ドングリあめ
対象年齢:小学校高学年以上。
おとながデモンストレーションするなら,小学生未満からOK。
ドングリを食べたことがありますか?
ほとんどのドングリは渋くて,そのままでは食べられませんが,渋くないドングリもあります。
渋くないドングリなら,そのまんまフライパンで焼いて食べてもいいのですが,ちょっと手をかけて,実験してみましょう。
ドングリから水あめを作ります!
【用意するもの】
・ドングリ:渋くないドングリを使います。シイの実(スダジイでもツブラジイでもOK)か,マテバシイの実がいいでしょう。これらのドングリは,北海道,東北地方の人は,手に入りにくいと思います。渋味のあるドングリでも,渋抜きをすれば使えます。
・消化酵素:ジアスターゼかアミラーゼを使います。薬局で手に入りやすいのは,「タカヂア錠」(三共製薬)という名前で胃腸薬として売っている,ジアスターゼの錠剤です。
・調理器具:すり鉢,すりこぎ,油こしなどに使える丈夫なキッチンタオル,ボウル,なべ,スプーンなど。
マテバシイの実。街路樹などにもよく使われているので,街の中でも手に入りやすい。
【やってみよう】
「ドングリあめ」の作り方の大まかな手順は,ドングリをすりつぶしてデンプンを取り出し,それを消化酵素で分解して糖に変えて,煮詰めて,水あめにします。
順番に説明しましょう。
・ドングリをすりつぶす
マテバシイなら10〜20個ぐらい,スダジイなら30〜40個ぐらい,ペンチなどで割って,中身を取り出して,すり鉢に入れます。これに水を100ccぐらい加えて,すりつぶします。
・デンプンを取り出す
ドングリをすりつぶした液を,キッチンペーパーでこします。白っぽくにごった液がとれます。この白いものがデンプンです。液は少し茶色っぽくなっています。これはドングリのアクですが,これを取り除いてきれいにしたいときは,液をしばらく静かに置いておき,デンプンが沈んだところで,上澄みをすてて,また水を加えてかき回し,静かに置いて,上澄みの色が薄くなるまで,これをくりかえします。
もし,渋のあるドングリを使ったときは,この,デンプンをきれいにする作業を何回も何回もくりかえせば,渋を抜くことができます。
マテバシイから取り出したデンプン液。最初はこのぐらいの色がついていますが,このまま次の作業に入っても,大丈夫です。ドングリの風味を残すなら,このほうがいいかもしれません。
・デンプンを消化する
さて,デンプン液ができたら,これをなべに入れてスプーンなどでかきまぜながら加熱し,のり状にします。葛湯(くずゆ)を作る要領です。
透明感が出て,ネバネバ,ドロドロになったらOK!
これを少しさまします。
温度が高いと酵素がこわれてしまうので,50℃ぐらいまでさまします。
さぁ,いよいよ酵素を入れます。入れる量はデンプンの量にもよりますが,2〜3gぐらい。
さきほどの「タカヂア錠」の場合,錠剤なので,あらかじめ5錠ぐらい,つぶして粉にしておきます。
酵素を入れると,ドロドロだったデンプン液が,みるみる溶けて,サラサラになってゆきます。
ジアスターゼを入れたあとのデンプン液。もう,サラサラです。
・しばらく保温
酵素によるデンプンの分解は化学反応です。40℃ぐらいにしておくと,反応が早く進みます。そこで,デンプン液を密封できる容器にうつして,保温します。夏ならそのまんまでも大丈夫。冬はコタツやホットカーペットを利用してもよいでしょう。保温調理器具があったら,それを使うと便利です。
酵素反応がおわって,デンプンが糖になるまで,数時間〜ひと晩ぐらい,保温しておきます。
・煮詰める
いよいよ最後の作業。デンプン液は,ほんのり甘くなっていると思います。ちょっとだけ,なめてみてもいいですよ。これをなべに入れ,かきまぜながら弱火でゆっくり煮詰めてゆきます。火が強いとこげやすいので,注意してください。また,煮詰めすぎると,冷えたときにカチカチに固まってしまいます。
完成!
マテバシイ10個からスプーン1〜2杯ぐらいの水あめができます。
さぁ,なめてみましょう。
【でも,どうして?】(ちょっとくわしい説明)
甘いものへのこだわり……昔の人にとっては,砂糖は貴重品。甘いお菓子はぜいたくなものでした。「甘さ」は,おいしいごちそうだったのですね。今では私たちは甘いものが自由に手に入ります。ダイエットのために,甘いものを食べないようにしている人もいるくらいですから,甘いものへのあこがれやこだわりも,変わってきているんでしょうね。
ここで紹介した方法は,デンプンを消化して麦芽糖(ばくがとう)を作るテクニックです。お砂糖の甘さは蔗糖(しょとう)ですから,お砂糖と甘味の質が微妙に違うことを感じる人もいることでしょう。このような方法で甘いお菓子を作るのは,決して珍しいことではありません。甘酒は,お米のデンプンを麹(こうじ=コウジカビ)によって消化し,糖に変えたものです。鹿児島のお菓子「からいもあめ」も,サツマイモのデンプンを,麹(こうじ)で糖に変え,煮詰めて練り上げたものです。
自分の手で甘いものを作るとき,なにか,少し特別な思いがするのは,そんな歴史を感じるからなのでしょうか?
まして,野外で手に入れた素材から作る,となれば,もっとワクワクします。
【もう少し観察してみよう】
ドングリが手に入らなかったら,片栗粉20gぐらいを水100〜150ccに入れて加熱し,葛湯を作って,酵素を入れるところから実験を始めてください。ドングリよりも上品な味の水あめができます。