−提 言−

 ・住基ネット強行は、官僚傀儡政治の象徴 (2002/7/25 『産経新聞』 2002/8/1掲載)

多くの国民の不安を押し切って、住基ネット導入が強行されようとしている。

そもそもこの導入は、行政による情報の不正使用や漏洩を防ぐ個人情報保護法とセ
ットで導入すると故小渕元首相の国会答弁の中で明言されているにも拘わらず、そ
の成立なしに行われる。

個人情報保護法が決議まで至らなかったのは、総務官僚が肝心の行政規制の実効あ
るスキームを構築出来なかったばかりか、代りに欲を出しこの機に乗じて民間の規
制を刷り込ませたからだ。

住基ネットの本質は納税者番号等の行政の効率化に繋がるものであり、これ自体の
是非については賛否が分かれよう。
だが現自公保政権が、運用の安全の前提が崩れたにも拘わらずこれを強行しようと
しているのは、官僚の「夢」のために自らその下僕と化している事に他ならない。

省みれば、現小泉政権で旧大蔵官僚は増税を目論み、マクロ経済の視点を除外した
まま緊縮財政路線を推進させ日本経済を危い運営に追い込んでいるとの批判もある。
だが、考えてみれば旧大蔵官僚が税を多く取り支出を絞るのは職務上当然の事であ
る。
問題は、官僚をコントロール出来ないばかりか逆に官僚にコントロールされている
現政権にこそある。
政治にコントロールされない官僚組織は、政治にコントロールされない軍隊同様に
自己目的化してしまう危険な性質を持つ。
今回の住基ネット強行の問題は、個人情報が危険に曝されている事と共に、官僚を
コントロールする意志を失った政権がその座にあり続け、国家の体をなしていない
事に有る。

野党4党は、一致して「凍結法案」を提出している。同じく凍結を求める自民党内
の一部もこれに乗る構えがある。
もしそうなれば、「凍結法案」成立の可能性大という。
小泉政権が、党議拘束を掛けさせるべきではないのは当然であるが、たとえそうな
らなくとも、事の重大性を鑑み、凍結を求める自民党内勢力は理非曲直を明らかに
し初心を曲げるべきではない。
さもなくば、政局が目的の哲学を欠いた単なる抵抗勢力のパフォーマンスだったと
結論付けられても仕方あるまい。

「凍結法案」が成立する事無く、住基ネットがなし崩しの導入をされる事は、即ち
議会制民主主義とこの国の溶解の開始を意味しよう。

 

                       以上

http://www.asahi-net.or.jp/~EW7K-STU/#提言

http://www.asahi-net.or.jp/~EW7K-STU/