火星の撮影記録

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☆共通撮影データ
 望遠鏡:ビクセン ジオマ65EDフィールドスコープ
 カメラ:カシオQV-8000SX
 25倍アイピース+デジカメのズーム目一杯でコリメート。
 露出時間:1/8〜1/30秒

 特に断りのない限り,すべての画像は正立像です。

 2001.04.14

 早起き(?)して午前3時に撮影。
 10枚コンポジット。300%拡大。
 白っぽい雲のような部分,黒っぽい地上の模様が,なんとなく見えます。
 接近2ヶ月前で,まだまだ遠い火星です。
 見かけの直径が10"を超えたら撮影しようと思って,この日が初挑戦。
 まだ土星の視直径の半分。なかなか難しい!

☆その後,調べてみたら,この画像に見られる黒っぽい部分は,火星表面でもっとも大きくて目立つ「大シルチス」という模様でした。火星初挑戦で,期せずして最も火星らしい典型的な像が得られたとは,ビギナーズラックですね〜。


 実はこれが原版上のサイズ。
 これでも何とかわかるか……。


 状態の良いフレームを4枚だけ厳選してコンポジット。
 これのほうが模様が見やすいかも。
 火星図などを頭に入れてからこの画像を見ると,黒い部分が「大シルチス」らしく見えますねー。


 2001.04.15

 この日のほうが気流が安定していました。
 露出を長め(1/10sec.)にして,12枚コンポジット。
 滑らかな感じに仕上がっています。

 火星の自転周期は24時間と37分。したがって,14日とほぼ同じような位置が写っていることになります。
 北極地方が白っぽく見えるのと,大シルチスの黒い影が,なんとか判別できます。


 2001.04.20


 午前3時。眠い目をこすりながらベランダに望遠鏡を出して撮影。
 1/15sec.露出を7枚コンポジット。
 14,15日のときとは違う模様が,ぼんやりと見えてきました。
 火星はいま,南中高度が低いので,大気の影響を受けやすいのですが,赤色が強いせいか,大気による青の色ズレが目立ちません。この画像も,色ズレの補正はしていませんが,それなりに見えますね。


2001.05.07

カラーバランスについて検討してみました。
いずれも露出は1/15秒。

 QV-8000のカラーバランス設定を「太陽光」で撮影。
 全体に赤味が強く,コントラストもハッキリしません。
 RGB分解してみたら,青の情報がゼロでした(苦笑)。地平高度が低い影響もあるのかも知れませんが,赤色の情報だけ突出しているような印象です。

 惑星撮影に通常使用している,カラーバランス「蛍光灯」の設定。
 画像処理の段階で,やや青を強調してみました。
 北(上のほう)のほうに雲のような白い斑が見えます。南部(下のほう)の黒い影は,火星本体の模様です。

 マニュアルでカラーバランスをいじって,青を強調してみました。
 他の写真と比べると,ちょっと不自然ですね。
 RGB分解してみると,青はややシャープネスに欠けるので,あんまり得策ではないかも知れませんが,赤い光で画像がつぶれてしまうときなどには,使える手段かも知れません。赤を抑えて撮影して,モノクロに変換してやると,コントラストの高い画像が得られる可能性もあります。

 結論として,「蛍光灯」のカラーバランスで撮影したものが,もっとも自然な感じに仕上がっていて,撮影後のカラーバランス補正も,あまり必要としないようです。


2001.05.12

 いよいよ視直径が大きくなってきました。4/14と同じ拡大率です。露出もちょっと短くなり,1/20秒。
 北半球の雲のような模様,南半球の黒っぽい地表のパターン,そして,南極冠のような白斑が写りました。黒い部分のパターンが撮影日ごとに変化しているのは,火星の自転によるものです。火星の自転周期は24時間と37分ですから,同時刻に撮影していれば,約44日でひと回り,火星表面の模様を撮影できることになるのですが……。


2001.05.22

 露出1/10Sec.で13枚コンポジット。
 今シーズン最高の出来栄えです。
 やっと,大シルチスが見やすい位置に回ってきました。
 中〜低緯度の地形がよく見えます。
 南極冠は結局,よく分かりません。まだ発達が悪いのかも?

