星座発見装置「めもりーくん」

対象年齢:小学校高学年以上。
       原理を理解するのが,ちょっとむずかしいかも知れません。
       科学教室などで実施すると良いと思います。
 


 方角と,明るい星のある場所が1つわかれば,あとはスイスイと星座を見つけてくれる,アナログ星空ナビゲーションシステムです。これがあれば,星座の観察もラクラク。工作するだけじゃなくて,実際に使ってみて,どんどん星が見つかるおもしろさを,体験してください。


【用意するもの】

 なるべく安く作れるように考えた「試作品」を紹介します。どうやって動いているのか,原理を理解すれば,いろいろとデザインを変えて作ることもできます。
 ……ですから,「これを使わなくては作れない!」と言うことはありませんので,材料の紹介はしません。
 写真や説明を見て,自分なりに工夫してください。

【作ってみよう】

 まずは,どんなものなのか,完成したすがたを見てください。



 右側の部分が「極軸(赤経軸)」という,このシステムの本体です。透明プラカップがななめに貼り付けられているだけ。この角度がとても重要で,星を見る場所の緯度に合わせた傾きを持っています。そこに,同じ大きさのプラコップをかぶせて,くるくる回るようにしてあります。このプラカップにはさらに,小さなペットボトルが,プラカップのおしりに垂直になるように,テープで止めてあり,その中心に水色のストローが通してあります。このストローの回転軸が,プラコップの回転軸と直角になるようにセットするのがポイント。この水色のストローの先には,照準となるピンクのストローが,垂直に貼り付けられています。
 上側のプラコップからストローまでが。「赤緯体」と呼ばれる部分です。

 望遠鏡に詳しい人は,「あ,これ,赤道儀だ」と気づいたのでは?



 極軸は,こんな形。




 こちらが赤緯体。
 極軸と赤緯体は,カップを重ねるだけで,接着していません。
 カップをクルクル回すことで,回転軸にしてあるのです。
 ペットボトルとカップの間は,しっかりテープで止めています。
 目盛りのついた紙テープが2つ見えますが,これが,星の位置を読むための目盛り環で,どちらも,カップやボトルには接着されておらず,自由にクルクル回ります。



 このように,2つの回転軸を持っています。


 では,使ってみましょう。

 まず,「極軸合わせ」をします。
 この装置の心臓部である極軸を,地球の自転軸と平行に合わせてやる作業。
 これにより,天空の座標系のタテヨコと,この装置のタテヨコの動きを,そろえることになります。



 北極星の見える場所であれば,極軸にあいている2つの穴を通して,北極星が見えるようにセットします。
 北極星が見えない場合は,本体を水平な場所に置いて,方位磁針で極軸が真北を向くようにします。


 次に,「アライメント」作業をします。
 これは,どれか1つ,明るい星を選んで,その天空上の座標を装置に教えてやる作業です。



 星座早見盤などを見て,明るい星(惑星はダメ)をひとつ選び,その星をピンクの照準の中に入れます。




 「天文年鑑」「理科年表」などのデータブックで,星の位置を読み,「星座発見装置」の目盛りを,この数字に合わせれば,セット完了。



 あとは,見たい星座の位置を調べて,照準の位置を示すマークを「星座発見装置」の目盛りにあわせるだけで,ピンクのストローが,見たい星座の方向を示してくれます。
 あまり精度は高くありませんが,明るい星を探すときにも,この装置をを使えば,大体の位置を示してくれます。




 地球上に経度・緯度があるのと同じように,星空にも,「赤経・赤緯」と言う座標系があります。北極星のごく近くにある「天の北極」が赤緯プラス90度,その真反対にある「天の南極」(日本からは見えません)が赤緯マイナス90度で,南北方向の位置が示されています。




 東西の方向は,うお座にある「春分点」を基準に,左回りに24時(または360度)の位置表示。



【もう少し観察してみよう】(ちょっとくわしい説明)

 望遠鏡のことに詳しい人なら,もう,おわかりでしょう。
 この装置は,「赤道儀」そのもので,赤道儀の目盛り環を使って目的の天体を導入するテクニックを,そのまま使っています。赤道儀は,星の動き(日周運動)を追いかけるのに便利な道具ですが,ちょっと発想の転換をして,これを使えば,星の動きを示すことが出来る,と考えてみました。たとえば,春分/秋分,冬至,夏至の太陽の位置を「めもりーくん」にセットして,極軸をぐりぐり回してみましょう……ほら,照準として使っていたピンクのストローが,太陽の動きを再現してくれます。

 上のほうで,アライメント作業に「惑星を使っちゃダメ」と書きましたが,データブックなどで,惑星の正確な赤経,赤緯が分かっているなら,惑星のデータを入れても大丈夫です。但し,小学校の学習活動に使う場合は,混乱を招くので,恒星でのアライメントを強くお勧めします。

 地上から見えている星の位置は,見ている場所の経緯度と時刻のデータがあれば,ほぼ決まります(標高に関しては,とりあえず無視していますが,星座を探すレベルなら,標高を考慮する必要は無いでしょう)。ですから,この「めもりーくん」の水平さと方角が正確に設置できれば,恒星を使ったアライメント無しに,計算で,目盛りの校正が出来ます(赤緯方向の目盛りの校正は,「めもりーくん」の設置前に,極軸合わせ用の穴から見える景色と,ストローの照準から見える景色を一致させ,そのポイントを赤緯90度にしてやればOKです)。

 最近では,コンピュータで見たい天体を自動的に導入してくれる望遠鏡も,いろいろと売られていますが,こうした,アナログのナビゲーションでも,けっこう役に立つ(第一,電池が要らない)ことを体感してくだされば,と思います。また,星の動きを理解しないうちに赤道儀を購入してしまうと,望遠鏡が斜めに動くことの理由が分からず,非常に扱いにくい思いをするかも知れませんが,「めもりーくん」で基本的な星の動き,赤道儀のしくみを理解しておけば,赤道儀式の望遠鏡も,自信を持って扱うことが出来ると思います。

 このコンテンツには,詳しい作り方も,型紙も用意していません。その理由は,あり合わせの物で工夫して,自分だけの装置を作って欲しいからです。この作例と同じ材料が手に入る可能性は低い。だったら,写真としくみを見て,構造を理解し,自由にデザインして作ってくださったほうが,より学習効果も高く,工夫したり試行錯誤する楽しみも体験してもらえると思います。今のところキット化する計画もありませんが,科学館などでこの工作を実施される場合は,それぞれの事情に合わせて再デザインし,キット作りをしてください。
 参考までに,この作例の材料費は,合計90円ほどです。もちろん,ペットボトルの中身の飲料代は別です(笑)


 星の学習に,遊べる,使える,この1台。あなたも,試しに作ってみませんか?


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