−提 言−

 ・求めるべきは、痛みではない (2001/9/1『週刊 東洋経済』 2001/9/15号掲載)  

9月決算を控え、わが国の経済、株価の落ち込みは一向に止まる様子が見えません。

構造改革を謳い国民の絶大な支持を受け成立した小泉政権ですが、この状況の根本原因は最初のボタンの掛け違いとして国民に対し「痛み」という言葉を使いこれを求めた事にあるのではないかと思います。

一見単なる用語の問題にも思えますが、痛みという言葉から受けるのは、痛みに耐えさえすれば経済、財政の危機が自動的に克服される、または痛みっぱなしというイメージです。
政府自らもこのイメージに無意識に引っ張られ、それが政策の具体性の希薄さ、遅れとして表れているのではないかと思います。
また、これに国民が真剣に対応すればする程、生活防衛のために消費を押さえる事の影響があります。

政治が真に国民に求めるべきは、月並みな言葉ですが「挑戦」と「努力」という言葉で表されるものではないかと思います。
「挑戦」や「努力」という言葉から受けるのは、たとえ転職等の試練を味わってもスポーツや勉強のように目標に向かって挑戦し、適切な方法を用いて努力をすれば報いられる事が含意されたイメージです。

当然に、政府はその仕組みを造る施策をし、国民に根拠在る挑戦と努力の方向性を示すべきです。
不良債権処理、社会保障、規制緩和等で切り込みが浅く、在らしむべき社会のビジョンが不明確な小泉政権ですが、「挑戦」と「努力」及びそれに伴う「相応な報酬」をキーワードに政策全般を点検し直し整合性を持って具体化し、可能な所から早急に実行する事を要求致します。

手遅れにならないよう小泉総理の虚心坦懐な判断を望みます。

                       以上

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