【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第一回
「恩人」
僕がジャズを聴くようになる以前は、統一の無い混沌とした音楽というイメージがあり少なからず抵抗があった。
そのイメージを打ち砕き、僕をジャズの世界に、上手に上手に、新宿歌舞伎町の呼び込みのニイチャンにも
勝るとも劣らない位に見事に誘い込んでくれた。
言ってみれば恩人のような1枚を今日はご紹介する。
「ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン」
ジョン・コルトレーン、ジョニー・ハートマンというのは、お察しいただけているかとは思うが、人の名前である。
どうしてもピンとこないイメージが沸かない、という方は、テツ&トモ、と同じようなことだ、
と御理解いただく程度で、この場は可としよう。
ちなみに言っとくと、ジョン・コルトレーンはサックス奏者、ジョニー・ハートマンはヴォーカルである。
1曲目を聴いてみる。「ゼイ・セイ・イッツワンダフル」。
もうこの時点で既に僕らは歌舞伎町のニイチャンの誘惑に・・・、いや違った、
このアルバムの持つ甘美な温かい世界に引き込まれていくのである。
このアルバムの曲は皆良い。
特にフランク・シナトラの歌った「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ」1曲聴くだけでも価値があるだろう。
この盤を象徴する言葉で良く言われるのが「一期一会」。
コルトレーンもハートマンも勿論既に世に無く、この組み合わせは後にも先にもこれしか無い。
ありゃ?、テツ&トモとは大分違うなあ・・・。
(ジャンル:音楽)関連URL:ユニバーサルのページ
http://www.universal-music.co.jp/jazz/best200/UCCU-5049.html
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第二回
「目から鱗〜 ブラジル音楽」
先入観の崩壊は、しばしば心地良いものである。
何かにハマる時、先入観を崩壊されたことがキッカケになることが多い。
今日は、そんな先入観崩壊必殺仕掛人としてブラジルのアーチスト、イヴァン・リンスについて少しご紹介。
ブラジル音楽というと多くの人はリオのカーニバルをイメージし、ああいった類い、というイメージを抱いておられることだろう。
実際はブラジル音楽は実に多様である。
ブラジルに元からあったものと様々な音楽が融合し素晴らしい音楽が産み出されている。
あるブラジルのアーチストが自分達の国の音楽は世界最高だ、などと言っていたのをどこかで聞いたが、
あながちそりゃハッタリでも無いな、とすら僕は思う時がある。
イヴァン・リンスは1945年生まれのアーチストで、勿論今でも現役バリバリである。
度々来日もしている。
僕の世代の感覚で言うと古い例えで申し訳ないが、ブラジルのビリー・ジョエル、もしくはエルトン・ジョン、という感じである。
クインシー・ジョーンズ(VELAS ICADAS)
サラ・ボーン(COMECAR DE NOVO〜The Island)
ジョージ・ベンソン(DINORAH DINORAH)
などがカヴァーしている、と言うと少しは偉大さが伝わるだろうか。
ファンの間では1970〜80年代にかけてリリースされたアルバムの人気が高いようだ。
昨年だったか東芝EMIから再発された
1977年の「今宵楽しく」、1978年の「ノス・ヂアス・ヂ・オージェ」、1979年の「ある夜」
1980年の「ノーヴォテンポ」、の4枚はイヴァンの世界を知るには最適なアルバムである。
ビートルズの「ラバーソウル」辺りに匹敵するくらいの価値はある。
ブラジル音楽にハマると、まずポルトガル語が、こんなに音楽にフィットする言語だったんだと感心するだろう。
これは是非とも聴きだ。なんとしても聴いてほしい。できれば聴いたほうが良い。
聴いてほしいな。聴いてくれたらいいのに・・・、もういいか。
(ジャンル:音楽)
○東芝EMIの紹介ページ
「ノス・ヂアス・ヂ・オージェ」
http://www.toshiba-emi.co.jp/international/release/200208/tocp66057.htm
「ノーヴォ・テンポ」
http://www.toshiba-emi.co.jp/international/release/200210/tocp66066.htm
○ブラジル音楽情報ならここ、雑誌「ラティーナ」のページ
http://www.latina.co.jp/index.html
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第三回
「笑いの師」
初回、第2回と音楽のことについて書いてきた。3回目も音楽で行くぜ!
・・・などと思っていたところ、ふと、ここでどうしても触れておかねばいけない御方がいるのに気がついた。
なので今日は、その御方について触れておく。
今触れて置かねば、大変その御方に失礼になってしまう、と遅ればせながら気づいた。
年賀状が寒中見舞いになる寸前くらいで気づいた。
その御方とは漫画家の東海林さだお、僕にとっては心の師、大先生、Sir.東海林である。
東海林さだお氏は漫画家でありながらエッセイストとしても有名だ。
僕は若い頃、この氏のエッセイに多大な影響を受けた。
今でもその影響を引きずっていると言って良い。
男は失恋すると長くそれを引きずる、などと言うが、そんなもんでは無い。
ほとんど半生に渡って引きずっているから、その影響たるや相当なもんである。
小さい頃、テレビや漫画で大爆笑することはあっても、文章で大爆笑するなどとは露ほどにも思っていなかった。
東海林氏のエッセイは、僕のその固定観念を実に心地よく打ち砕いてくれた。
たぶん有名人にも氏のエッセイに影響を受けた人は少なからずいることだろう。
ユーモアエッセイというジャンルがあるかどうかは、わからぬが、あるとしたら東海林氏は、間違いなく
キングオブユーモアエッセイに輝かれることであろう。
東海林氏の偉大なところは、どの作品も良質で基本的なスタイルが変わっていないところだ。
・・・などとあれこれ断言してしまったが、東海林氏に否定されたら元も子もないので、あくまでも僕の個人的意見として聞き流して欲しい。
あ、いや、流しちゃ困るな。
流すか流さない程度に聞き留めて心の片隅にでも引っかけといてほしい。
ん?ややこしい?
結局何が言いたいかというと、氏の、どんな作品でもお薦め。
つまりは書店などで目についた「東海林さだお」と銘打たれている本が、まさに運命的に、
その時のお薦めなのである。
ジャンル:文学(エッセイ)
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第四回
「シルクロードを歩いただと!」
今回は一冊の本をご紹介する。
「シルクロード・路上の900日―西安・ローマ1万2000キロを歩く」(著・大村一朗:めこん)
そして最初に断っておくが、実は僕はこの本を全部読んでいない。
なにしろ手にしたのが昨日なのである。
それで紹介?、何をいい加減な!、と思われることだろう。
全くもってご尤も。
ここに挙げた顛末を明かすと、私事で恐縮ながら、この著者が、僕の母の知人の息子さんなのだそうだ。
勿論僕は直接面識は無い。
母は知人から紹介を受け、実際読んだところ面白かったので、帰省していた僕にも紹介してくれた、
というのが今回の経緯なのである。
只、僕も知り合いの為だからといって、闇雲にここに挙げさせてもらったわけでは無い。
昨日早速手にとって最初から何ページか読み進めていくうちに”確かにこれは面白い!
そう実感できたからなのである。
内容はタイトルを見てもらえば一目瞭然、そのシルクロード旅行記だ。
大村氏は静岡県清水市出身。
ジャーナリスト志望だそうで、文章力もある。
何より文章から旅というものに対する真摯な態度が伝わってくる。
ここに書かれる体験は僕らが日常体験できる類いのものでは無い貴重な体験だ(たぶん)。
それを通じて大村氏が人間として成長していく過程が僕らの心を打つ(のだろう。たぶん)。
そして、たぶん、今僕がイメージしている以上のものを、この本は与えてくれるだろう、と直感しているのである。
ジャンル:文学(旅行記)
○出版元「めこん」のページ
http://www.mekong-publishing.com/
○Amazon
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4839601666/qid%3D1083590710/249-7473230-9948367
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第五回
今回はコラムをお休みして河童星人からお薦めカルチャーのお知らせです。
僕の高校時代の美術部の先輩・後輩が個展を開催するので、興味のある方は是非どうぞ。
先輩の北村さゆりさん、後輩の藤田俊哉君。藤田君はジュビロの藤田選手と同姓同名だけど別人だからね〜。
●北村さゆり。気鋭の日本画家として活躍中。
○「北村さゆり個展」
・沼津西武
5月24日〜6月2日
・池袋西武
6月16日〜22日
【北村さゆり関連HP】
”あーとじょい/ギャラリー”
http://www.e-artjoy.com/artist/h01kitsa/
【雑誌】
月刊美術5月号 131ページ〜 特集。
●藤田俊哉。気鋭の現代画家として活躍中。
○「UNIT’04」
・銀座ギャラリー:セイコウドウ 中央区銀座1-8-21 清光堂ビル5F
(コージーコーナー隣)
・5月10日〜5月20日(16日休廊) 11:30 〜18:30 (最終日〜17:00)
(大久保宏美・オーライタロー・塚原貴之・長沢晋一・渡邊俊行各氏との合同企画)
【藤田俊哉関連HP】
”藤田俊哉ギャラリー”
http://www.mars.dti.ne.jp/%7Eblt/aaT.html
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第六回
「キリンジ「ペーパードライヴァーズミュージック」
キリンジって知ってる?と聞くと、僕に近い世代は「関取?」というリアクションを取るケースが多いようだ。
昔「麒麟児」という力士が確かにいた。
「麒麟児」は広辞苑によれば「才知の特にすぐれた少年」の意とある。
確かにキリンジの方も言葉の意味は関取仕様と同じである。
だが今日取り上げるキリンジは、残念ながら相撲とは関係無い。
ちなみにビールとも関係無いしオレンジジュースとも関係無いことも念の為一言添えておこう。
キリンジは日本人の兄弟デュオ。
メジャーデビューは1998年、既に今まで5枚のオリジナルアルバムを発表している。
メジャーデビュー盤は「ペーパードライヴァーズミュージック」。
僕のように齢40を越えてくると、なかなか今の日本の若いヒットシーンのアーチストには取り入り難くなってくるもんだ。
こっちが取り入りたくても向こうから、オッサン目障りYoYoh♪などと拒絶されそうだ。
だがこのキリンジは良くも悪くもヒットチャートには余り縁が無いかわり、その分楽曲の質は高く、
僕など70年代の洋楽で育って来た輩には、程良い音楽的感触がある。
昔の日本の音楽シーンを知る人は、キリンジを聴くと伝説のバンド「はっぴいえんど」を想起する人もいるかもしれない。
そしてボーカルを聴いて「オフコース」を連想するかもしれない。
ちなみにここ10年くらいの間に出た日本のアーチストで僕が今良く聴くことが多いのは、
このキリンジ、LOVE PSYCHEDELICO、MISIA、椎名林檎などだ。
僕は旅行にキリンジを良く持っていって聴く。
又これが旅に良く合うのである。
僕が思うにキリンジの曲の良さは、「コード進行(その楽曲内の和音の組み立て方・進み方)」にある。
ジャズやブラジル音楽、クラシックなどに影響された、小粋なコード進行は、世俗的なヒットシーンの楽曲が
醸し出す単調なコード進行に、少々食傷していたオジサン世代を十分満足させ得るものもある。
例えばデビューアルバム3曲目の「野良の虹」のサビの部分の一風変わった、というより少々捻くれたような
