明治神宮探鳥会は慢性的人材不足


 急募! 探鳥会運営に関わる方。
・年齢条件:なし
・観察歴:不問
・必要とされる条件:
 1)毎月第3日曜の午前中に明治神宮に来られる方
 2)自然観察が好きで,観察したときの感動を人と分かち合いたい方
 3)意欲的に観察できる方。野鳥に関する知識は不問
 4)将来的に「探鳥会リーダー」となる場合,日本野鳥の会東京支部の会員であることが必要となります
・報酬:ボランティアワークゆえ,金銭的報酬はありませんが,素晴らしい人脈と膨大な知識が提供されます
・業務内容:
 1)探鳥会参加者との楽しいおしゃべり
 2)探鳥会運営の応援(具体的内容は希望に応じます)
・問い合わせ先:まずは,このHPの管理人へ



……いや,ほんと,こんな広告を出したくなるくらい,人材不足に陥っています。

 私の記憶が正しければ,明治神宮探鳥会は,もう5年以上,新たなスタッフが補充されていません。
 No. 3でも触れましたが,明治神宮探鳥会は,フィールドの条件としてはキャパシティの大きい探鳥会です。しかし現在,スタッフ人数が足りないことにより,おおよそ50〜60人の参加を限界としています。また,自然解説内容に,今以上のクオリティを追求したくても,人手不足やアイデア不足がネックになって,自然解説内容の向上が,鈍ってきています。

 実を言うと,このような人材不足の話は,全国いたるところで聞かれます。
 その中でも特に深刻なのは,比較的組織が大きく,会員にアクティヴな若年層が少ない団体の,初心者をターゲットにした観察会なのです。明治神宮探鳥会は,これにすべて当てはまります。
 明治神宮探鳥会も,最盛期には担当スタッフの数が2桁を数えたこともありました。今は登録された「正規の」担当は7人ですが,毎月,全員が集まるわけではないので,平均5人が担当していることになります。
 一方,参加者のほうは,毎月,参加者の20〜50%が,探鳥会初参加の人。この中には非会員も多く含まれますので,野鳥の会の紹介を含めた,丁寧な観察案内が必要になります。もうひとつ特徴的なのは,リピーターが極めて少ないと言うこと。明治神宮探鳥会では,3ヶ月更新でパンフレットを出していますが,毎月,ほとんどの参加者がパンフレットを受け取ります。つまり,リピーターの方は,パンフレットは3ヶ月に1回受け取れば済むのですが,「もうパンフレットは持ってるから,今月は貰わなくていいよ」と言ってくださる方が,数えるほどしかいない。
 これは何を意味するか?
 確実に言えることは,現在のスタッフ登用システムでは,次世代スタッフを獲得するのが非常に困難なのです。
 日本野鳥の会東京支部の探鳥会で案内役をしている人のほとんどは,探鳥会の「常連」参加者だった人です。「初心者向け」を看板に掲げている明治神宮探鳥会では,初心者の入り口としての機能は十分に果たしていますが,定着してリピーターになってくださる方がほとんどいません。この現象には,参加者の高齢化の影響もあるようです。10年ぐらい前までは,若い世代を中心に,「リピーター」→「熱心なファン」→「ちょこっとお手伝いしてくれる人」→「担当スタッフ」と言う,ステップアップの各段階にいる人が,ごちゃごちゃと「常連」として参加し,探鳥会の雰囲気を盛り上げたり,探鳥会が終わってから,なんとなく集まって食事をしたり,午後にどこかに出かけてみたり,あるいは,新たなスタッフになってくれたり,と言うコミュニティが形成されていました。いい意味での「ファンクラブ」が形成されていたのですね。ところが今は,気楽に仲間になってくれる若い世代がいない。年配の方は,なかなかスタッフ側に回ってくれません。探鳥会が終われば,みんな,さーっと帰ってしまいます。どちらかと言うと「お客さん」感覚で,ちょっと教えてもらったら,ハイさよなら〜,と言う感じで,探鳥会を利用しています。
 こんな状態ですから,探鳥会参加者の中から次世代のスタッフを育てたくても,人材獲得が困難で,上手くいきません。

 日本野鳥の会本部では,「バードウォッチング案内人養成研修」と言うのを,1998年から本格的に始めています。探鳥会の案内役を本気で養成し始めたと考えてもいいでしょう。日本野鳥の会の探鳥会は,地域対応組織である支部活動の中心的なイベントですから,当然,研修修了生が支部で活躍することが期待されたわけです。明治神宮探鳥会としても,地元ですから,積極的に宣伝や勧誘などを行い,研修修了生の積極的な受け入れをアピールしてきました。
 ところが,研修修了生は,誰一人として明治神宮探鳥会に来たことがありません。せっかくの研修会が,お膝元の支部,地元の探鳥会に,何の恩恵も無かったのです。どうしてこんな結果になったのか,もっと良く調べてみないと分かりませんが,研修受講者の意識と,明治神宮探鳥会のコンセプトに大きなギャップがあることだけは確かです。探鳥会に「成果」が還元されない「養成研修会」では,研修をやっている意味が問われます。この辺の問題は,今後もよく検討して,「人材育成の場」としての明治神宮探鳥会のあり方も含めて,考えてゆかなくてはいけません。

 しかし現実問題として,参加者はどんどん来る。それだけ私たちの探鳥会が支持されているのですから,非常にありがたいことではあります。でも,支持されていても,私たちの仲間にはなってくれない,と言うのは,ちょっと寂しい。
 私たちも,仲間を無理矢理担当スタッフに登用しよう,なんて思ってはいません。例えばパンフレットを配るお手伝いをしてくださるとか,休憩時間が終わったときに,トイレに残っている人をチェックしてくださるとか,1人で不安そうにしている初参加の方の話し相手になってくださるとか,そうした,ちょっとしたお手伝いをしてくださるだけでもいいのです。私たちの仲間には,探鳥会の本番には都合がつかなくて参加できないけど,準備作業を手伝ってくださるような「影のスタッフ」もいます。こうした,誰かが少しずつ手を出し合って,探鳥会全体の雰囲気を盛り上げ,まとめてゆく体制を,充実させたいのです。
 だって,明治神宮探鳥会は,すべてボランティアワークで出来ているのですから。それに,探鳥会は本来,ごく少数の人が超人的に働いて作るものじゃないんですから。

 ボランティアの意味を再確認しつつ,お手伝いしていただける方,明治神宮探鳥会のファンになってくださる方,募集したいと思います。興味を持った方は,ぜひ,明治神宮探鳥会にお越しください


(2000年6月29日記)

→もどる