・秋霖人心を倦ませ、亀井静香覚醒せず −勝手連オフ会参加記− (2003/11/23)

11月20日夜、筆者は「亀井静香勝手連」オフ会に参加した。
亀井氏は、政局に絡む頻度が高く、予てから筆者が興味を持ってウォッチしてきた
政治家の一人だ。
筆者は、「勝手連」のホームページの掲示板に総裁選挙中、数回書き込みをした程
度の縁だが、今回、オフ会がある事を知り参加させて頂いた。
会場は、六本木の居酒屋。老若合わせた参加者は、20名ぐらいか。会社員風が多
く、女性はいない。
当然、他の参加者とは初対面である。

8時前後に、亀井氏着。
主催者に案内され上座に着くと、亀井氏は、ひとしきり今回総選挙の事や田中真紀
子氏とのエピソード等を面白く脚色して話した。
話しの切れ目を狙い、筆者から何点か質問をして見た。
以下は、そのやりとり。
記憶を基にしているため、順不同で不正確な部分があるが、抜粋して構成した。

亀井「・・・青木さんは、政策なんかどうでも良くて、ただただ権力にしがみつき
   たいと思っている。恐れ入るよ。今回大動員して応援して当選させてやった
   新人も、挨拶に来てやっぱり亀井派には入れませんというんだ。」
筆者「森派に行くんですか。」
亀井「結局、そうなんだろう。」
筆者「今回、民主が200議席まで行ったら、亀井さんが動くという噂があったが。
   小沢さんの方の平野貞夫さんと小林さん辺りで、話し合っていたのでは。」
亀井「ないない。民主党自体バラバラ。向こうが壊れて、自民に流れて来る方が早
   いだろう。民主党は、ごった煮。右は小沢、西村から左は横路もいる。」
筆者「でも小沢さんが入って、民主も結局は右にシフトして行くのでは。」
亀井「しかし、自民の中にも横路さん達と似た考えの人もいる。自社さの時は、社
   会が自民とくっ付いた。」
筆者「10年前ならあったが、今は時代が動いた。今更、横路さん達も行き場所が
   無いのでは。しかし、来夏の参院選で、負ければ小沢さんは、民主を壊すで
   しょう。」
亀井「そう、確実に壊れる。」

筆者「亀井さん次の一手は。」
亀井「年末、通常国会にかけて、イラク、道路公団、年金問題で大もめになる。」
A氏「小泉さんは、自衛隊のイラク派遣結局はするんですかね。」
亀井「もう、出来ないだろう。」
筆者「小沢さんは、国連決議が一応通ったからイラクに自衛隊派遣する事は理論的
   にはOKと言いはじめている。そう言う意味では、民主の中も捩れ始めてい
   る。」
亀井「そうそう。」

筆者「この10年を大きく見ると、2大政党制、各党の掲げる政策の面でも、小沢
   さんの目論む日本のイギリス化が進んだ流れと言えるのでは。」
亀井「小沢さんも権力を手に入れたいだけ。彼とは組めない。」
筆者「でも、小沢さんは亀井さんが好きですよ。」
亀井「俺は付き合えない。自自連立のとき、野中と小沢をホテルで合わせて手打ち
   させたとき、政策合意書をどうしますかって小沢さんに聞いたら『いい、い
   い。適当で構わないそんなもの』て言ってた。もう権力が欲しいだけ。俺は、
   ハーと思ったよ。」
筆者「まあ、握っちまえばどうにでもなると考えていたんでしょう。しかし、権謀
   術数も裏に理念なり政策なりが張り着いていて、その実現手段としてなら是
   とされるのでは。」
亀井「逆だよ、小沢さんは権力だけ。彼が唱える理念や政策はそのための建前、手
   段と言える。でも、権力のためにそう言う事を、シラッとした顔で言える所
   は凄い。結局こういう人が世の中を熨して行くのかもしれない。おれには、
   とてもじゃないが真似できない。」
筆者「戦国武将、乱世の姦雄、三国志の曹操のようなものか。」
亀井「そうかもしれない。」
筆者「彼は、少なくとも所謂日本人ではないとは言える。」
亀井「そう言う意味では、小泉さんに似ているのかも。」

筆者「今度の亀井さんの選挙では、学会が直前で寝返ったと言われているが。」
亀井「末端だろう。幹部は、私に向かってお願いしますと頭を下げた。」
筆者「じゃあ、学会票が敵の佐藤公治陣営に流れたのは中央の指令ではなかった?」
亀井「そうじゃない。佐藤の事務所の壁には、池田大作の肖像の大団幕が張ってあ
   った。末端の人は新進党の頃、私が攻撃した事を今でも恨に持っているんだ
   ろう。なにしろ、私は仏敵と呼ばれていたから。」

