−提 言−

 ・郵政民営化試案 −公共公営のあり方、出動範囲の原則− (2001/1/4)

郵政三事業は、本年2001年1月6日の省庁再編により、郵政省から総務省内の郵政事業庁に移行される。更に5年後に法律により郵政公社を国が設立し、三事業一体で国が管轄する事になる。財投への預託は廃止される。
事実上の三事業分離となる簡保の民営化、郵貯の民営化準備の方向は曖昧な決着になっている。
今回の省庁再編を機に、公社化を前提に、政府与党で具体的な3事業の姿が討議される事となった。
従来からの郵政民営化論者の自民党小泉純一郎氏も一旦持論を保留し、この公社化を前提にした討議に加わる事となった。
公社化を前提にしながらも一先ずの改革路線に乗ったといえるが、特定郵便局長等を支持基盤に持つ与党、権益と影響力を維持したい官僚側からは、相当な揺り戻しが予想される。反面、与党は7月の参院選を睨んでの改革路線イメージを打ち出さざるを得ない事情もあり、議論の方向は予断を許さない。

このような状況を踏まえ、少し長期的な視野で時機を特定せず将来の「郵政民営化」の概略について以下論考したい。

まず手順としては、公共公営の出動範囲の是非は、いかに判断すべきかの基準を決め、これに従って個別の事項を判断する必要があると思う。
筆者の考えている公共公営の出動範囲の原則は以下の通りである。

1.全ての事業は主に競争による質の向上、経済合理性、国民の自発性の観点から、民間セクター(PFIを含む)が行う事が本来である。

2.しかし、一部に公共セクターが受け持つべき例外がある。具体的には以下の3つの分野が挙げられる。

◆採算ベースに乗らないながら、ナショナル・ミニマムとしてすべての国民が享受すべきサービスの分野
◆事業規模、採算ベースの面で、民間セクターが手を出せない高度に先端的な研究開発、インフラ整備の分野
◆高度の機密性、統一性、強制力の要求される分野

この原則に従って、まず郵政三事業のうち郵便事業について以下のとおり検討した。

◆主に採算性の面から、民間セクターに任せる事を原則とする。
◆親書の機密性等は、民間業者に確実性の義務、守秘義務等を負わす事で対応する。
◆過疎地域への配達及び受付等は、ナショナル・ミニマムとしてのサービスの基準を決め、民間業者に義務付ける。
  過疎地域への配達及び受付等を行わない民間業者は別途分担金を国に支払う。
◆民間業者の進出しない過疎地域には、前述の分担金を補助金として支出し進出のインセンティブとする。
  それでもなお民間業者の進出しない過疎地域には、郵政公社(特定郵便局)が配達及び受付等を行う。
◆郵政公社は前述の過疎地への配達及び受付等の部門を残し、分割し民営化する。

次に、簡保の民営化、郵貯の民営化については、以下のとおり検討した。

◆簡保、郵貯は、当初の予定通り民営化する。
◆ただし、金融ビッグバンによるリスクを含んだ金融商品の多様化および予定されるペイオフ解禁を鑑み、国民の不安感が強い場合には、移行措  置として国が元本保証をする事により安全性を考慮した金融商品を別途開発し対処する。
◆前述の安全性に考慮した金融商品の利率は、他の民業を圧迫しないまでの低いレベルに止める必要がある(市場金利が低い場合には、口座管  理料を払っての貸し金庫的なものになる。)具体的には国会決議等で決める。
◆前述の安全性に考慮した金融商品は、一般の銀行等が販売取り扱いを行える事とする。
◆この金融商品の運用は、預金保険機構等が行い、預金保険機構等が国に再保険料を支払い元本保証を受ける形とする。

また、郵便局で、住民票の取り扱いを初めとした広範な行政事務を扱えるようにし、公共サービス拠点としてインフラ化し過疎地域の特定郵便局等が淘汰される事を防ごうという案が浮上しているが、広範な行政事務は、一定の用件を備えれば、コンビニエンスストア他の一般民間業者も等しく扱える様にすべきであると思う。

この場合、適切な業務委託料を地方自治体が業者に支払う事となる。
各地方自治体が公共サービス拠点が必要であるとした過疎地域には、業務委託料が高めに設定される事となろう。
その上で、一般の民間業者、元特定郵便局、前述の過疎地域への配達及び受付等のために残った特定郵便局が業務受託を競争する事とする。

以上述べてきたように、公共公営の出動範囲の原則を先ず決めた上で、これに従い三事業について個別に判断し、それぞれ原則民営化し、なお公的な手段が必要な部分のサービス自体については例外とするとした。
具体的な郵政三事業の民営化の姿は、「ナショナル・ミニマムとしてすべての国民が享受すべきサービス」をどのように捉えるかで結論は様々になると思う。
筆者は、ややこれを厚く捉え上記の様な結論としたが、この様なプロセスで民営化を検討する事は今後高まるであろうこの議論に、一つの方向性を与えるものになると考える。

 

                                                     以上

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