コード進行は、その風変わりな詩と、マイナス+マイナスはプラスの如き逆説的とも言える調和を示し、
奇跡的な爽快感を産み出している。
僕などこれは日本のポップシーンに是非とも残しておきたい名曲だと思っているくらいだ。
ジャンル:音楽(日本)
○キリンジ所属事務所ナチュラルファンデーションのページ
http://www.nfl.co.jp/menu.html
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第七回
「モーツァルトの聴き方・その1」
クラシック音楽というジャンルは、とかく敬遠されがちのようだ。
しかも中でもモーツァルトやベートーヴェン、バッハなどは、その最たるもんで、音楽室の肖像画の
イメージと相まって、一生聴かなくてもいいだろう、くらいに思われ、せいぜいギャグのネタにされるのが
落ちみたいなとこもある。
僕の私見では、上記の3人こそ音楽を語る上では避けて通れぬ、大げさに言えば、この3人がいなかったら
現在のポピュラー音楽は無かったのでは?、とすら思うくらいの3人なのである。
今日はまず3人の内、どうしたらモーツァルトが良いイメージで聴いてもらえるか考えてみた。
最初に思いついた一つの方法がモーツァルトのいろんな曲を「第2楽章だけ選んで聴く」というやり方だ。
別名「最悪、他の楽章聴かなくても許す!、第2楽章だけでも聴いてくれ!方式」である。
モーツァルト辺りの時代のアーチストの楽曲は、第何楽章と分かれていることが多く、第2楽章は緩徐楽章と
呼ばれているスローなものが多い。今風に言えば「バラード系?」みたいなノリのやつである。
まずはモーツァルトの中でも代表的な「ピアノ協奏曲」の第2楽章だけ聴くと良いだろう。
お薦めはピアノ協奏曲の15番21番、22番、23番、27番辺りだろうか。
15番はちょっと隠れた名曲の趣きがあるが、これなど迷わず第2楽章から聴くべきだろう。
モーツァルトは学校の勉強では「古典派」という位置づけで習う。
だがここでのモーツァルトは既に十分「ロマン派」の香がある。
難しい技巧的なことを言えばいろいろあるが、それを抜いても美しく情緒的で親しみやすい。
21番は比較的有名で、スウェーデン映画映画「美しくも短く燃え」でも使用されたりしており、
もしかしたら聴いたことのある方もいるかもしれない。
僕も大好きな曲だ。美しく流麗な中に陰影に満ちた響きがあり非常に現代的で洗練された楽曲だ。
23番も有名だ。
シシリア調の哀しげな響きが日本人には好まれるかもしれない。
22番、27番の良さがわかったら、その人はモーツァルトの世界にすんなりハマれるかもしれない。
今日取り上げたものはモーツァルトの「ロマン的側面」を象徴する曲だった。
勿論モーツァルトの魅力は、それだけでは無い。又それについては別の機会で。
ジャンル:音楽(クラシック)
【関連サイト】
日本モーツァルト協会
http://www.mozart-kyokai.or.jp/
モーツァルト研究オンライン
http://www.asahi-net.or.jp/~rb5h-ngc/index-j.htm
日本モーツァルト研究所
http://www.jp-mozart.gr.jp/
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第八回
「モーツァルトの聴き方・その2〜ピアノ小品を聴く」
モーツァルトのピアノ作品で最も有名なのは、おそらくピアノソナタ第11番(K331)の3楽章、
俗に言う「トルコ行進曲」だろう。
あの曲はあまりにも有名になり過ぎて、僕らには曲の面白さが伝わりにくくなってしまっている。
だが実はあのソナタ自体は音楽的に非常に面白い楽曲なのである。
只今日は、このピアノソナタのような大きな楽曲では無く、独立した楽曲でモーツァルトの一般的な
イメージを壊すのにはうってつけのピアノ作品に言及してみたい。
まず「幻想曲ニ短調K397」。
冒頭から暗く陰鬱なアルペジオ(分散和音)で始まる。
あの明るいモーツァルトでは無く、まるで苦悩するベートーヴェンのような表情を見せる。
それから「ロンドイ短調K485」。
こちらはショパンのピアノ曲といっても、わからないくらいのロマン的情緒と憂いに満ちた小品の傑作だ。
「幻想曲ハ短調K475」。
これは「ピアノソナタハ短調(K457)」と連続して演奏されるので、合わせて聴くと良いだろう。
こちらも重く厳格なモーツァルトで、後のベートーヴェン、リストを予感させる。
いつもの明るいモーツァルトからは、その後の音楽シーンというものはイメージしにくい。
ところが、先程のピアノ小品や、モーツァルトの中では比較的割合の少ない短調の作品などを聴いてみると、
そこには未来の音楽シーンを予感させる楽曲が数多くあることがわかる。
今日ご紹介した曲は、モーツァルトの中では、ほんの小さなジャンルの小品だが、
その小さな世界の中に大きな未来が隠されているのである。
ジャンル:音楽(クラシック)
【関連サイト】
日本モーツァルト協会
http://www.mozart-kyokai.or.jp/
モーツァルト研究オンライン
http://www.asahi-net.or.jp/~rb5h-ngc/index-j.htm
日本モーツァルト研究所
http://www.jp-mozart.gr.jp/
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第九回
「モーツァルトの聴き方・その3」
前回前々回とモーツァルトについて話をした。
今回は、そのモーツァルトの中で僕の一番好きな曲についてお話しする。
まあ、僕もモーツァルトを全部制覇した訳では無いので偉そうなことは言えぬ立場といえ、
とりあえずこれが一番!というの挙げるとするならば、それはオペラ「魔笛」になる。
オペラなので中に一杯曲が入っているだろうとのご意見もあるだろうが、ここは「魔笛」一括りで
1曲とみなしてもらうことで、今日のところは御勘弁願いたい。
「 魔笛」については、僕は今まで聴いたクラシックの中でも、バッハの「平均律クラヴィーア曲集(第1・2巻)」
と並んで最も好きな音楽である。
邦題の「魔笛」は些か堅苦しい。
英語の「Magic Flute」が良い。邦題も「魔法の笛」でいいのに・・・。
全体に漂う神秘的な雰囲気。
脚本には宗教的な概念が盛り込まれているそうだ。
しかしこのオペラには聖もあれば俗もあり、善も悪も出てくる。あの明るい
モーツァルトも出てくれば、暗く陰鬱なモーツァルトも出てくる。
ところがそれらが渾然一体となり調和し、それぞれに輝きを放ちながら、
見事な芸術的空間を形作るのである。
一つの小宇宙といっていいかもしれない。
主人公タミーノや、聖者ザラストロのアリアも勿論感動する。
だがもしかしたら聴衆が一番心を揺さぶられるのは、俗の代表のようなパパゲーノが出てくるシーンで、
老婆だと思っていた女性が実は自分の伴侶になるパパゲーナだとわかった時に歌う二重唱の所かもしれない。
この運命的な出会いを彩る屈託の無い明るい音楽には心癒されるものがある。
余談だが僕はこの「魔笛」とビートルズの名盤「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」が、
音楽的に全く異質であるが、その醸し出す雰囲気から、似たようなイメージに思えてきてしまうのである。
ジャンル:音楽(クラシック)
【関連サイト】
日本モーツァルト協会
http://www.mozart-kyokai.or.jp/
モーツァルト研究オンライン
http://www.asahi-net.or.jp/~rb5h-ngc/index-j.htm
日本モーツァルト研究所
http://www.jp-mozart.gr.jp/
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第十回
「モーツァルトの聴き方・その4」
今回は今までのモーツァルトの話の締めとして、僕の全くの独断と偏見モーツァルト論、精神的聴き方論をお話しします。
僕の経験ではモーツァルトは、自分の精神状態が荒んでいればいるほど、心に入り込んでくる。
モーツァルトほど聞く側の非日常的環境を要求してくる作曲家はいないのでは無いか?と思ってしまう。
不遇、などというと大げさだが自分の境遇が満ち足りていなければいない程モーツァルトは
鮮やかにその姿を僕らの前に見せてくるように思えてしまうのである。
「ショーシャンクの空に」という映画で、刑務所の図書係になった主人公が、
悪戯気味に所内にモーツァルトを流してしまうというシーンがあった。
そこではオペラ「フィガロの結婚」の中の伯爵夫人とフィガロの許嫁スザンナの二重唱が実に印象的なシチュエーションで流れてくる。
刑務所という、よほどモーツァルトとは無縁の場所に、全く場違いに思われそうな場に、それは流れてくる。
その時の感覚は、実際の映画でモーガン・フリーマン演ずる主人公の友人で語り部役のレッドが
非常に的確な表現をしているので、興味のある方はご覧あれ。
僕など、これこそが正しいモーツァルトの聴き方だ!と唸ってしまったくらいだ。
モーツァルトファンにはお馴染みの評論、小林秀雄の「モオツァルト」では、大阪の道頓堀を歩いていた
筆者の頭の中で、突然交響曲第40番の第4楽章のフレーズが流れてくる、という件が出てくる。
道頓堀というおよそ雑多で人間的な街と、緻密でシャープなモーツァルトは、ここでも対照的な姿を見せる。
まるで泥沼に咲く蓮の如き華麗で超然とした様のその音楽は、私を聴くなら泥沼たれ、と僕らをこれでもかと沼の底へ突き放すかのようだ。
いっそのこと、ゆったりした気分で静かな所で聴くよりも、心が荒んだ時、許しが乞いたい時などに、
ウォークマンのようなもので外に、それも飲み屋街のような繁華街などに持っていって聴いたり、
明け方や真夜中や厳しい冬、灼熱の夏など、全く音楽的で無い状況で聴いた方が、
実は非常に効果的なのでは無いか?と思ってしまうのある。
そしてこんな時に聴いたモーツァルトは、おそらく生涯忘れられないほどのディープインパクトを僕らに残し、
それからはずっと僕らを虜にしてしまうのである。
ジャンル:音楽(クラシック)
【関連サイト】
日本モーツァルト協会
http://www.mozart-kyokai.or.jp/
モーツァルト研究オンライン
http://www.asahi-net.or.jp/~rb5h-ngc/index-j.htm
日本モーツァルト研究所
http://www.jp-mozart.gr.jp/
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第十一回
「衝撃の童謡詩人」
ここ数年、金子みすゞという名前を目にすることが多くなったようだ。
僕の記憶では、僕が小さい頃は教科書などでも目にすることは無かった。
それもそのはず、この金子みすゞは大正末期優れた作品を発表しつつも早世し、
没後は作品も散逸して幻の童謡詩人とされていたようなのである。
それが童謡詩人・矢崎節夫の努力で遺稿集が集められ、近年ようやく我々にも
金子みすゞの作品に触れる機会が巡って来たわけである。
改めて言っておくと金子みすゞは、山口県大津郡仙崎村(現長門市)の生まれ、
童謡詩人として作品を残すも、昭和5年(1930年)26歳の若さで世を去る。
金子みすゞの作品に初めて触れた人の感想で良く聞く言葉は「衝撃」である。
かくいう僕も「衝撃」を受けた読者の一人である。
「衝撃」にもいろいろあるだろう。なぜこのクオリティを持った詩人が今まで埋もれていたのか?という驚き。
童謡の中に潜む哲学的な洞察、時代を感じさせない普遍的な題材・・・等等。
僕が「衝撃」を受けたのは「蜂と神様」という作品だった。
ここでは内容は敢えて言わない。興味を持った方は是非ご一読をお薦めします。
ちなみに僕が最初金子みすゞを知ったのは、今でも印象に残っている位何やら因縁めいていた。
以前山陰に旅行に行った時、ひょんなことから間違えて仙崎線という鉄道に乗りそうになってしまった。
それでこの仙崎という地名を覚えていて、そのすぐ後テレビで仙崎という地名が出て来たので、ハッとして見ていたら、
金子みすゞの故郷だったというものだった。
あの時間違えていなかったら、どうなってただろう?
