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 Chapter 19 不完全燃焼(未定稿)

19−1 不人気の理由は?


 8月16日。この日の広報に,9/4開催の,虫の声の観察会の開催告知が出る……はずだった。
 あれ??出ていない。

 時田さんに確認を取る。やはり,紙面の都合で先送りにされた模様。……そうすると,開催案内が出るのは,9/1の広報。予約受付期間4日間で定員の30人は埋まるのだろうか?

 この広報の遅れは,その次の,バッタの観察会にも影響することになった。

 さて,虫の声の観察会も,2回目。昨年は,夕方の明るいうちに集合し,前半は虫の姿の観察,後半は,姿を確認した虫が,どんな声で鳴くのかを観察,と言うストーリー立てだった。しかし,観察会全体が3時間半と言う長丁場な上,「軽食タイム」で食べるものも持参しなくてはいけなかったためなのか,セミの観察会ほどの爆発的な人気が出なかった。その反省も踏まえ,虫の声をしっかり観察することにターゲットを絞り,セミの観察会でも好評だった,事前レクチャーを入れることで,観察会を作り直した。虫の姿を観察する部分は,別に独立させ,赤トンボなども観察テーマに取り込み,「秋の虫観察会」として,9/23午前に予定を入れている。
 開催日については,虫の鳴く条件が良く,夏休みの締めくくり,と言うことで,8月最終土曜日を提案したかったのだが,その日は手賀の丘少年自然の家との共催で「ホタル&鳴く虫観察会」の予定が先に入っていた。結局,9月第1土曜日と言う設定に落ち着いたが,この開催日設定,吉とでるか凶と出るか?

 こうして大幅な手直しをした,虫の声の観察会だが,「開催告知先送り」で,いきなり出鼻をくじかれてしまった。残された宣伝メディアは博物館のホームページぐらい。こちらはできるだけ早めに開催案内を入れるよう,時田さんにお願いしておく。

19−2 力作?「あびこの鳴く虫図鑑」


 さて,「観察会には必ずパンフレットを作る」と言う約束を,今回も守らなくてはいけない。
 とは言うものの,昨年のパンフレットも,それなりに出来が良かったので,これを改装してコンパクトにすることで,時田さんに作業の大部分を押し付けてしまった。その代わり,もうひとつ,作りたいものがあったのだ。
 それは,「あびこの鳴く虫図鑑」。
 博物館周辺で観察できるコオロギ,キリギリスの仲間と,ケラを収録した,ミニ図鑑だ。しかも,体裁が変わっている。A4判の紙に両面印刷し,「ミウラ折り」でコンパクトにたたむ。

 「ミウラ折り」とは……三浦公亮博士の考案した,折り目が重ならず,ワンタッチで全開,全閉できる折りかた。人工衛星の太陽電池パネルやアンテナを,ミウラ折りでコンパクトにたたんで打ち上げ,宇宙空間でパッと開く,と言う使われ方もしている,いわば,「宇宙技術から生まれた折り紙」である。

→参考

 この折りかたで,A4の紙を約1/15のサイズにたたんで,胸ポケットに入るようにする。折り線で3×5=15区画に区切られた紙面には,片面にコオロギ類11種,もう片面にはキリギリス類8種とケラを配置し,残りの区画は,表紙,「観察のヒント」などで埋めて,完成。ポケットサイズでありながら,我孫子で見られる主要な「秋の鳴く虫」を20種収録しているので,これ1つで,我孫子市内での鳴く虫の観察は,ほとんど網羅されている。よほど専門的な人で無い限りは,これで十分な情報量だ。

 問題は,折る工程。どう頑張っても,1枚折るのに1〜2分,かかる。早めに印刷に取り掛かり,時間をかけて,少しずつ折ることにした。今回は50枚折ったが,折るだけで延べ2時間近くかかってしまった。

