−提 言−

 ・「戦略的親米論」(1999/6/28)

ここ一年程、寺島実郎氏、細川元首相、さらには民主党の常時駐留無き安保論等の様に米軍の日本からの撤退論が起きてきている事に若干の懸念を感じるものである。

寺島氏の唱える「撤退論」は、国際秩序の維持を担うため精神的にも日本が自立する事の延長線上に想定されているものである。これは単純な反米、嫌米の様な偏狭なナショナリズムから来るものではない。私見によれば偏狭なナショナリズムとは即ち戦略無きナショナリズムであり勝利無き思想であり、愛国の情は奇貨とすべき面もあるが、国家社会に対して最終的に責任を持たない態度と思える。

寺島氏らの「撤退論」はその面では健全なものであり非とするものではない。が、ここ当面の課題では無いながらも、来世紀の世界秩序を考えると、「日本の精神的自立即ち米軍の撤退」と言う点に戦略の欠如を感じる。

来世紀、アメリカは貧富の格差の拡大等の社会矛盾により衰退に向かう可能性は在りながら、少なくとも最初の四半世紀は依然世界最強の国家で在り続けると思われる。最強の国家と強固な同盟を組む事が古来戦略の基本であり、第二の国力を持つ国家がその最強と組む事が世界秩序を構成する骨格になる。

歴史を俯瞰すれば、洋の東西を問わず世界の秩序が維持されたのは地域諸国が微妙な勢力の均衡を保った時期(米ソ冷戦を含む)および古代ローマ帝国に代表される一強国が軍事力、文明・経済システムを司る時に生じた。

この帝国型モデルに功罪は在れど、現在の「昏迷」の時代を「混沌」の時代に陥らせないためには大国にとって現実的な戦略を取る義務がある。国連中心主義は安全保障の面では当面難しい面がある。

やや余談になるが、沖縄普天間基地の移動先の15年使用期限の条件は、25年後の見直し条項を挿入する当たりに落ち着くのではないか。

将来日本の世界秩序主催が遠い未来あるいは在るかもしないが、米軍を中心にした世界秩序は少なくも十から二十年は変わらないと考える。

ここに、日本の国益と世界秩序の形成のために、「戦略的親米論」を唱える。

                                                     以上

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