−提 言−
・今後十年の国家シナリオ(骨太の方針対案) −DRAFT− (2001/7/8)
日本の今後十年の国家戦略としては、どの様なものが望ましいのか。
先月、小泉内閣の構造改革のシナリオとして竹中平蔵経済財政担当相主導で作成発表された「骨太の方針」への対案として、経済、財政を中心に以下に筆者なりの大まかな絵を描く事とする。
当拙案は、理念、ビジョン、戦略・戦術の順で記述した。また戦略・戦術は実行手順に従い中長期、短期に分けた上で、それぞれ具体的な完了年度を付記し改革の概略作戦書、実効あるシナリオとなることを目指した。
報道される所によると、竹中大臣は意見のある者は単なる批判、異論反論でなく代替案としてポリシーペーパーを出すよう呼びかけたと言うことである。
筆者は、当拙案を2001年7月8日に経済財政諮問会議および首相官邸にインターネットにより発信した。筆者のような市井の者の意見はいかなる扱いになるのか。あるいは全く省みられる事は無いのか。
経済財政諮問会議の誠意を期待しつつ、対応を待ちたい。
− 概 要 −
−基本理念 (目指すべき方向性)−
・発展と調和の同時実現
−ビジョン (在らしめたいとする社会の姿)−
・一定範囲のナショナル・ミニマムを伴った、規律ある自立社会の建設
・危機管理体制の確立
・地方分権社会の確立
・都市と地方の在り方の原則の確立
・国際貢献の推進
・「公」の概念の確立、育成
−中長期戦略−
・財政収支のプライマリー・バランスの実現
・ナショナルミニマムとしての社会保障の確立
・国の形の確定
・税制改革
−短期戦略・戦術−
・消費税の福祉目的税化
・GDPの安定的3%以上成長の実現
・規制緩和の包括的実現
・公共投資の効率化
・公的部門の民営化、特殊法人の原則廃止
・不良債権処理等
・デフレ・雇用対策
・持ち合い株買取り機構
−上記シナリオの具体化・実行・変更−
−経済成長と財政収支の推移目標−
− 本 文 −
−基本理念 (目指すべき方向性)−
- 発展と調和の同時実現
以下に述べる社会の姿を通し、発展と調和の同時実現を図る。
−ビジョン (在らしめたいとする社会の姿)−
- 一定範囲のナショナル・ミニマムを伴った、規律ある自立社会の建設
自由な学問、芸術、文化、経済、種々の社会活動が保証された、一定範囲のナショナル・ミニマムを伴った、自助努力をベースにした規律ある自立社会の建設を目指す。
- 危機管理体制の確立
防衛、災害対策、食料安保、経済分野での緊急事態に対応する十分な体制を整備する。
- 地方分権社会の確立
国家は、危機管理、基礎的教育、および治安維持、基礎的基準作り、社会的安全ネットの構築を担い、地方公共団体は残りの生活基盤的サービスを担う。
この役割分担に沿った財源の在り方を整備する。
- 都市と地方の在り方の原則の確立
地方公共団体は各々財政的に自立するのが基本であるが、都市と地方は、互いに補完しあう関係にある事への配慮が必要である。
都市は主に経済、文化活動の中心であり、地方は主に水、食料を供給すると共に自然や寛ぎを提供する都市の裏庭である。これらを踏まえ、都市と地方の在り方の原則を確立する。
- 国際貢献の推進
国際的に尊敬される役割を果たす国家国民となる事を目指す。
- 「公」の概念の確立、育成
上記の様な社会を支える背骨は、「公(おおやけ)」の概念である。
「公」の具体的現われの最も顕著なものとして、国家は上記に述べた社会を実現、維持するための基盤、国民及び社会を保護育成する母船、公器であるべきである。
国家は、この様なものとして尊重されるべきであると共に、その目的範囲を逸脱し国民を圧迫したり、他国に脅威を与えるべきものではない。
これらを踏まえ、「公」の概念の確立、育成を行う。
−中長期戦略−
- 財政収支のプライマリー・バランスの実現
2005年度中までに、国家財政の収支のプライマリー・バランスを実現する事を目指す。
- ナショナルミニマムとしての社会保障の確立
消費税の福祉目的税化に引き続き、2003年度中までに国民的議論を経て負担と給付の内容を明確にし、2005年度中を目処にそれを実現させ、ナショナルミニマムとしての社会保障を確立させる。
- 国の形の確定