まずこうしてここにこの文書いてなかったかもな。ははは。
ジャンル:文学(詩)
【関連サイト】
みすゞweb
http://www.kanekomisuzu.com/
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第十二回
「モーツァルトの聴き方・追伸」
前々回までモーツァルトについて書かせてもらった。
ちょうど良いタイミングで、今度7月3日(土)(21:00〜)に日本テレビ系で、ビートたけしのMCによるモーツァルトの特番
(「音と科学のミステリー人類史上最高の天才モーツァルト 奇跡の響き」)をやるらしい。
興味がある人はご覧になると良いだろう。
それからたぶん再来年はモーツァルト生誕250年になるので、各地でイベントなども行われることだろう。
これでモーツァルトが、又人々に近づいてくれるとイイなと思っている。
そんなわけでしつこいかもしれませぬが、今回もモーツァルトについて少し。
今日は僕が好きな、非常に精神衛生上良さそうなモーツァルトの楽曲をズバリ挙げさせていただきます。
・クラリネット協奏曲・イ長調k622 第2楽章
・弦楽四重奏曲第16番・変ホ長調k428 第2楽章
・ピアノ四重奏曲第1番・ト短調k478 第2楽章
・ヴァイオリンソナタ・ホ長調k481 第2楽章
・ヴァイオリンソナタ・変ホ長調k378 第2楽章
・ヴァイオリンソナタ・ト長調k379 第1楽章
・・・などなど。やっぱり2楽章が多いな・・・。
これらの楽曲を聴くポイントは、音の背後に「愛」を感じながら聴くことだろう。
ジャンル:音楽(クラシック)
【関連サイト】
日本モーツァルト協会
http://www.mozart-kyokai.or.jp/
モーツァルト研究オンライン
http://www.asahi-net.or.jp/~rb5h-ngc/index-j.htm
日本モーツァルト研究所
http://www.jp-mozart.gr.jp/
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第十三回
「仁義なき戦い」
7月1日にはアメリカの名優マーロン・ブランドが死去した。
享年80だったそうだ。
マーロン・ブランドには数々の名出演作があるが中でも「ゴッド・ファーザー」などは屈指の名作であろう。
この映画は完璧な映画だと思った。
脚本も良し、音楽も良し、俳優、映像、どれをとっても非のうちどころが無い。
アカデミー賞を取ったのも、至極当然だろう。
この映画を撮ったのが、新進気鋭の監督だったと聞けば、誰もがフランシス・コッポラを天才だと思うだろう。
只同じような裏の世界を描いた作品で、どっちが好きか?と聞かれたら、僕は「ゴッド・ファーザー」よりも
邦画の名作「仁義なき戦い」を選んでしまうかもしれない。
僕は優劣を付けたいのでは無く、只好みで言っているので、ご了承を。
誰が言ったか忘れたが「仁義なき戦い」はジャズ、だと言っていたのが、とても言い得て妙だと思った。
たぶん「ゴッド・ファーザー」はクラシック、それもチャイコフスキーかブラームス辺りのロマン派のクラシックかもしれない。
「スターウォーズ」などが一連の作品群で「サーガ」などと称されるように、「ゴッド・ファーザー」もパート3、
「仁義なき戦い」も良く完結編までを一つのサーガと見なすようだ。
僕もそうした見方のほうが面白いと思う。
「仁義なき戦い」の魅力はなかなか一言では言い表せない。
確かに映画としての完成度は、「ゴッド・ファーザー」など比べたら天と地くらいあるだろう。
そこには絶望・背反・残虐など人間のダークサイドな部分があからさまに出てくる。
心臓の弱い人にはあまりお薦めできない。
最初は僕も、こうしたバイオレンス映画には極端な拒絶感があった。
何しろ「ロボコップ」の最初の主人公の殉職シーンで一ヶ月位憂鬱になってしまった程なのだ。
それでも、あの「仁義なき戦い」には不思議な力が宿っているのである。
「千と千尋の神隠し」を見た時、この映画には不思議なパワーが宿っていると思ったが、
「仁義なき戦い」にも、ある意味不思議な力が宿っている。
ある意味神懸っている。
僕は「仁義なき戦い」サーガについては、黒沢映画に匹敵するくらいの日本映画の傑作だと思っている。
ちなみに言っておくと、僕はこの映画の脚本家、故笠原和夫氏が、あの映画は「人間喜劇」を目指した、
と言っていたのを何かで読んで、急にハッと、あの映画がわかったような気がした。
「仁義なき戦い」の世界に踏み入れるのは、ある意味パンドラの箱を開けるようなものかもしれない。
只その変わり、その世界にハマッタ時、自分の中でいろんな価値観の革命が起こるだろう。
ジャンル:映画(邦画)
【関連サイト】
東映
http://www.toei.co.jp/
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第十四回
「ビートルズ解散後のポールのアルバムから」
元ビートルズのポールマッカトニーが再来日するとの噂が出ている。
今日はそのポールのアルバムから。
ビートルズ解散後のアルバムもビートルズ時代の作品同様、素晴らしいものがある。
僕が特に好んで聴くのは1973年ウイングス時代の「レッド・ローズ・スピードウエイ」、
翌年の「バンド・オン・ザ・ラン」、1983年ソロでの「パイプスオブピース」辺りだろうか。
「レッド・ローズ・スピードウエイ」はポールの作品の中では地味な印象がある。確かに収録曲自体が地味ということもあろう。
だが地味なれば名曲ならず、ということは無い。芭蕉の「奥の細道」を「源氏物語」に比べ地味だからといって名作では無い、
などということはできないだろう。
事実、このアルバムには、僕がポールの作品の中でも、おそらく一番好きで、最も聴いた回数の多い曲「リトル・ラム・ドラゴンフライ」が入っている。
この曲イントロD(ニ長調)からC(ハ長調)に変わるところが心地好く素晴らしい。
このアルバム、もう随分長いこと聴いて来たが、嫌いになることが無い。
むしろ年を追うごとに愛着が沸いてくる。
逆に「バンド・オン・ザ・ラン」はポールの作品の中では一番ポピュラーかもしれない。
このアルバムでは、ノリのいい「ジェット」から静かな「ブルー・バード」に変わるとこなんかがすごくいい。
最初聴いた時、すごくカッコ良くてお洒落で新しい感じがしたものだった。
ところが気がついたらもう30年も昔の作品になってしまっていたのだ。
でも裏を返すせば今でも古臭く無い作品なのだ、と言えるだろう。
「パイプスオブピース」は僕の中では随分新しいアルバムのような印象がある。
ところが、これとて気がついたら20年も前の作品になってしまった。
このアルバムにはポールがマイケルジャクソンと組んだ「セイ・セイ・セイ」が入っている。
この曲はかなりヒットした。
その嬉しさの反面、当時ポールの作風が随分変わってきて昔と違ってしまったような一抹の寂しさも感じた。
でもアルバムを聴いてみたら、それ程でも無く、やはり変わったのはマイケルの味が加わったからだというのがわかって微妙にホッとしたものだった
(微妙に・・・というのはマイケルのおかげでヒットした、ということになるから・・・)
このアルバムは前に紹介した2作程は僕の中での評価は高く無いものの、このアルバムの中の
「スルー・アワ・ラヴ(ただ愛に生きて)」というのを僕はヒドク気に入っている。
理由は極めて個人的で、ここに書く程のことでは無いので割愛しますです。ハイ。
ジャンル:音楽(洋楽
【関連サイト】
B'net
http://www.thebeatles.co.jp/
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第十五回
「吉本・ファンダンゴ有料会員」
沈んだ時憂鬱な時、お笑いを見て心が晴れやかになったことがある。
笑いというのは身体に良いようだ。
ところでビールの生がおいしように、お笑いも「生」があって、こちらもイイ。
僕は2年位前から吉本興業のファンダンゴというところの有料会員になった。
ここのメリットはなんといっても、新宿のルミネザ吉本のチケット先行予約ができることだ。
ルミネザ吉本では、吉本新喜劇や、吉本興業の売れッ子芸人さんのライブを見ることができる。
僕もたまに足を運ぶ。
今まで「チケットの先行予約」というやつには良く泣かされた。某有名チケットサービス会社の先行予約など、
先行予約だから良い席かと思って期待していると、とんでもない。
最後列、2階席、なんてのがほとんどである。もういい加減ここで予約するのは辞めようと思ってるくらいだ。
ところがこのファンダンゴの先行予約は違う。
さすがファンクラブだけあって、いつも良い席ばっかである。良すぎて毎度申し訳ないくらいだ。
大体僕は真ん中の列の前から2〜3列目が多い。いつも先行予約日の深夜という多少遅めに感ずる時間に取ってもこのくらいだ。
しかも都合上土日の予約ばかりでこうだから、平日ならもっと条件は良くなるだろう。
勿論最前列の時もある。最前列だと前過ぎてちと気が引けるくらいだ。
たぶん頑張って予約日開始即取れば最前列になるだろう。
僕の記憶では今まで5列目より後ろになったことは無い。やはり日曜は混むようだ。
ちなみにこのファンダンゴの優先予約で、大阪の難波グランド花月の先行予約もできるのである。
こちらはさすがに良い席、とまではいかなかったが、お笑い好きならこれは嬉しいサービスだろう。
ともかくもこれで年会費二千円は安い。
勿論予約で無くとも当日券があれば、飛び込みでも入れるので、お近くで時間のある方はたまには行ってみるのもよいだろう。
前売りは3500円、当日券4000円。
それから男性陣に朗報なのは、このルミネザ吉本、客層はというと、若い娘さんが一杯なのである。
席の回りが女性ばっかり、というのもしばしばある。
僕など、これだけで十分腹が膨れてしまいそうなほどで、行く度行く度若いエナジーがキャピキャピ発散されていて目がクラクラしてくる。
