−提 言−
・「新保守主義」の定義について−試論1 (2001/2/10)
「新保守主義的政権が生まれ、日本がトータルな方向性を得る事が無ければ、今日の政治、経済、社会秩序、各面での様々な行き詰まりを打開する事は出来ず、日本は漂流し続けるだろう。」と言うのが、筆者の以前からの観測である。
さて、その場合に、「新保守主義とは一体何なのか」との質問をよく受ける。前述の観測にも拘わらず、筆者自身、今までこれによく答えられないで来た。
そもそも、「保守」「リベラル」「新保守」の概念は、各国によって異なり、各時代によって様々に変容してきた。
しかし、定義の無い曖昧な概念で、広く社会に方向性を喚起する事は出来ず、また万一出来たとしたら情緒的な危ういものになってしまうだろう。
そこで、未消化のところはあるが、エドモンド・バーク等の伝統的保守概念等も或る程度踏まえながらも、現状はどうであるか、また現在の社会をあるべき方向へ動かす原理、力たり得る為には、それぞれをどう定義するのが最も適当かと言う観点を中心に、以下これらについて論考した。
−保守主義−
- 保守主義とは、現在が過去と連続性を保ちながら維持され、未来はその延長線上に在るべきであると言う考え方である。
- 時代、状況の変化に対応するために、自身も変化すべきであるとは考えるが、あくまでそれは、取り巻く状況の変化の結果を受けての受動的なものに限られる傾向が在る。
−リベラル−
- Liberalism
とは、文字どおり自由主義であるが、現在は、国家の統制からの自由を求める一方、「貧困や失業を国家が除去することは個人の自由を保証することにつながるから、国家の積極的な介入はむしろ個人の自由を促進するものである」との理論から、「福祉国家」的な面を拡大させる傾向が在る。
- また、定められた国家権力を行使する事にも慎重なところがある。
−新保守主義−
- 新保守主義とは、現在が過去と連続性を保ちながら維持され、未来はその延長線上に在るべきであると言う考え方である事は、基本的に保守主義と変らない。
- だが、時代状況によっては、連続性よりも断絶、変化を積極的に求めるべきと言う考え方である。
- 現状の維持、断絶・変化は、国家、社会の利害得失により、事項、時機に応じ是非を判断し、それらを有効適切に組み合わせる事が、責任ある態度であると言う立場を取る。
- また、限定された範囲で、国家権力を行使する事に躊躇しない傾向がある。
- 経済、福祉面では、「新自由主義」とも言われる。福祉国家的な要素を縮小し、夜警国家的な小さな政府を目指すが、基準を決め、ソーシャルミニマムとしての福祉、社会保障を実現を目指す。
- これと自由経済、個人の自助努力との構造的組み合わせで、メリハリある社会を造り、自由と安心を同時に実現しようとする。
以上のように論考したが、「保守」「リベラル」「新保守」の概念は、相対的で逃げ水の様なところがある。
さらに、日本では55年体制からの保守・革新の対立構造がまだ少なからず残っており、これとの関係も考慮に入れ整理しなければならない。
今後も論考を続けたい。広くご意見頂ければ幸いである。
以上
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