2004年度中までに、下記の課題について具体的に目処が付く様にする。必要なら憲法改正を行い、これらを遅くとも2008年度中までには完成させる。
- 道州制等の地方分権、財源措置の確立
- 例えば首相公選制等を含む国会改革
- 国家と個人の関係の構造的位置づけ及び権利義務を明確にする事
- 危機管理体制の確立
- 国際貢献を推進する体制の確立
- 税制改革
上記「ビジョン・在らしめたいとする社会の姿」「中長期戦略」に適合する形での税制改革を2005年度を目処に行う。
−短期戦略・戦術−
- 消費税の福祉目的税化
消費税の福祉目的税化の立法措置を2001年中に行う。これにより少子高齢化社会に対する安心の一応の根拠を国民に示す。
ただし、消費税を基礎的社会保障(基礎年金、老人医療、介護保険)に用いると言う事のみ決め、それ以外の具体的な税率、保障の範囲はここでは決めず、中長期戦略に述べた国民的議論に任せる。
- GDPの安定的3%以上成長の実現
概ね、GDPの2001年度1%成長、2002年度2%成長を経て、2003年度の安定的3%以上成長の実現を目指す。
- 規制緩和の包括的実現
新たな産業、参入、雇用創設のために、現在ある各分野の規制を2002年度中に原則廃止させる。
残すべき必要な規制は公開の議論を通して、それまでに新たに制定しておく。これを内閣の指揮管理下で行う。
- 公共投資の効率化
公共投資の経済波及効果、公共サービスとしての必要度等の諸効果の統一的測定基準を2001年度中に確立する。また、諸外国との比較等によるコストの適正基準の設定、PFI方式の導入を図る。
公共投資は、これらに基づき費用対効果により優先順位を付け行い、効率化を図る。
- 公的部門の民営化、特殊法人の原則廃止
2002年度中を目処に、民営化できるものはすべて民営化する事を原則に、公的部門の民営化、エージェンシー化、特殊法人の原則廃止、民営化案を具体化し、2004年度までに実行する。
- 不良債権処理等
2001年度中までに、不良債権の直接償却等の外科手術、債権、資金、不動産及び雇用の流動化により、バブル崩壊の下記最終処理のスキームを完成させ、2〜3年以内に主要部分の処理を完了し、残り部分の処理についてもスケジュール化する。
- 直接償却への税制面等による誘導
- 産業再生整理委員会の創設 (強制力を持ち対象企業の指定、処理案を作成すると共に、景気動向を見ながらコントロールして整理統合処理を行う。当委員会の決定に基づく直接償却により金融機関に自己資本不足が生じた場合には、政府は資本注入を行う。)
- 債権買取り流動化機構の創設 (整理回収機構の改組。債権の証券化、マーケット創設等も受け持つ。)
- 不動産買取り流動化機構の創設 (不動産の証券化、マーケット創設等も受け持つ。また不動産を運用しての収益事業も行う。)
- デフレ・雇用対策
下記を組み合わせて行い、外科手術に伴い必然的に起こるデフレの抑止対策とする。
- 雇用保険の支給期間の延長、職業訓練、教育の強化広範囲化等の雇用対策
- 公共投資の中身見直し等を伴った有効な財政支出、大胆な金融緩和、デフレが甚だしい場合には消費税の一時的凍結等のカンフル剤
- またIT産業等の新産業振興、前述の規制緩和の促進等の漢方薬的処方
- 持ち合い株買取り機構
自由なマーケットの原則からは本来ではないが、時価会計本格導入を控えての急激な解消売り可能性に対する危機管理対策として、「持ち合い株買取り機構」を2002年3月決算に十分間に合う形で創設する。
損失が生じた場合の政府保証は極力避け、税制による誘導、あるいは強制的買取りにより急激な解消売りの発生を未然に防ぐ。
−上記シナリオの具体化・実行・変更−
上記シナリオは、可能な部分から直ちに具体化・実行する。
また、オープンな国民的議論に晒し、内容、実行時期等について必要なら逐次変更する。
−経済成長と財政収支の推移目標−
政府は、早急に上記に述べた数値を目安としながらも、諸政策の具体化に伴いマクロモデルを組上げ、経済成長と財政収支の根拠ある推移目標を提示する。
また、時の経過、シナリオの変更に伴い逐次見直して行く。
以上
http://www.asahi-net.or.jp/~EW7K-STU/#提言
http://www.asahi-net.or.jp/~EW7K-STU/