ん? もしかしてそれが目当てで行ってるだと?。
そそ、そんな、滅相も無いっ(言い回し古臭っ!)。
(ジャンル:芸能(お笑い))
【関連サイト】
ファンダンゴ
http://www.fandango.co.jp/
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第十六回
「バッハ・平均律クラヴィーア曲集」
学校の音楽室に飾られているクラシック音楽家の写真で一番恐いのは、たぶんバッハかベートーヴェンだろう。
人によっては、あれでバッハなどとは、もう一生関りたく無い、などと思った人もいるのでは無いか。
加えてバッハの中で一番有名な部類に入る「トッカータとフーガニ短調」のイメージなどで、バッハというと世紀末的で
悲劇的なオドロオドロしい曲を作った人のように思われているかもしれない。
僕のことを話させていただくと、バッハは大好きだ。
フジテレビのホームページの占いサイトに「今日の守護神」というのがあり、そこで自分の本命神を過去の偉人で
表してくれるというのがある。まあいわば”動物占い”ならぬ”偉人占い”とでもいおうか。
それで僕の本命神が、このバッハだったのである。
これはもうとてつもなく嬉しかった。一番大好きな部類のアーチストと同類にされた嬉しさといったら無い。
バッハなど全く関知しない人には、全く理解できぬ心情だと推察する。
そのバッハを、なぜ、かように好きなのか?という動機になった最も愛すべき作品が「平均律クラヴィーア曲集」である。
これは第1・2巻がある。バッハが鍵盤楽器の練習曲集として書いたようだ。
構成を簡単に述べると、前奏曲とフーガという2種のスタイルの楽曲がワンセットになって、
それがハ長調(C)から変ロ短調(Bbm)まで、12調の長短調、計24セットで1巻が成り立っている。
練習曲集としては、あまりに芸術的で普遍的な作品である。
前奏曲の方は、形式が特に無く、かなり自由な楽曲が多い。フーガの方は厳格なフーガの法則に則った楽曲になっている。
印象としてはバッハは、この前奏曲で、かなり多様な可能性を試行しているように伺える。
ショパンのようなロマン派風のものもあれば、次の古典派のソナタ形式を先取りしたようなものもある。
初めての人には前奏曲の方が聞き易く親しみ易いだろう。
そういえばショパンの前奏曲・練習曲は、バッハの平均律にインアスパイアされたものだ。
フーガは、前奏曲ほど取りつき易く無いものの、音楽好きにはたまらなく魅力のある世界である。
フーガも第2巻くらいになると、半音階の響きが、ふと現代音楽のように響いてくる時すらある、
時代を感じさせない超越した感覚の楽曲も出てくる。
モーツアルトの「魔笛」の世界が万華鏡風の宇宙なら、この「平均律」も又ある意味宇宙的だろう。
良く遊びで出る話で、もしクラシックの曲で無人島に持ってく5枚を選ぶとしたら、というのがあり、
僕は3〜5枚目がとても悩むところだ。
ベートーヴェンの弦楽四重奏14番か、交響曲第九か、ピアノソナタの30〜32番
か、ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」それとも「パルシファル」
か、ドビュッシーの歌曲か、前奏曲か、モーツアルトのピアノ協奏曲か・・・。
でも1・2位は、「魔笛」と「平均律」で決まりである。
【関連サイト】
BACH COLLEGIUM JAPAN
http://www.bach.co.jp/
ようこそバッハのページへ
http://www1.ocn.ne.jp/~bach/
(ジャンル:音楽(クラシック))
【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第十七回
「つづれおり(TAPESTRY)」 キャロルキング
最近は1970年代の洋楽でもカヴァーやリバイバルヒット、更にはCMで使用されたりして、
若い人などにも聴かれる機会が増えたようだ。
クイーン、アバ、イーグルス、キャロルキングなどなど、極普通にテレビなどから聞こえてくる。
そう言えば、富士フィルムだったか、卓球の福原愛ちゃんの出てくるCMで、このキャロルキングの
「Home Again(邦題:恋の家路)」が使用されていた。
この「Home Again」の収録されているアルバムが「つづれおり(TAPESTRY)」というアルバムだ。
このアルバムは、歴代の洋楽名盤ベスト〜などやると、必ず入ってくる名盤だ。
僕も1970年代のアルバムの中では、これは是非聴いておいた方が良いと思う一枚である。
もしかしたら、結構聴いたことのある曲があるかもしれない。
それだけカヴァーされたり、何かで使われていたりすることも多い。
有名なアーチスト、例えばユーミンなんかも影響を受けていることを考えると、図り知れない偉大なアルバムである。
1曲目の「空がおちてくる」は、最初のキャロルキングのイメージとちょっと違うように聞こえてくる。
でもその緊張感ある音に何か心を揺さぶられて、ワクワクするのである。
それから、僕は2曲目の「So Far Away(去り行く恋人)」でやられた。
1曲目の余韻を引きずったまま待っていると、静かに入ってくるピアノとアコースティックギターのきらめくような音。
最初聴いた時「えっ?、何これっ!、すっげえイイじゃんッ!」と一発で気に入ってしまった。
他にも全米ナンバー1に輝いた「イッツ・トゥー・レイト」や、やはりジェームステーラーのカヴァーで
全米ナンバー1に輝いた「君の友達」、数多のアーチストがカヴァーする名曲「ナチュラル・ウーマン」など、
何かポピュラーソングの代表曲とでも言っていいような曲が並ぶ。
女性シンガーソングライターのバイブルと言われるのも然りであろう。
「色褪せぬ」というのは、こういうアルバムの為にある言葉だと思ってしまうくらいだ。
(ジャンル:音楽(洋楽))
【関連サイト】
ソニーbitmusic (「タペストリー」が試聴できます!)
http://bit.sonymusic.co.jp/
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第十八回
【素晴らしき哉、人生!】
心温まる映画というのはイイ。
何度も、いつまでも見たい映画というのは、僕らに勇気や感動を与えてくれるものだ。
そんな作品で、僕がとても大好きなのが「IT'S A WONDERFUL LIFE(邦題:素晴らし
き哉、人生!)」である。
監督はフランク・キャプラ、主演ジェームス・スチュワート。1946年のアメリカ映画である。
人生に絶望した主人公ジョージ(ジェームス・スチュワート)は、「生まれてこなければよかった」と自殺を図る。
ところが、ひょんなことから2級天使のクレランスに救われたジョージは、自分が生まれてこなかったら、
こうなっていただろうという仮定の世界をクレランスに見せられる・・・。
ストーリーはなんとも奇想天外な、SFチックなものだ。
だが単なる、空想のおとぎ話にはならないのが、この映画の素晴らしいところである。
まず、この2級天使(ヘンリートラヴァース)というのがイイ。つまりは天使の中で
も劣等生なのである。しかもこの天使、オッサンなのである。本当にうだつのあがら
そうなオッサンなのである。この辺は実にユーモラスだ。優れたエンターテーメント
な作品というのは、笑いと感動の両方を兼ね備えているものだ。
そして実はジョージを救うことでクレランスも成長する、というサブプロットが、こ
のストーリーの背後にある。
この映画の奇想天外なストーリーは、ややもすると若年向けのようにとられるかもしれない。
でも僕は大人が見ても十分深みがあり、むしろ大人に見てもらいたい映画だと思う。
人生というものは、自分の知り得ないところで、いろんな力が働きいろんな事が起こ
り、時として人知を越えた事象が起こり得る。そうしたことを実感し、そうした話に
共感し得るには、もしかしたらある程度の年季を積まなければならないかもしれない、
そう思えるからでもある。
であるから、この2級天使クレランスは決して架空の存在では無いのである。
ある時は、僕らの友人であり、家族であり、恩師であり、もしかしたら本当にいるか
もしれない僕らの背後の目に見えない存在・・・の象徴なのかもしれないのである。
映画は単にそれを寓話化しただけなのだ。
そして、やはり愛、がこの映画を貫いている。
この映画、公開当時はさほど評判にもならずヒットもしなかった。
しかし新世代の再評価によって、今やようやく陽の目を見、名作として並び称される
ようになったそうだ。あのスピルバーグ監督も大好きな作品なようで、何よりフラン
クキャプラ自身が、最も愛し、後世に残る作品だと考えていたようだ。
図らずも、まさに主人公のジョージ同様の数奇な運命を、この映画は辿ったようである。
この映画アメリカの戦前の大恐慌や金融危機にモチーフをとっている。今の日本には
ピッタリの映画ではなかろうか。
僕など、一見うだつのあがらぬオッサン天使の一言一言が、いちいち胸を打ってしま
うのである。
(ジャンル:映画(アメリカ映画))
【関連サイト】
allcinema ONLINE
http://www.allcinema.net
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第二十回
【アンガールズ・DVD「ナタリー」】
今人気上昇中の、お笑いコンビ、アンガールズのDVD「ナタリー」が発売された。
彼等のコントとショートコントで構成された、楽しい1枚である。¥3990。
アンガールズのスタイルを称して「新しい」という言い回しが良く聞かれる。
オチやツッコミよりも、間の悪さバツの悪さや、場のノリ自体を笑いに変えて笑いを
産み出しているようなところがある。
最近では、さくらんぼブービーなども、このパターンだ。
こういうのは昔ながらの熟練された芸として形を持った笑いに馴染んだ人には、理解
し難い笑いかもしれない。そういう意味では「新しい」のかもしれない。
