−提 言−

 ・小泉構造改革失敗原因の分析 (2001/10/27『朝日新聞』 2001/11/3掲載)

経済、株価はより一層の悪化が予想され、一方構造改革は遅々として進展を見せない。
依然として内閣支持率は空前の高水準を続けるが、筆者には既に小泉構造改革はほぼ失敗が確定したように観察される。
そこで、少し気の早い観もあるが、以下に小泉構造改革失敗原因の分析をしてみたい。
この分析が心有る読者の目に触れ、たとえ大海の一滴であっても世論の変化を通し小泉内閣の政策変更に影響する事があれば、望外の幸いである。


−分析−
・首相自身の理念、歴史観、ビジョンが希薄なために、漠然としたアメリカ型自由競争社会的イメージという以上の「在らしむべき社会の姿」「改革の方向性」を具体的に提示出来ていない事。
 また、これが原因で、改革推進に対し首相の具体的指導力が結果として不足している事。

・ このため、経済・財政運営の「骨太の方針」は、総花的かつ社会保障はじめ現行制度を前提とした対症療法的改革案の羅列になってしまった事。

・また、この「骨太の方針」を基に改革の具体化、肉付けを各省庁、諮問機関に委ねる体制を取っているため、切り込みの浅い、かつ全体の戦略性、整合性の希薄な物しか出来ない事。またこれ自体大幅に遅れている事。

・改革に伴うデフレ、痛みを食い止める社会保障改革、景気対策、雇用対策を事前に十分に取らないため、逆にデフレを伴う規制緩和、不良債権処理、特殊法人改革等の構造改革を思い切って行えない事。総じて政策全般が小振りで弱い事。
 また、結果として、財務省が悲願とする緊縮財政だけが具体的な政策として行われている事。

・これらのため、「聖域無き構造改革」「痛みを伴う改革」のキャッチフレーズにより、国民から絶大な内閣支持率を得たにもかかわらず、国民に努力の方向性と安心感を与えられず予期していた以上の消費、投資のスパイラル的縮小を招いている事。

・改革の理念が希薄なため、結果として高支持率維持が政策の中心的判断基準となり、これに反する不良債権処理に伴う公的資金注入等の選択肢が制約されている事。

・また、この改革の理念の不明確性のため「抵抗勢力」と正面からぶつかり合って徹底的な議論を通し妥当な結論を導く事が出来ず、曖昧な対立構造のまま時間を浪費している事。

・法的整合性の曖昧な「テロ対策特別設置法案」と、これに伴う不十分な国内テロ対策にも象徴されるように、政権に全体的な危機管理意識が希薄な事。

                       以上

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