 梅雨の「はしり」のような天気。1:30頃の撮影ですが,この後,すぐに曇ってしまいました。空の透明度は良くないので,露出時間は長くなりますが,天気の崩れる前の,ドロリとした大気は,気流が安定していて,惑星にとっては撮影しやすい条件だったりします。

教訓。
「惑星撮影はシーイングが命」

…だから,天気が悪そうでも諦めちゃいけませんね。

 今回,前回よりも「彩度」を下げて撮影しました。
 木星や土星の表面の模様を撮るときは,彩度を上げたほうが効果があるようですが,火星の場合,彩度を高く設定すると,真っ赤っかに像がつぶれてしまうことが多いので,R画像の露出オーバーを避ける意味で,彩度の設定を検討してみると良いと思います。


2001.06.03

 6月に入り,雲の切れない日が続きます。
 雲の隙間から,やっとこ撮影しました。
 13枚コンポジットしています。

 何が写っているのか,ちょっと自信が無かったので,火星シミュレーションソフトの画像と比較してみます。

 見ればすぐ分かりますが,左が実写,右がシミュレーション画像です。
 向きを揃えています。
 火星に雲や嵐が発生すると,地表の模様が見えにくくなるので,おおよその位置関係の比較ぐらいにしかなりませんが,まぁ,おおよそ,火星の地表の模様が撮影できているようです。これで少しは画像処理に自信が持てますね。
 なお,当サイトは「正立像」を基本としていますので,天体望遠鏡で撮影された,他のサイトの惑星写真と,画像の向きが違います。もし比較することがあったら,像をひっくり返して比較してください。


2001.06.24

 最接近日(6/22)を過ぎて,やっと晴れ間が見えました。
 雲の隙間から何枚か撮影し,10枚コンポジット。
 透明度が低く,露出は1/6sec.まで伸ばしています。

左の端っこ(火星面で言えば,西のほう)に,大シルチスが見え始めたところです。
その後ベタ曇りで,大シルチスはおあずけ。


2001.07.14

 しばらく晴天が続いているのですが,上空の大気が安定せず,なかなか撮影チャンスがありません。
 この日も50カット以上撮影し,その中から10枚選んで,コンポジットし,やっとこ得られたのがこの画像。
 南部の黒っぽい地形が見えていますが,南極冠は見当たりません。
 北部には雲のような白い部分がありますが,これも北極冠ではなく,雲か嵐?


2001.07.23

 どんよりした夜。星空はあまり良く見えませんが,惑星の撮影には,落ち着いた気流が大切。
 大シルチスが右端に隠れそうなところです。
 左側が,ちょっと欠けてきましたね。6月24日の画像と比べると,見かけの大きさも,幾分小さめになっています。
 な〜んとなく,模様が分かりにくいと思ったら,黄雲が発生しているらしいです。


2001.08.03

 だいぶ左側が欠けてきました。観測シーズンも終盤です。
 この夏は,なかなか良い観測条件に恵まれません。
 晴れても大気が不安定で,気流が乱れています。
 これは,雲の隙間から撮影したものです。
 10枚コンポジットしましたが,火星表面の砂嵐の影響が残っているのか,なんとなく,明るい,のっぺりした雰囲気です。


2001.08.15

 久しぶりに晴れ間がのぞきました。12日ぶりの晴れ間です。ここしばらく,昼間は晴れても夜は曇るパターンが続いていました。……がしかし,すぐに曇ってしまいました。あまりコマ数が稼げなかったので6枚コンポジット。
 北のほうは相変わらず明るいですね。北極には,極冠のような,雲のような白い部分も見えます。ちょうど,目立つ模様の見えない時間帯だったので,あまりコントラストがついていないように見えますが,左側の欠けぎわのグラデーションを見る限り,そこそこに写っているようです。
 見かけの大きさも,だいぶ小さくなりました。このページの主要な画像は,縮尺を揃えていますので,大きさの変化も分かると思います。


2001.09.06

 視直径は12"台になってしまいました。6月22日の最接近時の約6割,4月20日頃の大きさです。
 今シーズンの撮影開始が4月14日でしたから(このページのいちばん最初の画像),ぼちぼち,今期の観測シーズンも終了です。気流が不安定でカチッとした画像ではありませんが,シミュレーション画像(右側)と較べると,主要な地形は大体見えているようですね。大シルチスもこれで見納めかな。

 次回の接近は,2003年の8月下旬。非常に条件の良い「大接近」で,今回以上の観測が期待できます。
 それまでに,写真の腕も磨いておかなくちゃね(笑)。


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