−提 言−

・今後十年の国家シナリオ (2001/4/1: 月刊 『黙 (MOKU)』 2001年5月号掲載)

現在、日本はバブル崩壊後、経済の一時回復兆し後の橋龍不況、自自公の小渕小沢体制による経済の小康状態、その後の日経平均のバブル後最安値等の浮き沈みを経て、追い込まれた上での亀井静香氏主導による与党三党の緊急経済対策及び銀行の直接償却促進傾向により、バブル清算の最終段階に入ってきたと言われる。

亀井氏の緊急経済対策に対し、党税調、政府は、4月中に具体的な法案を作成する事になった。
しかし、亀井氏の対策は当面の地滑り対策、中期的具体戦術としての意味は大きいが、消費税の福祉目的税化等の長期的視野の政策に踏み込まず、また個々の政策の関係が時間軸、因果関係の上で整理されておらず、全体的にパッケージとしての一体感に弱い。正に緊急対策としての限界が在ろう。

それが明確になるにつれ、本年7月の参院選前に、景気、株価の腰折れが始まる可能性が高い。
参院選後に、戦略的な改革案を打ち出し国民の合意を得て、これを断行出来る政権が成立し無ければ、日本の低迷は継続するだろうと言うのが現在の私の観測である。

さてそこで、視野を少し大きくとって、日本の今後十年の国家シナリオとしては、どの様なものが望ましいか、経済を中心に以下に私なりの大まかな絵を描いてみたい。

まず、掲げるべきビジョン、在らしめたいとする社会の姿として、「発展と調和の同時実現。即ち一定レベルのナショナル・ミニマムと規律を伴った、自由な経済、学問、芸術、種々の社会活動が保証された、自助努力をベースにした自立社会」を掲げたい。
また、当然に国際的にも尊敬される役割を果たす国家国民でありたい。

次に、中長期戦略としては、2005年度までに、国家財政の収支のプリマリー・バランスを実現する事を目指す。また、消費税の福祉目的税化等の現実的な社会保障の具体化を実現させる。道州制等の地方分権、首相公選制とこれに付随した国会改革、さらに家と個人の関係の構造的位置づけ及び権利義務を明確にする事を中心に据えた憲法改正も、この時期までに具体的に目処が付く様にし、遅くとも2010年までには完成させる。

短期的な戦略戦術としては、2002年度までに、GDPの安定的2%以上成長を目指す。直接償却等の外科手術、債権、資金、不動産及び雇用の流動化により、バブル崩壊の最終処理を図る
雇用保険の支給期間の延長、公共事業の中身見直し等を伴った有効な財政支出、大胆な金融緩和、消費税の一時的凍結等のカンフル剤、またIT業等の振興、規制緩和の促進等の漢方薬的処方を組み合わせて行い、外科手術に伴い必然的に起こるデフレの抑止対策等とする。

なお、今年年度末には670兆円に達しようといわれる公的債務だが、楽天的過ぎるとの批判を受けようが、私は例えば上記の様なシナリオに沿って、日本社会に明るい方向性が出てくれば何とかなると思う。
一般社会においても、まじめに働き少しずつでも返済の努力をすれば、そうそう貸し手も借り手を見殺しにするような事はしないものである。
前述の財政のプリマリー・バランスを実現すれば、理論的に言えば何十(何百)年かすれば、返済する事が出来る。

また、今後権利として発生するであろう、大深度地下の占有権、深海資源の利用権、電波帯域の使用権再配分、建物の容積率を拡大させた上での使用権、進んでは多分にSFの世界に踏み込むが、遠い将来の月、火星等宇宙空間の土地使用権等の新しい諸権利を国や自治体のものとして販売すれば、現時点では測定できないが、かなり大きな収入源になろう。これは、物理的形態を伴わない他の新しく発生する諸権利についても同様の事が言える。

将来に対する方向性と政策のパッケージ化に留意しつつ、政治家他の指導者、国民が明るい未来を描き、具体的に努力すれば日本の復活と繁栄は必ず実現する。

ここ暫くの政局の変動、政策議論の高まりを機に、指導者、マスコミ、国民各層が共に責任ある議論を通じ、日本再生のための国論を形成すべき時である。

                                                     以上

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