明治神宮探鳥会のベストシーズンは?


 探鳥会の参加人数を見ると,かなりの季節変動があることがわかります。
 「No. 2」で少しだけ紹介しましたが,「探鳥会」と名前がついている以上,やはり,話題の中心は鳥になる場合がほとんどですから,いきおい,鳥がたくさん見られる時期には,参加者が多くなります。特に,「いつ,どんな場所で,どんな鳥が見られるか」と言う情報に通じた人が多く集まる探鳥会では,その傾向がハッキリします。そういう場所では,トップシーズンとオフシーズンの参加人数に5倍以上の差が出ることも珍しくありません。東京では,真夏には鳥の種類も少なく,声もあまり聞こえませんから,どこでも「夏枯れ」状態になります。では,ベストシーズンは,と言うと,場所によって少々違っていて,干潟なら春秋の渡り鳥が通過する時期ですし,河原なら,カモや冬鳥の増える冬場が良く,山なら夏鳥のさえずりの聞こえる初夏,街の緑地では,冬鳥の増える冬頃から春先の渡り鳥の通過の見られる頃までが,ベストシーズンとなります。

 では,明治神宮のベストシーズンは?
 実は,明治神宮探鳥会にはシーズンオフはありません。と言うのも,「鳥」の種類数だけに頼った観察案内をしていないから,鳥に左右されにくいのです。明治神宮探鳥会は,「鳥も見る自然観察会」と言うコンセプト。鳥だけでなく,植物でも昆虫でも,その季節にベストのものを観察する……それが,私達が自然を楽しむための基本姿勢です。意地でも鳥を見よう,なんて思わないで,その季節にいちばん輝いているものを観察したほうが楽しいじゃないですか。いつ出かけても,必ず何かの「旬」の観察が待っているのです。だから,観察内容にオフは発生しません。
 強いて,ベストシーズンを推薦するとすれば……これは私個人の考えで,他のスタッフに聞けば,違う意見が出てきますが……4月と8月が,個人的にはおすすめです。
 4月は春の花が山ほど観察できます。明治神宮は,外来植物の侵入が少ないので,野草観察にはとても良いフィールドです。運がよければ,通過中の渡り鳥も観察できます。例年,4月は観察時間が足りなくて苦労しています。
 8月は昆虫観察のベストシーズン。気候条件によって左右されますが,条件さえ良ければ,キノコ類もかなりの種類が観察できます。キノコは,だいたい20〜30種類ぐらい紹介していますが,それと同じくらいの,種が同定できなかったキノコもあります(もっと勉強しなくては…)。昆虫は,セミが,トンボを始め,さまざまな虫が観察されます。「秋の虫」と言われる,コオロギ,キリギリス,バッタの仲間も観察しやすくなっています。
 もちろん,鳥に関しては,冬鳥の揃っている1,2月や,さえずりの聞こえる4,5月,渡り鳥の通過する春秋などを狙えば,都会でも意外なほど野鳥観察を堪能できます。でも,「明治神宮ならでは」と言える観察が楽しめるのは,やっぱり4月と8月ではないかと思います。

 以前,8月の探鳥会の開催案内が,野鳥の会本部の会報「野鳥」誌に出たとき,案内文に「この季節,鳥はあまり見られません」と書かれていたのは,ちょっとショックでした。勧誘すべきキャッチコピーの部分に,否定的な案内を載せるというのは,ちょっとひどい……。でも,鳥が少ないのは事実なんですよね。


(2000年4月13日記)

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