−提 言−

 ・2つの有事法案について (2002/5/25)

自民党案の対案として、自由党案が提出された。
今後、民主党等他党からは対案が出ない模様なので、取り敢えず議論の叩き台が出
揃った。

自民党案は、自由党が基本法であるのに対し具体法であると言う事もあるが、「有
事」の場合に平時と違い政府等が実行可能な事項を個別に上げている。
また、「有事」とは何かの定義が当法案の生命となり、この説明に国会答弁の多く
の時間が費やされている。
なお、当有事法案は戦闘地域までの武器兵員の輸送等のみに適用され、実際戦闘状
態になったら戦時国際法以外は超法規となり適用範囲外となる事が政府から示され
ており、軍事ジャーナリスト等一部の専門家からは無用の長物との酷評も在る。

一方、自由党の非常事態対処基本法案は、侵略、テロ、大規模災害など「通常の危
機管理体制では適切に対処することが困難な事態」を「非常事態」とし、包括的定
義のみをしている。
その上で、@首相が原則、国会の事前承認を得て非常事態を布告 Aその場合、内
閣は地方自治体の事務の直接執行等が出来るとし、その上で、B国会が議決すれば、
首相は速やかに布告を廃止するとしている。
自由党案は、有事の際に首相へ権限集中する事を中心に据え、これを議会と対立構
造に置き牽制させる。
その上で、権限集中およびこれを解除する手続に主眼を置く。

私見を述べれば、自由党案に見られる、有事における国家権力強化の必要性と人権
保護の必要性を意識的に対立的価値に据える視点、およびその上でシステマチック
に牽制機能を組み込むコンセプトは、有事立法に必須であると考える。

民主党の出方等、両法案の行方は予断を許さないが、今後マスコミによる諸外国の
事例紹介を含め国民的議論が高まる事を期待する。

議論の中心として、権限集中、解除の議会手続の精緻化、有事下に於ける禁止事項
列挙明確化が重点的に議論される事を望む。

なお、歴史を鑑み「ヒトラー」の出現を防ぐため、非常事態における有事法制自体
の改廃禁止等を敢えて法律に明文化する必要ありと考える。 

 

                       以上

http://www.asahi-net.or.jp/~EW7K-STU/#提言

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