ただノリで笑わせたり、間の悪さを笑いにするパターンは昔からあった。その場合は、
もっとそれをデフォルメして、アレンジしてから表現することが多い。
ところがアンガールズの場合は、間の悪さを、割とそのまま表現する。
これは結構危険だ。失敗すれば大外し。昔似たようなことをやていたグループがあっ
たような気がするが、思い出せないくらい、あまりメジャーにならなかった。
それがアンガールズがやると、うまくハマッて滑稽に見えるのである。かくして間の
悪さが、笑いとして絶妙な間の良さに転ずる。
僕が思うに、これは彼等のネタ作りの才能と言うより、キャラクターそのものの滑稽
さによるところが大きいのでは無いかという気がする。
そもそも彼等が大真面目な顔や、したり顔でコントしたりしている姿そのものが、ま
ずオカシイのである。
ひょろっとした長身と奇妙なルックス、第一印象は大方「変なやつ」だろう。
つまりは存在自体がお笑い向きなのである。これこそある意味天才かもしれない。
あとはそれに、タイミングの悪さとか、一つの紋切り型、すなわちツカミのたどたど
しい自己紹介や、ショートコントの後の奇妙なお囃子的フレーズ、なんぞを付加すれ
ば、立派なお笑いができあがってくる・・・。
ありゃ?いけね、調子にのって真面目にお笑いを語っちゃっ△*!+?#%&○・・・
ハイッ、ジャンカジャンカジャンカジャンカ、ジャンカジャンカジャンカジャンカ、
ジャンカジャンカジャンカジャジャ〜ン。つづきましてえ・・・。
(ジャンル:芸能(お笑い))
【関連サイト】
WE! ワタナベエンターテインメント
http://www.watanabepro.co.jp/we_contents.html
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第二十一回
【秘湯ロマン】
普段なかなか旅行に行く機会が無い。
そんな時は休日の午前中にやってるような旅番組なぞを見て、旅行に行った気分に浸る。
テレビ朝日系で関東エリア限定で、日曜の早朝やっている「秘湯ロマン」という番組がある。
これはイイ。
若いオネエチャンが旅人として、その名の通り日本各地の秘湯を紹介してくれる。
このオネエチャン方がなかなか奇麗な方が多くて、ついつい秘湯を忘れがちになる。
勿論入浴シーンもあるから、僕などのような中年オヤジにとっては、非常に非常に癒される番組である。
ん?、じゃ、オネエチャンが第一目的じゃねえかって?。ななな何をおっしゃいますやら・・・。
言い訳するわけでは無いが、だからといってお色気満載系な番組なのでは無い。
どちらかというと番組自体は格調高く、神秘的ですらある。
元々主役である秘湯自体が醸し出す雰囲気が、番組の基本的な色彩を産み出している
のに加え、忘れてはならないナレーションの水橋和夫氏の実に静かで落ち着いた語り
が加われば、他の旅番組とは一線を画した、味わい深い番組が出来上がる。
それから円広志の歌うテーマ曲「静かな戦士」も番組には無くてはならないアイテムである。
現在の放映時間は早朝5:00〜5:30なので、早起きしてリアルタイムで見るのはちょっと厳しい。
僕は録画して見ている。勿論標準モードで。でないとオネエチャンの入浴シーンで素
肌が奇麗に映らないからだ。以前3倍モードで録画して肌がガサガサになって萎えて
しまったことがあり、一回で3倍モードはやめた(やっぱりオネエチャンじゃねえかよッ!)。
ちなみに関東以外の方は、番組のDVDが出ているので、そちらを見られたらよかろう。
(ジャンル:テレビ(旅・教養))
【関連サイト】
テレビ朝日「秘湯ロマン」
http://www.tv-asahi.co.jp/hitou/
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第二十二回
【スターウォーズ】
今年9月23日には、あのスターウォーズ前3部作のトリロジーDVD・BOXセットが発売されるようだ。
この映画は、もう今までどれほど多くの人が語り、そして影響を受けたかわからない
ほど、映画史上に大きな刻印を記した作品である。
いわゆる第一作目が公開された当時は、迫力ある映像、奇抜で個性的なキャラクター等、
映像的な部分が話題になり人気を博していた感がある。
だが、この映画の良さは、実はそれだけでは無かった。
いわゆる2作目の「帝国の逆襲」以降、次第に深化してくる、人間ドラマ的な部分、
実はこちらこそがこの壮大なサーガのメインなのでは無いか?、今考えると、そう思えるのである。
親子の絆、惑星や人種、果ては生物種までもを越えた友情、愛・・・、宇宙の話であ
りながら、実は裏筋はとっても気持ちイイ・・・、いや、違った、失礼、SFの体裁
を取りながら裏筋では人間の成長を描いているヒューマンな映画なのである。
そう見ていくと、この映画は、やはり、今流に言うところの、エピソード4・5・6、
と順番に見ていった方が良い、ということだ。
「帝国の逆襲」「ジェダイの復讐」は1作目の単なる続編では無い。
もっと言ってしまえば、エピソード4・5・6で1つの作品として見た方が良い。こ
の3作は切り離すことはできないのだ(ちなみにBOXでは3作目の邦題は「ジェダ
イの帰還」に改題されてるそうです)。
この映画には、僕もかなり影響を受けた。
今でも日常生活で、普通に使ってしまう単語「ダークサイド」は、この映画から影響を受けた。
映画では「フォースの暗黒面(dark side of the force)」という使い方で使用され
ており、この「フォース」という、スターウォーズにおいて非常に重要なキーワード
でもあるこの概念について、ここで悠長に話していると日が暮れてしまうので止むな
く割愛させていただくが、要は「ダークサイド」は”人間の心の闇の部分”、というところに通じてくる。
僕は「あ〜、今日体調悪りい〜、完全にダークサイドに落ちたよ〜」などと言う風に使用している。
気分が悪くイライラしている時、怒りに震えている時、鬱で乗らなくて引っ込みたい
時、そういう時には「ダークサイドに落ちた」などと良く使っている。
ありゃ?、考えたら、オレいっつも常にダークサイドに落ちてるなあ・・・。オレ自
分ジェダイ側だとばっか思ってたけど、もしかして思い切り帝国側?。
(ジャンル:映画(洋画))
【関連サイト】
公式サイト(英語)
http://www.starwars.com/
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第二十三回
【小さな恋のメロディ】
僕の大好きな映画「小さな恋のメロディ」(イギリス:1971)のDVDが今年11月に発売されることが決まったようである。
原題は「Melody」、この映画の可愛らしいヒロイン、メロディ(トレーシー・ハイド)の名前だ。
この邦題「小さな恋のメロディ」に関しては僕はなかなか良い命名だと思う。
この映画は単純な分類をすると、ラブストーリーとなる。
勿論近代映画のSFXや、大ドンデン返しのあるスリルあるストーリー展開というものは無い。
そういうものを映画に期待する人には、尤も退屈な部類の話かもしれない。
だが僕は、この映画をこよなく愛している。
この映画から受けるのは、感動とか、映画らしい醍醐味とかを越えた、何か非常に清浄な、ある意味天上的な感すらある、
大人になって社会の毒に犯されてしまった僕らがスッカリ忘れている、キラメクような子供心のようなものなのである。
それから、この映画で大変重要なのは、タイトルが象徴的に表しているように「音楽」である。
このロマンティックなラブストーリーを神秘的なレベルにまで昇華させているのは、ビージーズの曲を始めとした珠玉のサウンドトラック達である。
「メロディ・フェア」や「若葉の頃」などは、CM等で聞いたことのある人も多いかもしれない。
僕はオープニングの「イン・ザ・モーニング」がとても大好きで、物憂げなロンドンの朝の街をバックに厳かに入ってくる
アコースティックギターがたまらなくカッコヨク、ビートルズが大好きでいつかイギリスに行ってみたいと思っている僕など、この
オープニングだけで泣けてくるぐらいだ。
それからラストシーンのCSN&Y(クロスビー、スティルス、ナッシュ、ヤング)の「ティーチ・ユア・チルドレン」も良い。
そもそもラストシーン自体が僕は大好きだ。
この愛らしいカップルが、まるで新婚旅行よろしく、トロッコに乗って、夕焼けの郊外へと消えていく情景は、
今まで見た映画の中でも、最も美しく夢のようなハッピーエンドである。
このおとぎ話を締めくくるのには実に似つかわしい形で終わる。
それにしてもトレーシー・ハイドは可愛いかったなあ・・・。当時11才かあ・・・。
ん?、何?、ロリコンだとおっ?!。
(ジャンル:映画(洋画))
【関連サイト】
allcinema ONLINE 映画データベース
http://www.allcinema.net/
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第二十四回
【NBA&田臥勇太】
NBA、ナショナルバスケットアソシエーション。
アメリカのプロバスケット。世界最高のバスケットリーグだ。
僕は1992年のバルセロナ・オリンピックで、アメリカ代表、いわゆるドリームチームの華麗なプレイを見て、
それからバスケットの世界に魅せられてしまった。
若い頃野球がとても好きで熱狂的なジャイアンツファンだった時期があった。
その後静岡県出身ということもありサッカーを見るのが好きになり、大学時代はラグビーなども好きになって
観戦するようになった。
そして今はバスケットに落ち着いた感がある。
機会がそれほどとれないものの、NBA以外にも日本のリーグや代表選手の試合を見に行ったこともあるし、
今までになく結構長い時期ハマッテいるから、まあバスケット自体が性に合っていたのだろう。
おそらくこれからも老人になるまで、バスケット観戦は(主としてNBAだけども)
