−提 言−

 ・今後ありうべき外交戦略の基本 (2002/8/21: 『外交フォーラム』 2002年11月号掲載) 

戦略無き日本と我が国が言われて久しいが、新世紀を生残るためには、国家戦略を
立てて勝ち抜かなければならない。それは、日本が新しい世界秩序の創造に主体的
に関わるための基盤ともなる。以下に筆者の基本的な考えを述べる。

冷戦を勝ち抜いた米国は、翳りが見えてきたとは言え金融、IT産業により経済で
も1人勝ちをした。
その勢いに乗じた経済、軍事等での独断専行的な行動に対して、9.11の米国同
時多発テロに代表されるように、イスラム勢力等の怨嗟の標的となっている。
また、EU諸国からもその行き過ぎを指摘され始めている。
しかしながら基本的には、日本はEU諸国等と共に自由経済、民主主義という価値
をアメリカと共有している。
また、米国は少なくとも今世紀初頭の10年間は唯一の超大国として覇権を握り続
け、そのパワーを中心に世界秩序が構成されている事だろう。
この状況を踏まえ、ここ暫く日本の取るべき態度は、現在の対米盲従を捨てた上で
の「戦略的親米」であろう。
主にEU諸国、ASEAN諸国等と結び、米国の倣岸さを諌め具体的手段によって
掣肘しつつ、自由経済、民主主義を共にする諸国として米国との結束を固める。

欧米に対抗した「イスラムの理論」「アジアの理論」はそれぞれにあり得るが、自
由経済と民主主義ほど明確に理論化普遍化されたものではない。
また、日本の世論の中で大きくなりつつある国益と世界秩序の姿を具体的に示せな
い情緒的で単純な反米は、人情として理解は出来ても戦略ではない。
なお、米国の独断専行を牽制するためにも国連改革、機能強化を図り、日本はイン
ド等と共に安保理の常任理事国入りを目指すべきである。
国連の集団安全保障活動に、主体的に参加可能にするためにも第9条を含む憲法改
正を十分な議論の下、迅速に実現すべきである。

また、日本は世界秩序の変動に備え主体的役割を演じるために、例えば「地球規模
の発展と調和の同時実現」というような大構えの錦の御旗を今から理念として掲げ
世界に向け発信すべきであろう。これが「現実的な理想主義」として説得力を持つ
ためにも、軍事力を含めた一定のパワーを身に付けるべきである。

 

                       以上

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