−提 言−
・FTA促進と「食料自給権」の確立 (2003/8/24: 『日経ビジネス』 2003年9月15日号掲載)
自由貿易協定(FTA)が世界的に拡大している。
FTA締結の動きに及び腰だった日本も、シンガポールに続きASEANとFTA
を結ぼうとしている。
中国の進出への対抗上これを急ぐべきとの議論がある一方、将来的には中国等も含
め東アジア共同体を目指すべきとする構想もある。
いずれにしても、日本は自由貿易体制の徹底で大きな利益が得られ、自ら積極的に
推進していくべきである。
FTAは、2国間や特定域内での物品の関税その他の制限的通商規則やサービス貿
易の障壁等の撤廃、進んでは人的交流、通関や知的所有権の手続き、投資環境整備
等の幅広い分野を内容とするものである。
既に欧米では、EUやNAFTA等が推進され、国際的大競争時代に備える態勢と
なっている。
02年1月、小泉首相がシンガポールで提唱した「包括的経済連携構想」をきっか
けとして、 実際に結ばれたシンガポールとのFTAは最も敏感な農水産物が除外
され、今後のASEANとのFTA推進もこれが最大のネックとなっている。
農水産物を除けば、これが主要輸出品のASEAN国家らはFTAを推進する理由
がなくなる。
一方で、日本は自民党支持層である農水産物の生産者への配慮からこの自由化に踏
み込めず、折角の構想も頓挫している。
この袋小路を打ち破るためには、食料安保を軸に農水産物のうち護るべきものと自
由化して譲るべきものを切り分ける事が不可欠だ。
まず、食糧安保の基本計画を策定し、そこで定めた食料自給率確保のために必要な
生産物の種類と数量の特定、これに必要な生産確保に関する施策を国内法で定める。
その上で、護るものは堂々と護り、 譲るべきは譲りFTAを早急に推進すべきで
あろう。
また進んでは、このエッセンスを「食料自給権」として国際交渉の舞台で認知させ、
普遍的な国家主権の一部として確立すべきである。
将来的に世界的な食料不足が予想される中、それは十分現実的な事と思われる。
以上