ステレオ月面写真
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月を立体的に見る。
38万kmも離れた物体を,どうやって立体的に見るか?
ものを立体視するには,微妙に見る角度の異なる2つの画像を用意し,それを左右の眼で見て頭の中で合成してやればいいのです。これを利用したのが「裸眼立体視」。
月を裸眼立体視してみましょう。
平行法……左の画像を左眼で,右の画像を右眼で見てください。
左右の画像の間隔が55〜60mmぐらいになるように,モニターを調整すると,よく見えます。
(モニターで見にくかったら,画像を適当なサイズにプリントしてみてください)
……なんとなく,真ん中が手前に膨らんで見えるでしょ。
どうやって立体画像を作ったか?
実は地球の自転を利用しています。
右眼の画像と左眼の画像は,撮影時刻に2〜3時間,時間差があります。
この2〜3時間の間に,地球が自転して,視点が動いていたんです。
これを合成してやれば,ステレオ写真になるのです。
→本館に詳しい解説があります。
では,拡大撮影でも立体視に挑戦してみましょう。
左のほうが後で撮影したので,よく見ると,微妙に光の当たり方が違います。
その辺の誤差は,眼のほうで調節してくださいm(__)m。
少なくとも,1枚で見るよりも,ずっと臨場感はあると思います。
さらに作例。
視差を大きくするには,撮影間隔を伸ばせばいいんですが,そうすると,光の当たり方の変化が目立ちます。拡大撮影の場合,撮影間隔は1時間半〜2時間ぐらいに抑えておくべきでしょう。全面撮影だと,結構ごまかせるので,4〜5時間ぐらい間隔をあけて満月を撮影すれば,ホントにボールのように見えるステレオ写真が作れますよ。
…こう言う,のっぺりした地形は,立体視しにくいですね。
え?写真が悪いって?……それは我慢してください。
左下のクレーター(アリスタルコスAristarchus)を目標に,眼を調節してみてください。
実は,2枚の写真の向きや画質,色調などを合わせるのって,結構面倒な作業です。
この立体視のアイデアは,まだ銀塩写真しかなかった学生時代から持っていたんですが,銀塩写真で2枚の写真の調子を合わせるのは,めちゃめちゃ大変な作業でした。学園祭の展示物として1回作って,エラく苦労した覚えがあります。いまは撮影もデジタルでチョイチョイ。デジタルならすぐに画像処理が出来るので,気軽に立体写真が楽しめるようになりました。
2001.08.03〜04
満月直前の丸い月を,ステレオ写真にしてみました。
撮影間隔は2時間半。右側が先に撮影したものです。
平行法で立体視すると,月の真ん中あたりが,手前に膨らんで見えてきます。上手に目を調節できると,月がボールのように見えてくると思います。
月の画像の左右の端っこを比べると,右の画像のほうが,月の右側がより多く見えていて,左の画像では,月の左側に余裕があります。この微妙な視差が,立体感を作っているのです。
月の全面写真なら,欠けぎわの拡大画像に較べると,月齢の変化があまり目立ちませんから,もっと撮影間隔を延ばして,大きな視差を得ることも可能だと思います。
2001.08.31
月齢12.5。月の北のほうをアップでステレオ写真にしてみました。
中央やや下寄り,「海」と呼ばれる暗い部分が入り江のようになっていますが,ここが「虹の入り江」。
「虹の入り江」と言うと,アポロ宇宙船の月着陸の中継をドキドキしながら見た年代の方なら,ピンと来ますよね。あそこに人間の足跡があるんですからねぇ……。
満月に近い時期は,月の全体像のステレオ写真は作りやすいのですが,クレーターのアップは,ステレオに加工しにくいですね。ちゃんと立体的に見えるでしょうか?
2001.09.04
満月を過ぎた月。月の東側(地球から見ると右側)が欠けてきて,地形が見やすくなります。
このエリアは,「豊かの海」(ウサギの耳の部分)のはじっこのほうです。
右上のほうでいちばん目立つクレーターは,ラングレヌスLangrenus,やや下のほうに見える大きいのがペタウィウスPetavius。どちらも穴の中央に火口を持った,立派なクレーターですね。ペタウィウスの直径は177km。おおよそ東京〜静岡ぐらいの距離です。
ラングレヌスが綺麗に見えるように画像を調整しました。
2001.09.28
新たに導入したBORG76EDを使って,より鮮明なステレオ写真を目指します。
……と言いつつ,気流が安定せず,大苦戦。
左右とも5枚コンポジットしてみましたが,特に後から写した左目用画像が悪くて,……ごめんなさーいm(__)m。
それでも,なんとかコペルニクスCopernicusの火口壁が盛り上がっているのがわかります。
#画面中央に画像があったほうが立体視しやすいようなので,今回から中央に置いてみます。
乱気流にもめげずに撮影を続けます(苦笑)。
月面最北端に近いところ。左上の大きなクレーターはJ.ハーシェルJ. Harschel,右上の小さめで深いクレーターがフィロラオスPhilolaus。
撮影時の月齢は11.1〜11.2。半月ぐらいから月齢13ぐらいまでの時期(夜半過ぎに起きる根性があるなら,月齢17〜23あたりも…)が,クレーター観測の適期です。
クレーターだけでなく,緩やかな起伏もステレオで浮かび上がってきます。幻想的ですね。
上の画像の,ちょっと左下です。
J.ハーシェルが上のほうに見えています。
下の円弧状の部分が「虹の入り江」。周囲の起伏に比べると,とても平坦に見えます。
2001.10.02
「お月見」の季節。お約束の満月です。
本当は10月1日が十五夜でしたが,暦の都合で,本当の満月は,2日の夜でした。
ちょっとこだわって,「満月」を迎える時刻を挟んで2枚撮影して,ステレオにしてみました。
この写真はジオマ65EDで撮影しています。
拡大撮影ではBORGに負けちゃうけど,全体像の撮影なら,ジオマでも十分に満足のゆく画像が得られます。
ジオマのほうが手軽だし……。
2001.11.23
半月をステレオにしてみました。
右チャンネルの撮影が今ひとつで,左右の画像の雰囲気が違うのですが,立体視してみると,けっこう臨場感があったので,あえて公開します。ちゃんと見えますか?
もう1枚,今度はアップです。
月面の中央部よりやや南東(ひとつ上の半月の写真で言えば,欠けぎわの真ん中よりも,やや右下)の部分です。
中央よりやや下の,小さなクレーターを抱えた,ちょっと大きめのクレーターがサクロボスコSacrobosco,その右側の崖が,アルタイ断崖の一部です。立体視しにくいようでしたら,上のほうに見える台地状の地形の立体感に注目してみてください。下のほうがちょっと遠くに見えると思いますが,それで正解です。月は丸いので,月面中央部に近い,画面上のほうが,手前に見えてくるはずです。