国民的バードウォッチングイベントは成り立つか?


 2001年11月。「ジャパンバードフェスティバル」の記念すべき第1回目の初日を,私はボランティアスタッフの一員として迎えました。
 この催しは,もともと我孫子で行われていたバードカービングの全国大会を拡大して模様替えしたものです。このイベントの「原点」であるカービングはもちろん,野鳥関係のアートの展覧会,学術的なシンポジウムなどのイベントが行われたほか,自然保護団体やNPO,学校,自治体,双眼鏡や望遠鏡のメーカーなど,さまざまな「野鳥関連団体」のテントが屋外の会場に立ち並び,賑やかな見本市のような状況でした。
 このような巨大なイベントの成立には,「鳥と人との共存する街」を目指す我孫子市の力も,大きかったと思います。

 市内3会場に分かれた大イベントは,2日間で3万8千人の来訪者を集めたそうです。

 このサイトを良く読んでおられる方なら,おや?と思うでしょう。
 Vol. 41で「1万人探鳥会」は,今後,無理だろうとコメントしてましたから。

 ……でも,実はやっぱり,「1万人探鳥会」は実現しなかったのです。

 イベント会場を訪れた人は3万8千人。来訪者は,思い思いの場所で「鳥」を楽しんでいたはずです。しかし,このイベントの中で,実際に鳥を見るイベントに参加していたのは,遊覧船で湖上から鳥を見るミニツアー(1回30人×数回)と,手賀沼展望台に陣取った観察ポイントの来訪者,そして,野鳥の会ブースで行っていた「バードウォッチングdeビンゴ」と言う自然観察ゲームの参加者です。「バードウォッチングdeビンゴ」のゲームカードは,フェスティバルの総合案内パンフレットに印刷されていましたから,ほぼ全ての来訪者に渡っていたはずですが,実際にビンゴカードが野鳥の会ブースに帰ってきたのは600枚ほど。手賀沼の野鳥観察ポイントも思ったほど盛況ではありません。多めに見積もっても,このフェスティバルで実際に意識して野鳥を眺めた人の数は来訪者の数%程度と考えられます。

 この数字,多いと思いますか,少ないと思いますか?
 ……少ないけど,まぁ,そんなもんじゃないかな,と言うのが,現場にいた者の率直な感想です。

 野鳥観察のベテランなら,こう考えます……賑やかなイベントですから,そんな時にわざわざ沼の野鳥を見る必要も無いだろう。あるいは,鳥はいつでも見られるけど,イベントは2日間限りだから,イベント見学を優先させよう,とも思うでしょう。
 観察経験の無い人も,イベント見学を優先させたいと考える人は多いでしょう。また,イベント会場のすぐ裏で,いろんな野鳥が観察できることなど,なかなか気づいてくれません。さらに,時間がかかりそうだ,と言う理由で観察を断念する人も少なからず見かけました。こう言うスタイルの野鳥関連イベントで,実際に野鳥観察を楽しむ人がそんなに多くない,と言うのは,それほど変なことではないと思います。会場での野鳥観察を目的に参加する人は,決して多くはないでしょうから。

 さらに付け加えさせてもらうとすれば,私の受けた印象としては……
 正直なところ,全くの初心者がセルフナビで観察するのは,けっこうきついと思います。
 前もって,初心者向けで所要1時間ぐらいのショートツアーとか,予告したり,インドアのイベントにも,初心者の興味をアウトドアでの観察に繋いでゆけるようなものがあったら,もう少し,野鳥の会の「看板イベント」である「探鳥会」にも繋がって行ったかも知れませんね。
 そうやってアウトドアでの野鳥観察への興味を引き付けた初心者に,各自の都合に合わせた時間や場所,内容を持った探鳥会を紹介して,後日,遊びに行ってもらう,と言う案内でもあれば,イベント参加後にも興味を繋げることが出来て,いいと思います。

 重要なのは,軽い参加動機でイベントに参加した人たちに対して,どうやって野鳥や自然への興味を引き出し,野鳥の世界へ繋げてゆくか,だと思います。それを工夫するのが主催者や各参加団体の腕の見せどころではないでしょうか。

 ともあれ,野鳥関連イベントで4万人近い人を集めたのは,日本国内では画期的なことです。
 単に大規模に人集めをするだけでなく,全ての参加団体にとって,得るものの大きいイベントに成長して欲しいものです。


(2002年2月20日記)

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