、まだまだ早過ぎる人ばかりで、なかには女性もいらっしゃいますが、ありがた〜い資金援助と精神的な支えによって、無事年を越すことができました。
 毎月1回、第3日曜日に開くこの寄席は、若手落語家の勉強の高座として、また麻生区とその近隣の落語愛好家のたまり場として息長く育てていきたいと思っております。ハイハイの段階を過ぎ、なんとかヨチヨチ歩きができるようにはなりましたが、まだまだ皆さんに支えていただかなければなりません。
 今後ともよろしくお引き回しのほど、よろしく御願いたてまつりま〜す。
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