 いずれにしても,かなり「決定版」に近いものが出来たので,これは次年度以降も使い回しが出来そうだ。

19−3 夕方から雨ですか…


 観察会当日。
 とりあえず,曇り。
 とりあえず,予約定員も埋まったらしい。
 しかし,夕方から雨の予報が出ている。いつ降り出すか,微妙なことになっている。

 天気を気にしつつ,スタッフ集合時刻よりも早く,博物館に向かう。既に,斉藤さんが,先手を打って,参加者に電話をしていた……「夕方から雨の予報が出ていますが,予定通り開催します。雨がひどかったら,室内でのレクチャーのみになってしまいますが,どうぞお越しください。」……昨年は完全にアウトドアだったから,昨年のパターンだったら,ものすごく天気で悩むところだったと思う。今回はレクチャー付きで,スライドショーや音声データも準備している。どうしても雨が止まなかったら,レクチャーの時間を延ばすことも可能だ。柔軟に考えて心の準備をしておこう。

 ……でも,まだ雨降っていないんですが……

 午後5時。観察会開始1時間前。まだ雨は降り始めてはいないが,念のため,博物館前の休耕田周辺で,虫のサンプルを捕獲しておくことにする。この時間には,「友の会」のボランティアスタッフも何人か集まってきたので,来ている人に声を掛けて(観察会の参加者として来ている「友の会」会員もいたが…),虫取りをすることに。
 虫取りは,なんとなく童心に帰って楽しめる。いい年をした大人たちが,ワイワイと駐車場の脇の土手で虫を追っている姿は,ちょっと怪しいかも。
 30分ほどで10種近くの「鳴く虫」が手に入った。実物の生きものは,観察会では,どんな自然解説よりも,説得力がある「先生」だ。

 虫のサンプリングを撤収する頃から,ぽつりぽつりと雨。
 予報がぴったり当たっている。

19−4 レクチャーが観察会を救うか?


 午後5時45分。4時半に一旦閉館した博物館に,また,人が集まってくる。レクチャー会場は博物館2階の多目的ホール。椅子を詰め込めば70人ぐらい入れる大部屋だが,今日の予約は30人,テーブルを出した状態でも余裕だ。

 最初の挨拶と講師紹介だけ時田さんにやってもらって,後は私が喋る。今年の「鳴く虫」観察会は,子どもが多い。後でチェックしたら,大人のみで参加したのは1人だけで,残りはすべて,子どもとその保護者だった。狙いどおりの参加者を掴んでいる。

 子どもが多いと,レクチャーの内容にも気を使う。なにしろ,未就学児童から小学校高学年までいるのだから,小さな学校の「複式学級」以上に大変かも知れない。しかも,大人が飽きても困る。画像と音声データを多用し,語りかけるように,リアクションを取りながら,ゆっくりと話を進める。どうせ雨なので,30分のレクチャーを少し延ばすことは確実だ。

 スライドショーで部屋の明かりを少し落としていたら,サンプリングしておいたコオロギが鳴き始めた。これはいい。音声データよりも実物のほうが,ずっと説得力がある。難しい話はさっさと切り上げ,みんなで「実物」をじっくり観察することにする。コオロギが翅を持ち上げてこすり合わせて鳴く姿は,野外ではなかなか見ることが出来ない。コオロギの鳴く姿が見られただけでも,かなりインパクトがある。


 でも,やっぱり,外の虫のコーラスも聞いてみたいよね,と言う意見も多かったので,少し外に出て,傘をさしながら,博物館前の休耕田から聞こえてくる虫の声を,20分ぐらい聞いてみた。雨音に負けずにアオマツムシが鳴き,エンマコオロギも雨に関係なく鳴いているようだった。ざっと10種類ぐらいの声を確認して,もういちどホールに戻って,解散。

 天気が悪いなりに,観察会が出来たのは収穫だった。しかし,やはり観察会に雨は大敵。来年は是非,良い天気に恵まれることを願った。

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