趣味として細々ながら続けて行くことと思われる。
今年はNBAも大スター、マイケル・ジョーダンが引退してしまい、ちょっとポッカリ心に穴があいたようになってしまった。
ファイナル(優勝決定戦)では、おととし3連覇までした優勝候補のロサンゼルス・
レイカーズが敗れ、時代が変わりつつあるのが顕著になってきた。
そんな中、昨年今年と、一人の日本人が、NBA入りを目指して夢を追い続けている。田臥勇太君である。
近年NBAでは外国選手の活躍が目ざましい。
アテネオリンピックでは、あのバルセロナで神々の饗宴の如きプレーで圧勝していた
アメリカが、こともあろうに優勝することができなかった。
今やアメリカだけでなく、他国にもNBAのスター選手がぞろぞろおり水準も遥かに
レベルアップしている為、バルセロナから10年以上経った今、アメリカ1強の時代は既に過ぎ去ってしまったようだ。
とはいえ日本がこうしたバスケットにおいて屈強の国々の仲間入りをするのは、まだまだ先のことだろう。
ただ田臥君のプレーは、かつてテレビや生で何度か見たが、ズバ抜けていた。
おそらく今の日本人プレーヤーで、技量・スター性含め世界を舞台に活躍できそうな
のは彼しかいないかもしれない。
しかしその田臥君にしてからが、昨年はデンバー・ナゲッツを開幕直前で解雇されて
しまったのだから、NBA恐るべしなのだ。
今年挑戦するのはフェニックス・サンズというチーム。既に契約は終えているので、
後は昨年同様開幕登録選手入りを目指す。
確かに条件は厳しく、簡単にはいかないだろう。でもまあ今年仮にダメでも彼なら諦
めないで又挑戦してくれると思う。
僕も陰ながら、あのNHK-BS1のNBAの放送で田臥君がコートを走り回ってい
る姿をイメージしつつ応援しているところなのである。
(ジャンル:スポーツ(バスケット))
【関連サイト】
NBAJAPAN公式ページ
http://www.nba.com/japan
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第二十五回
「キー・オヴ・ライフ」スティーヴィー・ワンダー
今回も1970年代の名盤で、是非とも聴いていただきたいアルバムをご紹介する。
今日はスティーヴィー・ワンダーの「キー・オヴ・ライフ」です。
発表は1976年、原題は「SONGS IN THE KEY OF LIFE」。
このアルバムを聴けば、まず、とても20年以上前の作品とは思えない。
このサウンドが、それほど今と変わらないような気がするのは、おそらくスティーヴ
ィーの音楽的手法が、現代の音楽に広く影響を与えているからだろう。
2枚組の作品は充実していると言われる。このアルバムも例にもれず、スティーヴィー
の絶頂期を飾るに相応しい充実した内容の名作に仕上がっている。
実を言うと、僕はこの作品を最初は「どうしても聴きたくて」聴いたのでは無かった。
少年の頃は、2枚組のアルバムなど高くて手が出なかったので、そのままでいたら聴
いていなかったかもしれない。
高校生になって人生で始めてアルバイトをやった。新年の郵便配達だった。
それで僕には今までに持ったこともない大金(?)が転がり込んできた。身内に幾ら
か振る舞い与えた後、残りは全てレコード(いわゆるLP)につぎ込んだ。
欲しかったLP、高くて手の出ないLP、等等を購入した。
その内の1枚がこの作品だったのである。
当時ビートルズに心酔していた僕は、当時のポストビートルズ時代に、グラミー賞を
連続して獲得し、メキメキ台等して来た黒人シンガーが、ある意味恐くて、最初は抵
抗していた感が、かなりあった。だがさすがに音楽好きなら、これだけ話題のアルバ
ムは聴いておかねばならんだろう、というある種の変な脅迫感に駆られ、たまたまバ
イトで小遣いが入ったので、買ってみた・・・というのが真相なのである。
ところがこれが、聴いたら、すごく良かった。
「愛するデューク」や「可愛いアイシャ」などが良く巷でかかっていたので「あっ、
これ、この人の歌だったんだあ!」などと今から考えると、カワイイ納得をしてたもんであった。
当時スティーヴィーにビートルズを越えられてしまう、という変な恐怖感があったこ
とも、今考えると、本当に若さゆえの馬鹿げた心情だったと苦笑してしまうのである。
今日は、紹介・・・などと言いつつ、自分の思い出話になっちゃった。ははは。失礼。
(ジャンル:音楽(洋楽))
【関連サイト】
Amazon.co.jp
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005HRN8/qid=1096294387/sr=1-20/r
ef=sr_1_2_20/250-0575053-3726623
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第二十六回
テレビ埼玉で放映されていた「中山道風の旅」という番組がDVDになった。
テレビ番組で、そのDVDができるというのは、その番組が長く視聴するに価すると
いうことにもなる。
その名の通り中山道を辿りながら、街道を紹介する番組で、起点の日本橋から終点の
京都までの69次を3シリーズに分けて放送された。
「中山道風の旅」の特徴は「歩く旅」の為の番組である、ことだと僕は感じている。
他の旅番組と少し異なる点は、ご当地の名所名産を紹介する割合よりも、中山道の長
い道行きを、ゆっくり辿って、道自体にそのスポットを当てている割合が多い点だ。
これは僕のような街道好きには、大変有り難い。只旅の行程を辿るのが嫌いな方には
退屈な番組かもしれない。
僕が考える旅の良さとは、まず日常と異なる生活空間に身を置くことができる、ということだ。
時には自然の中に身を置き、忘れていた自分を取り戻すことができたりもする。
僕も中山道を始めとした東京近辺の街道を、折りに触れ歩いてみる時がある。
街道を歩く時には、いろんなことを考えながら歩く。
道の回りの風景に目をやるだけで無く、その道や街の空気を感じながら、自然に頭の
中に流れて来る過去の映像に思考を任せ、思いは今から過去へ、そして未来へと、時
を越え自由に駆け巡る。
まるで普段日常の鎖に縛られていたものが解き放たれていくかのように。
この番組は、そんな「歩く旅」に近いイメージを僕らに提示してくれる。画面を見な
がら、街道をゆっくり歩くのである。
旅人はピアニストの村松健氏。番組のBGMは氏の手になるもので、郷愁を誘うよう
な切ない音楽が番組の色調に実に合っている。
現在本シリーズは、既に終了したが、10月より又「武蔵・上野編」が再放送されて
いるので、テレビ埼玉の番組が視聴できる環境のある方は、一度ご覧になられると良いだろう。
それから番組のガイドブックも市販されているので、そちらもお薦めです。
(ジャンル:テレビ(旅))
【関連サイト】
テレビ埼玉
http://www.tv-saitama.co.jp/
「中山道風の旅」のDVD購入はこちら。
http://www.tvs-music.com/pc/index.html
【癒しのアルバム「2:00 AM Paradise Cafe」バリー・マニロウ】
過去に出されたアルバムで、今の時代にも聴く価値のあるアルバムを、このコーナー
でも機会があればドンドン紹介していこうと思います。
今日はバリー・マニロウの「2:00 AM Paradise Cafe」。
バリー・マニロウは、アメリカで、もう70年代から活躍しているアーチストだ。
日本だと誰に近いイメージだろう?、西城秀樹とか野口五郎とか布施明とか、はたま
た堀内孝雄とか、要はロック畑の人では無い、ベテランのポピュラーシンガーのイメージだ。
そんなバリーが、なんと全曲自分の手で書き下ろしたアルバムが、この「2:00
AM
Paradise Cafe」(1984)なのである。
題名の通り、深夜のカフェで流れてくるような曲、というコンセプトで作られた。
一言で言ってしまえば、ジャズボーカルのアルバムだと思ってもらっていい。
共演も豪華で、今は亡き、サラ・ヴォーン、メル・トーメ、といったジャズ界の大御
所がアルバムに色を添えている。
曲はどれも素晴らしく、バリーの才能の高さが伺える。
ジャズ畑のイメージでは無かったバリーで、本人もジャズでは無いと言っていたそう
だが、もはやジャズアルバムの傑作として、名を挙げても遜色は無いだろう。
さて、今日僕が強調したかったのは、実はこのアルバムの音楽的な素晴らしさだけで
は無いのである。
このアルバム、どうも「癒し」の効果が高いように感じるのだ。
ウォークマンなどでいろんな曲を録音して聴く中、このアルバムの曲がかかると、無
性にホッとして心地好くなるのだ。その安堵感がいつも大きいので、結構何か際だっ
て特殊な力があるんじゃないか?というようにも思えてきてしまうのである。
特に都会の殺伐とした雰囲気に毒された場合など、誠に良い。
だからハッキリ言えば、このアルバムは元気系では無い。
鬱状態、ブルーな気分に墜ちている時に聴くと、非常に良い癒しの効果がある。
確かに失恋系の歌が多いからね、ははは。
ちなみに皆良いが、特に僕がお気に入りな曲は、最後から2曲目の「あなたのいない
夜(I'VE NEVER BEEN SO LOW ON LOVE)」という曲。
(ジャンル:音楽(洋楽))
【関連サイト】
Amazon.co.jp
アマゾンで検索したサイトから「2:00 AM Paradise Cafe」の何曲かが試聴できます。
http://www.amazon.co.jp/
【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第二十八回
【「腰痛は<怒り>である」長谷川淳史(春秋社刊)】
5、6年くらい前だろうか、僕はヒドイ腰痛に悩まされていた。
最初は年のせいだろうと思って、そのまま放っておいた。
ところが仕事やプライベートでも思わぬ時に腰痛が出てきて、かなり支障をきたし次
第に精神的にも憂鬱になり始めた。
