・アメリカ国民は、イラクをどうしたいのか (2004/5/5: 『月刊 世相』 2004年6月号掲載

イラクの地は燃えている。
1年前に大規模な戦闘の終了が宣言されてからも、自爆テロやその巻き添えやアメ
リカ兵の銃弾により多くのイラク人が死んでいる。
加えて、輸送機に運ばれ母国へ戻るアメリカ兵と友軍の兵士達の棺の数も毎月のよ
うに増え、いずれ千に届かんばかりだ。

この戦争の目的は、9.11のようなテロを防ぐための大量破壊兵器や独裁者の排
除、イラクの民主化とドミノ効果による中東全体の民主化等であるとブッシュ政権
から語られた。

この他の隠された戦争目的として主に海外では、大統領の父が受けた侮辱への復讐、
軍需とイラク復興需要による景気刺激、イラクの石油利権、イスラエルの中東での
基盤強化、石油決済のドルからユーロへの移行阻止、アメリカを戦争状態に置く事
によるブッシュの大統領選再選、アメリカによる大中東圏支配への企て等があるの
ではないかと噂されている。

イラクや世界各地にイスラム過激派の仕業だと見られるテロが広がっている原因は、
世界の同意を得ないで戦争を始めた強引さや、未だに発見されない大量破壊兵器の
危険性をブッシュやブレア−が開戦当時自国民や世界に対して意図的に誇張した疑
いがある事、イラクの民主化等よりも石油利権等の恣意的要素が戦争の真の目的だ
ったのではと世界中から思われている事等が、テロリストに口実を与えている事が
大きい。

民主化は歴史の大きな流れである。
独裁体制のまま、必ずしも大量の血さえ流れなければよいという訳ではないだろう。
永久の隷属は精神の死を意味する。
また、極東のある貧しい国では、独裁のために多くの国民が飢え、処刑され、傷病
に対し満足な治療も受けられず死んで行く。
この戦争によりフセイン政権の独裁が終焉した事自体は、イラク国民の多くが評価
している。

戦争は既に起こった。
開戦過程の問題について、ここでは問う事は控える。
しかし、真の戦争の目的が傀儡政権の樹立や石油の獲得等に過ぎなかった場合、双
方で流された血は果して報われるだろうか。
また、報復の連鎖は絶ち切れるだろうか。

アメリカよ、アメリカ国民よ。
あなた方は、イラクで本当は何がやりたいのだ。
中東をどう変えたいのだ。
多くの血を流して、率直に言って何を得たいのだ。

まず自分達の望みを内省し整理して提示して欲しい。
政権やメディアの流す事だけを鵜呑みにせず、しばし深く自問して欲しい。
そして、今後は自らの良心に従いアメリカを動かして欲しい。
我々他国民は、あなた方が自国の国益だけでなく、世界の発展と調和の同時実現を
共に望む国民であると信じたい。

気紛れに暴れる巨象に対処出来る程、世界は堅牢には出来ておらず、大義無き流血
が許される程、人命は軽くない。


(なお当拙文については、英訳して海外各方面へ発信するつもりです。)

 

                       以上

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