羽化でウキウキ


 ここ2,3年,我が家の夏の恒例行事になっているのが,セミの羽化の観察。真夏の夕方,親子でウキウキと,近所の公園に出撃します。
 観察の方法は,こちらに詳しく紹介していますが,ここでは,観察の「実践編」をお届けしましょう。

 こちら我孫子市では,毎年観察されるセミは5種類……ニイニイゼミ,ヒグラシ,アブラゼミ,ミンミンゼミ,ツクツクボウシです。まれにクマゼミの声を聞きますが,ここで繁殖しているかどうか,確認出来ていません。移入された個体である可能性もあるので,今後の研究課題です。
 いちばん多いのはアブラゼミ。北総地域はナシの産地としても有名ですが,この手の広葉樹は,特にアブラゼミが好みます。東京都心部の公園では,ミンミンゼミが大勢を占めているのと対照的です。この分布の違いを,「温暖化」で説明しようとしている人もいますが,私は,その地域に生えている樹の種類や,地面の湿り具合,そして,歴史的な背景(セミはそんなに移動距離が大きくありませんから)なども,複雑に関係しているのではないかと思います。
 とにかく,観察するなら,いちばん多い種類がいい。…で,アブラゼミを観察してみました。

 まずはセミの幼虫を探します。
 セミの羽化の観察時期は,セミの声の最盛期よりも少し前がベスト。我孫子では,7月末〜8月上旬が,アブラゼミの羽化の最盛期です。鳴き声の最盛期は8月上旬〜8月いっぱいぐらいです。
 羽化の最盛期を狙って,アブラゼミの好みそうな広葉樹の周辺をチェックします。

 余談ですが,よく,セミの寿命は1週間,などと言いますが,実際には,2〜3週間程度の成虫期間があり,もっと長生きする個体も,まれにあるようです。実際,アブラゼミは9月下旬近くまで鳴いていますし,場合によっては10月に入っても鳴き声を聞くことがあります。2〜3週間の成虫期間,と言うのは,昆虫としては決して短いほうではありませんし,幼虫期間も数年あります(最近の研究では,日本のセミの幼虫期間は,栄養条件によって延びたり縮んだりすることが,わかり始めています)から,昆虫としては大変な長寿と言ってもいいのではないでしょうか?



 夕方,明るいうちから,こんなふうに,外の様子をうかがっています。
 これを掘り出してもいいんですが,ちょっと暗くなれば,地上に出てきますから,それまで待ったほうが楽です。

 狙い目は日没頃から1時間ぐらい。


 日没時刻ごろ,樹を登り始めました。
 彼らは明るさや気温なども見ているようで,曇りの日は早めに出てきます。
 涼しい日や雨の日は,あんまり出てきません。

 時間に余裕があるなら,野外でじっくり羽化を観察するといいのですが,我が家は子供が小さいので,これを持ち帰って,カーテンなどにつかまらせて,部屋で観察します。これなら蚊に刺される心配も無いし…。

☆持ち帰る場合,幼虫の脚などに傷をつけないよう,ていねいに輸送してください。小さい傷でも,羽化の失敗の原因になります。


 足場が決まって,背中が割れると,あとはけっこう,さっさと羽化します。
 夜半前にはだいたい,羽化が終わります。
 これなら子供達も最後まで観察できますね。


 次に,仰向けになります。この状態で,しばらく止まります。
 脚が固まるのを待っているのです。
 脚が固まると,起き上がってしっかりつかまり,翅を伸ばす作業に入ります。


 翅はみるみる伸びてきます。翅がやわらかいうちに,翅脈(緑色のすじの部分)に圧力をかけて,体液を送り込んでいます。羽が固まると,翅脈には体液が流れなくなります。

 翅の茶色いアブラゼミも,羽化したばかりのときは真っ白で,だんだん色がついて,翅も固くなります。
 ゴキブリやコオロギも,羽化したばかりのときは,真っ白です。

 では,翅が透明なセミは,どうなんだろう?……と思って,ミンミンゼミの羽化も見てみました。


 ……やっぱり,出てくるときは白いようですね。
 翅を伸ばすころには透明になってきますけどね。

ついでに,幼虫or抜け殻で,ミンミンゼミとアブラゼミを識別するポイントを1つ,紹介しましょう。

これはアブラゼミ。触覚の根元から2番目の節が小さめで,3番目の節が2番目の1.5倍ぐらい大きい。


ミンミンゼミは,アブラゼミのような特徴は無く,触覚全体も,ややスリム。

これさえ分かれば,抜け殻でアブラゼミとミンミンゼミの識別は,容易にできます。
……え?触角が折れていたら?……う〜む。

   ☆     ☆     ☆

 アブラゼミの羽化シーンをGIFアニメにしてみました。
 ファイルサイズを小さくするため,画像サイズを小さくして,かなりコマも落としていますが,雰囲気をお楽しみください。
 ……それでも276kあります。
 2時間ほどの羽化の過程を10数秒でお見せします。途中,変化の少ないところは,かなりカットしているので,単純に時間を詰めたものではありません。

見てみたい人は,→こちら


(2000年8月07日記/200年8月09日,2001年7月28日追加)

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