元来医者にかかるのも億劫がる方なので、尚更この腰痛は悩みの種だった。
そんなある日新聞の広告を眺めていたら「腰痛は怒りである」という文字が目に飛び込んできた。
僕はこの時ほど人生で直感が働いたことは無い。
まさにビビビと来た。
いやビビビなんてもんでは無い、本当にオノか何かで頭をカチ割られたくらいだった。
「こ、こ、こ、これだーっ!」と思った。
どんな美人に出会っても、おそらくこれ程ビビビとはこんだろう、などと思える程だった。
早速書店に向かって、この本を購入した。
考えてみると、もうこの新聞広告を見て、ビビビと来た時点で、僕の腰痛は直って
いたのかもしれない。
今当時購入した本は手元には無い。
あまりにお薦めなので腰痛持ちの友人にあげてしまった。
確かに、いくらビビビと来たとは言え、最初読み始めた時は疑心暗鬼だった。
そうして、いくら腰痛が怒りだってワカっても、直るワキャねえよな、と冷静になり
改めて腰痛のサイトなどを見てはみたものの、その後は特に腰に対して治療するとい
うことも無く時が経っていった。
あれから早数年の月日が過ぎた。
僕の腰は、もう腰痛とは無縁の、正常な腰に完全に戻っていた。
あの本を読んでから、一度も腰痛は出ていない。
やはりこの本に書かれていたことを意識したことが良かったようだ。
今でも希に、ちょっと疲れて、何となく腰が危なそうだな、という時はある。
そんな時は、この本に書かれていたことを思い出し、何に自分が怒ったか、ハッキリ
自分に意識させるのである。それで治療はオシマイ。
すごく簡単に言ってしまうと、怒りが無意識に沈むと腰に溜まるそうなのだ。
但し、便宜上僕は極々簡単に記述しただけで、本書の言いたいものとは別解釈される
怖れがあるので、是非当書を読んで真意を理解していただけたらと思う。
僕は、自分の腰に対して、ほとんど特別なことをしていない。医者にも行かなければ
薬を投与したわけでもない。湿布の類いすらも貼っていない。
この本に書かれていたことを意識して考え方を変えただけである。
(ジャンル:和書(実用書))
【関連サイト】
TMSジャパン公式サイト
http://www.tms-japan.org/y2k/y2k_Frame.htm
【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第二十九回
【ジョアン・ジルベルト】
最近ボサノバがちょっとしたブームのようだ。
ボサノバと言えば、この人というのが、ジョアン・ジルベルトである。
昨年奇跡の初来日を果たし、なんと今年も来日した。
ボサノバ界の重鎮ジョアンを知る人なら、初来日はそれこそ、みのもんたが「笑って
いいとも」のテレフォンショッキングに出るくらいの、大事件であったことだろう。
ジョアンはボサノバの創始者とも言われている。
ところが今ジョアンの奏でているボサノバというのは、実際巷で聞かれるボサノバと
少し違うのである。
いわゆる普通のボサノバをイメージしてジョアンのアルバム、特に後期のアルバムを
聞いた人は、その暗く内向的なサウンドに少し面食らうかもしれない。
しかしやがて、その響きが次第に心地好くなっていくことは確かだ。
そうして巷のボサノバの通俗的な響きに、少し抵抗感を覚え出すかもしれない。
ジョアンのギターと声だけで奏でるボサノバは、非常に内省的で、僕などむしろフォー
クの神様ボブディランの初期のスタイルに通ずるところがあるのでは無いか、とすら思う。
ディランはやがてロックと融合したフォークロックという新しいジャンルを確立していった。
ジョアンのボサノバも単なるBGM風のボサノバでは無く、心はロック、魂はロック
なボサノバであると思っている。
僕が好きなジョアンのアルバムは1988年の「ライブインモントルー(Live
in
Montreux)」だが、これは輸入盤の為、現在日本では入手しにくいようだ。しかしそ
のテンション、神秘性、単なるボサノバを越えたジョアンの面目躍如たるパフォーマ
ンスが聴けるので、入手できた人は是非一聴をお薦めする。
それともし、「ライブインモントルー」が聴けなくても、昨年発売された「ジョアン・
ジルベルト・イン・トーキョー」 もいいかもしれない。
大変申し訳ないが、僕はこのアルバムをまだ聴いていない。只昨年の違う会場へのラ
イブに行った感じや各諸評から推測すると、これもかなり良いパフォーマンスをして
いるものと推測されるので、ジョアンを知るには、これあたりを聴くのも非常にいい
かもしれない。
いずれにしろ以前もここで書かせてもらったが、これもブラジル音楽の多彩な一面である。
もしボサノバに興味を持たれた方は、他のブラジル音楽にも踏み込んでみると良いだろう。
(ジャンル:音楽(ブラジル音楽))
【関連サイト】
●Yahoo!ミュージック「ジョアン・ジルベルト・イン・トーキョー」
http://musicfinder.yahoo.co.jp/shop?d=c&cf=10&id=uccj1005
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第三十回
【「イエスタデイ」ビートルズ】
ビートルズの曲は今までいろんなアーチストにカバーされてきた。
「イエスタデイ」や「サムシング」だけでも数千にのぼると言われているから、他の
曲も合わせたら、何万というカヴァーが世に出ているはずだ。
ビートルズ自身もカヴァーは得意なグループだった。初期のアルバムではカヴァー曲が半分近くを占めていたりする。
今日は、そんなビートルズのカヴァー曲についてお話しを・・・と思ったのだが、その前に、先程出た、おそらくビートルズの曲の中で、
最も有名な部類に入る「イエスタデイ」についてお話ししようと思う。
実はビートルズファンの僕でも、この「イエスタデイ」、昔からビートルズの曲の中
では、悲しげな曲だし、そんなに好きな方では無かった。
あまりにも持てはやされるので、「イエスタデイ」が何かで取沙汰されると天の邪鬼
の質が顔を出して「また、イエスタデイかよ・・・」などと苦々しく思う時すらあった。
だが自分でギターを弾いたり、この曲のいろいろなエピソードを知るにつけ、やはり只ならぬ曲だということが思い知らされた。
まずこの曲は、どうも天啓のあった曲らしい。
ある日作曲者のポール・マッカートニーがベットから転がり落ちた時に、頭の中、つまり夢でこの曲が鳴っていたそうだ。
驚いたことに、この時点で曲の全体がポールの頭の中で完成されていたという。
あまりに普通に浮かんだので、ポールは最初この曲をどこかで聞いた曲で、それを覚
えていたものだと思い、会う人ごとに、「この曲知ってる?」と聞いて回ったそうだが、誰も知らなかったという。
この曲想の全体が頭の中に浮かぶ、という逸話は、あのクラシックの天才モーツアルトに通ずるのである。
モーツアルトは曲が頭の中に既にあって、あとはそれを写譜しただけだった、などと
いう逸話があり、それと同じようなことが、「イエスタデイ」でも起こっていたのである。
そう言えば、この曲の偉大なところの、もう一点として、ロックとクラシックが融合
した曲だということが挙げられる。この曲のアレンジ以降ビートルズは実験的な手法
を積極的に試み始め、後のロック界における革新を産み出していった、そのキッカケ
ともなった曲だ。
もともとクラシック畑の人であった、プロデューサーのジョージ・マーティンの力に
より弦楽四重奏とのアンサンブルが実現する。
歴史が語るように、異種の文化の融合するところに新しい文明が生まれるのである。
「イエスタデイ」の哀愁漂うメロディは有名だ。
悲しげな曲は普通短調のコードで始まりそうなイメージがあるが、この「イエスタデイ」は違う。
最初はFメジャーという長調のコードである。
ちょっと話が難しくなって申し訳ないが、Fメジャー、つまりヘ長調なら、単純な曲
だと、CやBbなどというメジャーコードで曲が構成される。
ところがこの曲の名曲たる由縁は、冒頭のFの後(♪いえすたでい〜♪の後)、Em
という短調のコードに進むところなのである。
EmというのはFのベース音が半音下がった短調なのである。
つまりどういう感興を心理的に及ぼすかというと、長調が突如微妙にダウンし短調に
転じ、何かが崩壊した、という感じを予感させるのである。すう〜っ、ガクッ、みたいなね。
すなわち、この「イエスタデイ」の歌詞、”昨日までは良かったのにイ!・・・
(;_;)”、という内容にピッタリなのである・・・。
やべえっ!、長くなりそう。今日はこの辺でやめるね。ちと難しくなってスミマセン。
ビートルズについては、又近々改めて。
(ジャンル:音楽(洋楽))
【関連サイト】
●Bネット
http://www.thebeatles.co.jp/contents/index2.htm
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第三十一回
【散策のススメ】
休日になると、郊外に歩きに出る。
僕は個人的に街道を巡るのが好きなので、特に旧街道を歩くことが多い。
幸い東京近辺には街道が多く、散策には都合の良い場所が多い。
旧中山道、旧日光街道、日光御成街道、旧東海道、旧甲州街道、そして旧鎌倉街道、等々。
マイナーな隣町と隣町を結ぶ街道なども含めたら、もっとある。
東京は意外に街道の宝庫なのである。いや意外では無い。その昔、江戸の頃から、江
戸を中心に街道が整備されてきたわけだから当然といえば当然なのだろう。
歩くことは身体に良いといわれる。
僕がそれを実感したのは、近所の坂を自転車で登っていた時だった。
僕の近所には大小様々な坂がある。
その内極近所のなだらかな、ある坂を登る時に、そこを自転車を降りて登る人が多い
ことに気づいた時だった。
当初僕の自転車がギア付きなので、簡単に登れるが、他の人はママチャリなので、坂
を登るのが大変なんだ、それで皆登れないんだ、と思っていた。
ところが僕もママチャリになったので、同じ条件になった時に、その坂を登れるのか?
