−提 言−

・植民地謝罪は拉致解決後に。 −小泉訪朝への要望− (2002/9/14: 『朝日新聞』 2002/9/17掲載

17日に迫った小泉首相訪朝の際、首脳会談後に発表する予定の共同宣言の骨格が
次第に固まって来たようです。

報道される所によると、過去の植民地支配については文書には含めないものの、
1995年の「村山談話」に沿った言葉を述べ謝罪の意を表明するとされています。
一方、拉致問題は生存者の確認、最大でも謝罪なしの解放、帰還に止まりそうです。

これについて私は、植民地支配の謝罪については国交正常化に必要なものと考えま
すが、その前に先ず、拉致事件の事実認定、謝罪がなされるべきであると思います。

植民地支配は、支配、併合までの強引な過程はあれども基本的に当時の列強の植民
地主義の国際情勢の中で行われた事で、それを現在の観点から反省するものであり、
現在進行形の犯罪である拉致事件とは性質の異なるものです。
拉致事件という明確な犯罪について、少なくとも北朝鮮がはっきりとした形で事実
認定する事に先んじて、日本から北朝鮮に謝罪をすべきでは有りません。

北朝鮮の核・ミサイル開発疑惑については、米国の強い圧力もあって、北朝鮮が国
際原子力機関(IAEA)の査察への協力を開始し、2003年までのミサイル実
験凍結期間を延長する意向を明記する等の前進が予想されています。
これらは当然日本の国益にも合致したものですが、一方、米国、韓国等の国益と直
接の関係がない拉致問題、不審船問題等では明確なケジメが付かないというアンバ
ランスな事になりかねません。

拉致問題等での原則と哲学を欠いた態度は、再開後の国交正常化交渉での植民地支
配への「補償」総額等の交渉でも北朝鮮に主導権を握られることに繋がります。

日本の国益は、日本自身が守らなければ誰も守ってくれません。
現在北朝鮮には、深刻な食糧事情の打開と米国による軍事攻撃等の回避のため国交
正常化交渉再開を切望してる状況が有ります。
小泉首相は、北朝鮮が少なくとも拉致問題等での事実認定をしない場合には、今回
は席を立って帰ってくるべきです。

小泉首相が形式的な「会談成功」のパフォーマンスを追求せず、大局的な歴史観と
長期的な戦略をもって毅然たる態度で会談に臨む事を期待致します。

 

                       以上

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