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 Chapter 18 迷走する「共催」 その2(未定稿)

18−1 ホタル頼み,セミ頼み


 この夏休みは,手賀の丘少年自然の家との共催観察会が2回ある。7/24のホタル&セミの羽化観察会と,8/28のホタル&鳴く虫観察会。どちらも夜の観察会だ。まぁ,暑い季節だから,夕涼みも兼ねた設定はありがたい。
 案内広告のメディアは「県民だより」と我孫子市の広報。準備の段階から,案内文の分担,受付の分担などに行き違いが多くて,時田さんも焦っている。手賀の丘の都合で,我孫子側から参加する人のための送迎バスが出ないことになったり(自家用車で参加するしかない),段取りが良くない。おまけに,翌週の7/31は鳥の博物館主催の観察会もある。準備の段取りが悪いまま,開催日は,容赦なく近づいてくる。

 そんな中で,手賀の丘少年自然の家が予約受付した人数は……80人(!)
 大丈夫か?

 どうやら,「ホタル」の宣伝効果のようだ。……と言うのも,8月末の「ホタル&鳴く虫観察会」でも,同様の盛況ぶりだったからだ。「ホタル」と言っても,ゲンジボタルやヘイケボタルではない。クロマドボタルと言う,完全に陸生の種類で,幼虫が,おぼろげに光る様子が,7〜10月に観察される。
 そもそも,ゲンジボタルやヘイケボタルすら見たことの無い子も多いだろうし,その親だって,幼少期には既に,ホタルのいる環境が失われつつあった年代だ。そんな人たちには,近場で無料でホタルが見られるチャンスは,魅力的に見えるはずだ。

 観察会での,鳥の博物館スタッフの分担は,7月はセミの部分,8月は鳴く虫の部分。最初に少しレクチャーをしてくれ,とのことで,直前に講師の話を受けた。誰が喋るの?……と聞いたら,ほとんど無条件で,私が喋ることに……。
 とは言うものの,学会直前だし……。
 観察用のリーフレット制作は時田さんにお願いし,とりあえずiPodとスピーカーだけ用意して,簡単に準備を済ませた。

18−2 キャパシティはどのくらい?


 観察会当日。この日(7/24)は,午前中に手賀沼課主催の観察会に参加していたので,アウトドアは2度目の出撃。我ながら良くやる(その前の週は宍塚大池探鳥会の手伝いと明治神宮探鳥会の担当,この翌週は,土曜日に環境教育学会での発表と鳥の博物館主催の観察会のメイン講師をした上,日曜日には井の頭公園での「あおぞら実験室」にも出かけている)。

 先方の駐車場の容量の都合もあるので,一旦,鳥の博物館に集合し,我孫子発で交通手段の無い観察会参加者と一緒に,ゾロゾロと博物館のワゴン車に乗り込み,出発。手賀の丘少年自然の家は,対岸の丘の上なので,博物館から10分少々。
 ……そこで目にしたものは……人と車の洪水。観察会以外の施設利用者もいるので,大賑わいだ。

 用意されたレクチャールームは,90人ぐらい座れそうだ。この部屋の容量で参加人数を決めたのか?
 手賀の丘のほうでも,施設ボランティアが編成されていて,今日は,そのボランティアの人達が中心になって仕切っている。ホタルのレクチャーの後,セミの話を,鳴き声の紹介と共に,さらっと済ませて,観察へ。

 80人+施設ボランティア+鳥博スタッフで,約100人となった集団を,2つに分け,同じコースを順方向と逆方向で歩く。鳥博のスタッフは,学芸員2名+ボランティア2名なので,2人ずつに分かれて,2つのグループに入る。

 しかし,こんな大人数で大丈夫なのだろうか?
 夜間だし,園路は狭いし,途中には階段などもあるし。
 1980年代の観察会だったら,80人の参加者を2,3人で引っ張ってゆくことも,少なくなかったが,今は,安全や参加者の満足度や自然環境へのインパクトを考慮して,もっと厳しく人数制限をするところだ。私の感覚では,2人で20人を連れて歩くのが限界だと思う。
 参加者が多くて賑わっているのは,行事主催者としてはありがたいことだ。しかし,長い目で見た場合,参加者に,こちらが伝えたいことをどれだけ上手く伝えることができるか,そして,参加してくれた人が,これからも自然観察を楽しんでもらえるようになってくれるか,と言う視点も必要だと思う。人を集めれば成功,と言うのは早計である。それに,こういう観察会は,どうしても事故のリスクも上がるので,リスクを減らすためにも,適正な参加人数の設定は必要だと思う。

