土の中の生きものを見てみよう

対象年齢:小学校低学年以上。
       おとながデモンストレーションするなら,小学生未満からOK。


 土は生きている!
 それを,たしかめてみましょう。
 土は,こまかい石のつぶつぶのほかに,かれた草や木,死んだ虫や動物など,さまざまなものが,まざっています。そして,それを食べて,こまかく分解(ぶんかい)する生きものも,土の中にくらしています。
 かんたんな実験(じっけん)で,土の中の生きものをさがしてみましょう。

【用意するもの】
 ・土:木の下にある,落ち葉などがまざっているような土がよい。
  いろいろな土を用意(ようい)して,くらべてみてもいいでしょう。
 ・コップ:ガラスのコップでもいいのですが,透明(とうめい)なプラスチックの,使い捨て(つかいすて)のコップがべんりです。
 ・「お茶パック」などの,フィルターになっている小さな袋。スーパーマーケットなどで売っています。
 ・顕微鏡(けんびきょう):20〜100倍ぐらいで使います。実体顕微鏡(じったいけんびきょう)が使いやすいのですが,ふつうの顕微鏡でもだいじょうぶ。顕微鏡のない人は,学校の理科室のを使うか,写真用の10〜20倍ぐらいのルーペでも,なんとかなります。
 ・スポイト:薬局などで売っています。
 ・水,クリップかせんたくばさみ
 ・顕微鏡を使うときは,シャーレやスライドグラスがあるとべんりです。
 ・ルーペでかんさつするときは,黒や紺色(こんいろ)など,こい色の小さなお皿(さら)があると,べんりです。

【やってみよう】
 まず,土を小さじ1ぱいぐらい,「お茶パック」に入れます。

 土を入れたパックを,水をいっぱいにいれた水の中にいれて,下におちないように,クリップかせんたくばさみで,とめておきます。


 ちょっとだけ,かたむけておくと,もっと,うまくできます。

……このまま,1時間〜1日ぐらい,うごかさないでおきます。
さむいときは,時間をかけるようにしましょう。

 しばらくすると,コップのいちばんひくいところに,虫があつまってきます。
 目に見えないほどの小さな虫もいるので,コップの底(そこ)の水をスポイトでとりだして,観察します。

実体顕微鏡(20倍)で見ると,こんなものが見えます。

…これは線虫(せんちゅう)のなかまのようです。


ちいさなミミズもいました。
これは線虫よりも,ずっと大きいので,肉眼でも見えます。

 さらに,虫のいる水を1滴(滴),スライドグラスにとり,そっとカバーグラスをのせて,顕微鏡で見てみました。


 さっきの線虫です。
 100倍ぐらいで見ると,すごいですね。
 これはプロ用の位相差(いそうさ)顕微鏡を使っているので,からだの中のようすも見えています。
 こんな小さな生きものが,植物や動物などを分解して,土を作っていたんですね。
 もちろん,この虫は,人の体に寄生する虫とはちがう種類ですから,安心して実験してくださいね。


【でも,どうして?】(ちょっとくわしい説明)
 土の中には,いろいろな生き物がいます。実は,今回紹介した観察方法は,動物の糞の中から線虫や鞭虫などの寄生虫を検出する検査テクニックなのです。今回紹介した方法では,土壌線虫やミミズなどが,おもに見つかりますが,土を茶漉(こ)しなどに入れて,すぐ上から電気スタンドなどの強い光を当ててやると,茶漉しの下に小さな虫がポロポロ落ちてきます。土作りの主役は,ミミズやダンゴムシなどのような,目に見える大きさの生きものだけではありません。線虫や小さな昆虫,ダニなどの,目に見えないような生き物,そして,たくさんの菌類。いろいろな生きものが,土の中に暮らし,土を作っているのです。身近にある,ミクロな生きもののミクロな生態系。そしてそれは,植物や昆虫,四つ足の動物,鳥などの暮らす生態系と,しっかりとつながっています。地上の生態系の豊かさ……つまり,木や草があり,それを利用する虫や鳥があることで,その死体を土に返す,土の中の生態系も豊かになり,こうして作られた土は,植物をさらに豊かにしてゆきます。
 ミクロな視点から大自然を考える。自然の豊かさについて考える。自分と自然の「つながり」について考える。……そんなきっかけが出来たらいいな,と思います。


【もう少し観察してみよう】
 土の中の虫の数は,自然の豊かさのめやすになります。土の量,水の量,水につける時間,温度などを一定にしておけば,土の中の虫の数をくらべることができます。
 いろいろな場所の土を集めてきて,虫の数と環境との関係を調べれば,とてもおもしろい研究になります。学校や地域のサークル活動や,夏休みの自由研究に,ぜひ,やってみてください。

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