B氏「憲法改正はどうですか。」
亀井「憲法改正は、出来ないだろう。国会議員の3分の2の賛成が必要。与野党か
   ら賛成が出なくてはならない。」
筆者「でも、加藤紘一さんのような軽い人をシャッポにして、5年のタームでソフ
   トな改憲が行なわれるのではと私は見ています。」
亀井「私は解釈憲法で十分対応可能だと見ている。」
筆者「いずれにしても当面の政治課題ではない。」
亀井「そう。」
C氏「亀井さん。民主党の西村慎吾さんをどう思いますか。」
亀井「彼のような少数になる事を恐れず、国のために発言する人は貴重だ。」
C氏「平沢さんは?」
亀井「平沢なんかは全然ダメだが、西村さんは真の国士だと思う。」


上記の様に、今後の政局に影響する小沢氏との連携可能性、創価学会との確執につ
いては、いずれも否定的な答えだった。
しかし、特に派閥の長としては、一般人相手の飲み会であってもこれらの事につい
て全くの事実を語る訳には行かないだろうから、本当のところは推測して見るしか
ない。
また、筆者は、亀井氏にはその言動から日本人を超えた大陸的なスケールの大きさ
を想像していたが、実際の亀井氏からは、そういった風は無く「古き良き日本人」
の枠を出るものでなく、何らかのオーラも感じられなかった。
総裁選の敗北、総選挙での自身の苦戦と派閥中堅の荒井広幸氏、栗原博久氏他の落
選等が影響しているものと見られる。
しかし、亀井氏のかつて自社さ、自自連立を成就させ千手観音と呼ばれた策謀家ぶ
り、電話一本でそごうを破綻処理に追いこんだ豪腕は凡百のものではない。
中途半端な結果に終わった今回の総選挙により展望が見えない政局を打ち破り、小
泉政権を倒し、内憂外患に対処し新たな日本を造る一翼を担う事を期待したい。


最後に、酒席の雰囲気にそぐわないので、筆者は出口で亀井氏の帰りしなを選び、
次のように話しかけた。
筆者「亀井さん。打ち出し方を変えなければ。勝たなくては意味が無いんだから。」
亀井「どうやるの。教えてよ。」
筆者「それは、公共事業の次を語る事ですよ。」
合点が行かぬ表情のまま、亀井氏は帰った。
亀井氏も消長を左右しかねない自派の劣勢に対して、何らかの手を打つ必要は感じ
ているだろう。
しかし、その答えは見付かっていまい。

筆者が見るに、現状の問題点と対策として、次の事が言えると思う。
◆「孫子の代まで借金を残して何が悪い。」等はあえて語る必要が無い。
 この言葉を聞けば、9割の国民は引く。
 たとえ政策により日銀引き受けで塩付け国債を発行せざるを得なくとも、「10
 年後にプライマリバランスを実現させ、景気が良くなり返せるときに返して行
 く。」等々だけ言っておけば良い。
◆国民は、亀井派を永遠に巨額の公共事業をし続けるイメージで捉えている。
 公共事業は、目的ではなく、景気刺激と必要なインフラ整備のための手段であり、
 方便であると位置付ける事。
 公共事業後に、それらのインフラを使って、端的に言って地方がどうやって食っ
 て行くか、どんな産業を起こして行くかのモデルを示す事。
◆ 国民は、また、亀井派を弱者保護一辺倒と捉えている。
 弱者保護と自由経済の関係を整理し、その関係を構造的に示す事。
 筆者は、小泉構造改革の「アメリカ型弱肉強食型市場経済」の対立軸となるモデ
 ルとしては、「ナショナルミニマムを伴う自立社会」しかないと考える。

これらを説明する時間はなかったが、もし説明すれば聞く耳を持ち何かしらの役に
立っただろうか。
亀井氏が帰った後、筆者も会の終了を待たず、一足先に地下に在る会場を出た。
外は、ここに来る前から一日中降っていた雨が続いていた。
それは、方向性を失い煮え切らない政局と重なって感じられた。

「秋霖人心を倦ませ、未だ亀井静香覚醒せず」か。

不肖市井の好事家は、ままならぬ政治状況に対し、更なる大声を浴びせ続ける覚悟
だけは固めた。

 

                       以上

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