18−3 とりあえず,見えました


 さて,私が入ったグループは,コースの後半にホタルのいる場所を通る。それまでは,セミの羽化を探して観察することに。手賀の丘のボランティアスタッフがいるとは言うものの,私はメイン司会を取っているので,目が行き届かない。とりあえず,アブラゼミの幼虫を見つけたら,その後は順調にセミの羽化が見つかり,ヒグラシの羽化もしっかり観察できた。

 そして,メインイベントの,クロマドボタルである。
 ここから先は,私も「参加者」だ。

 ホタルのいる場所の数十m手前から,懐中電灯を消すように言われる。真っ暗……と思ったら,少しずつ目が慣れてきて,おぼろげに園路が見える状態になった。ちょっと危なっかしい状態だが,このまま,ホタルのいる場所へと,集団移動。

 なるほど,懐中電灯を消した理由がわかった。暗闇に眼を慣らさないと,ホタルが光るのが認識できないほど,クロマドボタルの放つ光は弱いのだ。何ヶ所か,光っている場所がある。一番よく見える場所は,狭いので,数人ずつ交代で観察している。やはり参加人数が多いと,厳しい場面だ。

 とりあえず,全員がホタルの光を認識したところで,ホタルの観察を切り上げ,帰路に。
 再び点灯した懐中電灯の,眩しいこと!

 玄関前に再集合して,ちょこっとお話をして,解散。
 体力的にもしんどいし,気配りも大変だった。
 やはり参加人数が多すぎる。まぁ,それでも何とか対応してしまうのは,私が1980年代に,探鳥会で「参加人数250人を相手に喋る」と言う経験していたお陰かも知れない。今にして思えばクレイジーな探鳥会だったが,当時は1人で50人,100人を相手に,肉声だけで自然観察案内することは,珍しいことではなかった。でも,参加した人に,観察会の本当の面白さを伝えることが出来ていたのか,今でも不安に思う。当時はあれで精一杯だったのだが……。手賀の丘の観察会も,毎回こんな雰囲気だったら,長続きしないのは目に見えている。


 とは言うものの,「ホタルを見た」と言う満足感は,参加者の満足度を確実に高めてくれている。ホタルって,そんなに希少性の高いものになってしまったのか……。
 参加者の満足度,と言う意味では,成功した観察会,と言えるのかも知れない。

18−4 ホタル騒動,ふたたび


 8/28の共催観察会「ホタル&鳴く虫」も,パターンは「ホタル&セミの羽化」と同じだ。
 参加人数も80人ほど。我孫子市民の参加が少ないのも,前回と似ている。
 やはり,我孫子には,地元我孫子の自然を紹介する観察会が欲しい。手賀沼の対岸とは言え,我孫子市民にとっては,「地元」ではなく,「お出かけ」になってしまうのだ。

 今度は私のレクチャーの内容が「虫の声」になり,耳で観察する場面が増える。
 それにしても,正規職員が引っ込んで,「外野」的存在の私に喋らせているのって……。

 この日も私は,ホタルが後回しになるほうのグループ。観察会の演出としては,「メインの観察対象」であるホタルが,後半部に来るほうが,盛り上がりやすいと思うので,こちらのグループのほうが歓迎だ。最初の「鳴く虫」の観察の司会も任される。ここでの「つかみ」も観察会の構成を考える上では,重要なんだけどね。

 手賀の丘の環境は,大部分は森林だ。木のあるところは,ことごとく,アオマツムシの声で埋め尽くされている。アオマツムシの声を無視することの出来る耳が必要だ。そんな,アオマツムシの声の洪水の中から,カンタンの声や,ウマオイの声などを,丹念に拾ってゆく。もう少し環境に変化があると,面白いのに……。

 ホタルも何とか,数匹,確認した。相変わらず頼りない光り方だが,「ホタル」と言う生き物を初めて見る人にとっては,この淡い光が,大きな感動を呼ぶ。人工の物ではない光,まして,生き物が出す光など,普通に暮らしていたら,ほとんど見るチャンスなど,無いのだから。
 やはり偉大だ,ホタルの光。


 「主催者側」スタッフとしては,もう少し,工夫の余地があるな,とは思うが,とりあえず,結果オーライ,と言うことで……。

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