ウメノキゴケで空気のよごれを調べよう
対象年齢:小学校高学年以上。
おとなが手伝えば,小学校低学年からOK。
「地衣類(ちいるい)」って,知っていますか?
理科の教科書には出てくるかもしれませんが,見たことありますか?
ちょっと探せば,けっこう身近な場所で見つかります。
……え?見つからない?
実は,空気のよごれのひどい場所では,見つからないんです。
こういう,身の回りの環境を知る手がかりになる生き物を,「環境指標生物」なんて呼んだりしますが,地衣類は,身近な環境指標生物にとして,空気のよごれを調べるのに使えるんです。
【用意するもの】
・地衣類の図鑑(「こけ」や「しだ」といっしょに出ている,ハンディな図鑑もあります。インターネットで「地衣類図鑑」を作っている人もいますので,図鑑が見つからなかったら,ネットで調べてみましょう)。
・地図(できれば地形図や白地図がいい)
・虫めがねかルーペ(なくでもOK)
【観察してみよう】
そもそも,地衣類って,なんだろう?
簡単に説明しますね。
地衣類とは,真菌(キノコやカビのなかま)と藻類(「も」のなかま)が共生関係をつくって,いっしょに力を合わせて生きている,ちょっと変わった生き物です。木の皮や,岩などにへばりついて,生きています。
地衣類は,環境の変化に弱く,大気汚染が進むと発生しなくなる種類も,少なくありません。そこで,その性質を使って,地衣類のある,なしを調べたり,どのくらい大きく育っているのかを調べたりすることで,大気汚染のようすを調べてみようと言うわけです。
こんな感じのものが,地衣類です。
地衣類で大気汚染を調べるときは,まず,どんな地衣類を調べるか,決めなくてはいけません。
大都市の中心部以外の場所では,ウメノキゴケが調べやすいと思います。ウメノキゴケは,ウメやサクラの木にはえる地衣類です,サクラはいろいろな場所に植えられていますから,見つかるチャンスが多いのです。
これがウメノキゴケ。サクラの幹にくっついているのを撮影しました。
ウメノキゴケは,若い木(=まだ幹の細い木)では,なかなか見つかりませんから,調べる木の太さを決めておきましょう。おおざっぱですが,太さ20cm以上(あまり太い木のない場所でしたら,太さ15cm以上)のサクラの木をえらんで,ウメノキゴケをさがします。
ウメノキゴケが見つかったら,ウメノキゴケの「多い,少ない」を,しらべます。
ふつうは「被度(ひど)」と言って,木の幹の何パーセントがウメノキゴケでおおわれているか,と言う数字を出しますが,調べるのが大変なので,ウメノキゴケの大きさを調べたり,もっとウメノキゴケの少ない場所だったら,サクラの木を何本か調べて,そのうち何パーセントの木にウメノキゴケがくっついているか,と言う調べかたをしてもいいと思います。みなさんの住んでいる場所の環境に合わせて,調べかたをくふうしてみてください。
これは明治神宮外苑(東京都港区)のサクラの木。
何もついていません。
すぐ近くに青山通りと言う,交通量の多い道のある,大都会のまん中では,こんなことになっています。
【もう少し観察してみよう】(ちょっと詳しい説明)
地衣類の観察は,手軽にできる,身近な環境調査になります。ぜひ,学校や地域で,子ども達やいろんな人を巻き込んで,試してみてください。
地衣類の種類によって,大気汚染に対する強さは,少しずつ違うようです。できれば,何種類かの地衣類を調べてみるといいと思います。その場合,ある程度の識別力が要求されますので,事前に観察会や勉強会などをしておくといいでしょう。ウメノキゴケは非常に分かりやすい地衣類ですから,小学生でも十分に調べることが出来ます。中学校以上なら,生徒が主体となって,「総合的な学習の時間」を利用したり,生物関係の部活動の題材として利用して調査を進めても,面白いと思います。
また,気候条件によって,多少の地域差は出ます。遠くの地域の調査結果と比較するときは,気候条件を配慮してください。