という問題にブチ当たった。
これまたところが、である。
実際ママチャリで登ったら、なんのことも無い。
楽勝。ギアとかそういう以前の問題。
登れる登れない、とか発想に出てこ無い、登れないとか考えない。
逆に、こんなクソ坂、登れねえの?、ウソッ?マジ?であった。
それくらい、なだらかな30mくらいの坂なのに、実際は結構降りて自転車を引っ張っ
ている人を良く見かけるのである。
ちょっと興奮して語調が荒くなってしまったが、それくらい僕には普段ヘナチョコ坂
に思える坂だったが、やはりそれは普段歩いて自然に鍛えているから、そう思えてし
まうのだろう、と思った次第である。
考えてみると、僕が他人と比べて、違ったことをしていると言えば、やはり休日の散
策だけなのである。
それ以外は、ストレッチもジョギングも何もしているわけではない。
歩くことはこのように単純に身体を鍛えるのだけでも良い。
それからもっと良いことには精神面にも非常に良い効果がある。
それについては又別の機会で。
(ジャンル:その他)
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第三十ニ回
【ビートルズの名曲から「オブラディオブラダ」】
先日、インターネット上で行なわれた『Worst Song Ever(これまでで最悪な曲)』
投票でザ・ビートルズの「Ob-La-Di, Ob-La-Da」が堂々の1位に輝いた、というニュースがあった。
この「Ob-La-Di, Ob-La-Da」という歌は、非常に軽快で愉快な曲で、CMなどにも良
く使われているから聞いたことのある人も多いであろう。
この軽快さから、子供向けに使用されたりすることも多い。
「Ob-La-Di, Ob-La-Da」という意味不明な言葉も「アブラカダブラ」をもじって作ら
れたようだ。
ワースト1に選ばれた理由を調べてはいないので、詳しいことは何も言えないが、た
ぶんこうしたこの曲の単純さ、極言すると幼稚さ、みたいなものがワーストに繋がっ
ていったのかもしれない。
僕個人的には、この曲は幼稚だとは思えないし、好きな曲だし、音楽的にも優れてい
ると思っているので、もし自分が、こうした企画によって何かの曲を選んでも、この
曲を、そもそもビートルズを、よもやワーストには選ばないだろう。
まあ、こうしたワースト企画にも堂々1位になるだけビートルズの偉大さを象徴した
出来事だと思っているくらいだ。
子供から大人までが楽しめる楽曲を多数、それもハイレベルで聴衆に提供できたのは
ビートルズならではの技量であろう。
只、この曲について、あながちこうしたマイナス評価があっても、よくよく考えると、
無くも無いな・・・と思えるエピソードもある。
先程この曲は単純な曲だと言った。
イメージは確かにそうだろう。
だが音楽的実質は全然そんなことは無い。
その証拠に、この曲のレコーディングは、皆がウンザリするくらい何回も延々と行われたのだそうだ。
作曲者のポールマッカートニーが、なかなか気に入ったテイクが取れず何度も撮りを
繰り返す中、次第に他のメンバーとも亀裂が深まっていったとすら言われている。
ビートルズ分裂・解散の発端はこの「Ob-La-Di, Ob-La-Da」の入っている「ホワイト
アルバム」のレコーディング時期辺りから始まっているとも言われ原因は多々あれど、
ちょうど険悪な時期に録音された、曰く付きの曲なのである。
面白いのは、レコーディングにウンザリしたジョン・レノンが、嫌みタップリに弾い
たピアノがベストテイクとして採用された、などという逸話もあることだ。
あの楽しげで、何の屈託も無い明るいメロディーの裏には、非常に人間臭いものが隠
されているのである。
まるで蓮の華が泥沼から咲くように。
(ジャンル:音楽(洋楽))
【関連サイト】
●Bネット
http://www.thebeatles.co.jp/contents/index2.htm
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第三十五回
「奥の細道」
最近では日本語を見直し大切にする風潮も出て来ているようで、少し前
「声に出して読みたい日本語」という本がベストセラーになったりしており、
改めて日本語の良さが再認識されているようだ。
日本語には古い時代に使用されていた古文というジャンルもある。
但し平安時代や奈良時代くらい昔の文章だと、現代では全く使用されない言葉
や全く意味の違う言葉などもあり、やはり難解と言わざるを得ない。
それでも時代を下って江戸時代に書かれた、松尾芭蕉の「奥の細道」辺りまで
くると、大分読みやすくはなってきた感が強くなったと感ずることができる。
古文は意味がわからずとも、その語感というのは慣れてくると、なかなか良い
ものだ。僕は高校生の時にラジオで放送していた受験用の古典講座で、
女子大生のオネエサンが、古典の名作を艶めかしい声で朗読してくれるのを
毎回ウットリと聞いていたものだ。ん?そりゃ古典の語感に聞き入ってるん
じゃ無くて、オネエサンにメロメロになってただけじゃネエかって?痛っ!
それはともかく、松尾芭蕉の「奥の細道」は、その内容、日本語としての文章、
どちらをとっても我々現代日本人であっても、是非とも手本とすべき要素が
沢山詰まった日本文学の傑作と言えるだろう。それだけ普遍的な内容があるの
である。とは言え、やはりこの作品だって古文で書かれたものであり、取っ付
き難いことは確かだ。かくいう僕でさえ、この作品をまともに読んで良さを
理解したのは、ここ最近のことで、それも自分で旅行記を書いてみようと思い
立ち、そうした流れの中、日本の紀行文の古典に目を向けようと動機づけられ
て、ようやく読み始めたもので、普通の人だったら、まず読むキッカケから作
ることの方が難しいくらいだろう。
それでもこの「奥の細道」は、一生の間一回は読んで、その世界を味わって
みるべきであろう。芭蕉が奥の細道の旅に出たのは45才の時で、紀行文と
してまとめられたのは、更に五年後と言われている。
ある意味年食ってみないと良さもわからないかもしれないが、逆に言えば
年を重ねれば重ねる程良さが噛み締められるような、生涯付き合っていける
作品とも言えるかもしれない。
幸いなことに「奥の細道」は、いろんな解説書やガイドブックが出ているので
それらを先に読み進めてしまう、というのもイイだろう。
なんなら学生が使用する学習用の参考書・解説書の類いなどを入手してしまう
のも、この際有りだ。とにかく古文は、まず何が書いてあるかを把握するのに
時間を取る必要がある。
ここで僕がお薦めしておくのは、以前NHKで放送された「奥の細道をゆく」
という番組を本にまとめた、KTC中央出版社の同名の「奥の細道をゆく」と
いう本である。この本自体には、「奥の細道」の現代語訳が出ていないので、
別に訳の載っている本を用意しておいた方が良いかもしれない。
この番組は、芸能人など各界の有名人が旅人となって、奥の細道の足跡を辿っ
たものだ。実際に歩きながら芭蕉の心理的な側面にまで焦点を当てていってい
るので「奥の細道」を現代の我々の視点から理解するのに、丁度良い具合にま
とめられている。実際僕も、この本で「奥の細道」を非常に近く感ずることが
できた。いつかは僕も「奥の細道」のような洗練された中に感動が有り尚且つ
芸術的な文章を書いてはみたいもんである。え?いつのことやらだって?
・・・。
(ジャンル:文学(日本文学))
【関連サイト】
●俳聖 松尾芭蕉・芭蕉庵ドットコム
http://www.bashouan.com/index.htm
●芭蕉(bashoDB)
http://www.ese.yamanashi.ac.jp/~itoyo/basho/basho.htm
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第三十八回
「イメージズ・オン・ザ・ギター」バーデン・パウエル
中学生の頃、フォークソングが全盛で、先輩が学校にギターを持ち込んで放課後などに弾いており、
それを見て、オレもギター弾きてえーっ!、と思っていた。折しも自分史にビートルズなどの洋楽が流れ込んできて、
回りも誰もがギターの洗礼は必ず受けて通らなければならないような雰囲気すらあった。僕らにとってジョン・レノンが抱えている、ギブソンやマーチン
のフォークギター、そしてリッケンバッカーのエレキギターなぞは、メチャクチャ憧れであった。
ところが貧乏子沢山の我が家では、ギターなんぞ到底買ってもらえるわけがない。
ギブソンなんて、天上の品である。友人が次々とフォークギターやエレキギターを購入してもらえる中、
何も無い僕は自分の境遇を恨んだものだった。
そんなある日、親戚からギターを貰えるという話があり、僕は色めき立った。
しかし実際に貰ったのは、僕が欲しかったフォークギターでは無かった。
茶色の地味なクラシックギターであった。正直落胆した。
せっかく貰ったプレゼントの服のサイズが合わなかったようなものだ。
クラシックギターを弾いたことがある人はわかるかもしれないが、
クラシックギターはエレキやフォークギターと比べて、ネックと呼ばれる棒の
部分の幅が太い。つまり弾きにくいのである。
色や形が嗜好と違ううえに、弾きにくいときては、これではギターも、
すぐ部屋の片隅で埃をかぶるのがオチであろう。
しかし僕は結局挫折はせず、何とかそれを弾きとおした。
音楽に対する熱意だけはあったのだろう。
あれから僕も社会人になり、少しは経済的な余裕ができた。しばらく楽器から
遠ざかっていたのが、数年前ふと又ギターを弾いてみたくなった。そして僕が
買ったのは果たして何ギターだったでしょう・・・?。
正解はクラシックギターなのである。
なぜ?昔あれ程落胆したのに。
今は、なんとクラシックギターが欲しくて自分で選んで買ったのである。
きっかけはブラジル音楽であった。
ブラジル音楽では、メインはこのクラシック、いわゆるガットギターが
主役なのである。ナチュラルで暖かみがあって、奥深い音。もう今はネックの
幅の広さなど苦にならない。昔は形やカッコヨサなどの表面的なものだけしか
捉えられなかった。クラシックギターはカッコワルかった。
そのクラシックギターが、今ではすごくカッコヨク思えるのである。
僕みたいな独身者が言える資格など無いかもしれぬが、異性の好みなどと
いうものも、これと同じように年数を経ると変わってくるかもしれないな。
年をとると、姿形より中身を重視する。こじんまりして地味だが、温かく艶の
あって深みのある音を出す、そんな女・・・、いや失礼、ギターが良い。
思い出話で行数を稼いでしまって、メインの紹介が疎かになってしまった。
ブラジル・ギターの第一人者であったバーデンパウエル(1937-2000)のアルバム
から「イメージズ・オン・ザ・ギター」。これは夜寝る時に聴くと良い。
それでは、ガットギターの音のように温かく艶があって深みのある美しい年に、
皆さんの来年がなりますようお祈りしつつ、本日はこれにて失敬。
(ジャンル:洋楽(ブラジル音楽))
【関連サイト】
●中南米音楽(CD販売)
http://homepage.mac.com/musicai/
●雑誌「ラティーナ」のページ
http://www.latina.co.jp/index.html
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【河童星人の今週のお薦めカルチャー】 第四十一回
【冬のソナタ】
遅ればせながら、僕も年末にNHKのBSでやってた「冬のソナタ(完全版)」を見ました!
噂通り面白かったです。
確かに劇的過ぎてリアリティに欠けるところや、こじつけみたいなとこもあります。
でもそれを補って余りある部分の方が多いです。
まず俳優がイイ。主役、脇役共にイイ。主人公の二人、チュンサン(後ミニョン)役
のペ・ヨンジュンと、ユジン役のチェ・ジウは、スターの気品があり、これは日本で
も人気が出たのはうなずけます。昔の日本の映画を彷彿させるような純愛さ、チュン
サンとユジンの一途な姿勢には心打たれるものがあります。
チェ・ジウは迫真の演技というか、入魂というか、加えて脚本家が二人の女性という
こともあって、このユジンには感情移入しやすかった女性視聴者も多いのではないでしょうか。
それからペ・ヨンジュンの落ち着いて暖かみのある存在感、あの低い声で自分の名前
を呼ばれた日にゃあ、女性はマイっちゃうのは、良くわかります。
忘れてはならないのは、映像や展開の美しさで、あれ程コダワッタ映画風の演出をし
ているドラマも、日本には少ないかもしれませんね。であるから、ドラマには随所に
そうした伏線や象徴的なアイテムや出来事セリフが散りばめられているので、最初か
ら見ないと面白さが半減します。しかも日本版でカットされている、とても重要なシー
ンもあるので、これから見ようとする方は是非完全版で初めから見た方がいいかも。
(ジャンル:テレビ(ドラマ))
【関連サイト】
●公式ページ
http://www3.nhk.or.jp/kaigai/sonata/
●冬のソナタ徹底研究サイト『冬ソナ通り』
http://kodansha.cplaza.ne.jp/hot/fuyusona/index.html