虫のフンのなかみは?
対象年齢:小学校高学年以上。
おとながデモンストレーションするなら,小学校低学年からOK。
☆アルコールを使う実験です。小さい子は,おとなの人といっしょにやりましょう。
イモムシや毛虫。よく観察すると,とってもおもしろい!
イモムシや毛虫は,おもにチョウやガの幼虫。ハチにも,幼虫はイモムシで葉っぱを食べて育つ種類がいます。
イモムシは成虫になるために,たくさん食べてたくさん栄養をとります。
ほとんどのイモムシは,自分の食べる葉っぱの種類が決まっていて,何でも食べるわけではありません。アゲハなら,ミカンの仲間の葉っぱを食べます。おもしろいのは,ミカンの葉っぱを食べている幼虫は,フンもミカンの葉っぱのにおいがして,サンショウを食べている幼虫は,ちゃんとサンショウのにおいのするフンを出します。においは栄養と関係ないのかな? イモムシのフンを水にとかすと,こまかくなった葉っぱの形がわかります。
そこで,イモムシのフンと葉っぱは,どこがちがっているのか,ちょっと観察してみることにしましょう。
【用意するもの】
虫のフンのペーパークロマトグラフを作ってみます。
やりかたは,「紅葉はどんな色?」で使った方法と同じです。
・エチルアルコール。薬屋さんで「エタノール」というのを買ってきます。
「消毒用アルコール」でも,何とかなりますが,「消毒用」は,水が30%入っているので,ちょっと使いにくい。
「無水エタノール」のほうがいいでしょう。
・濾紙(ろし)。薬屋さんで,直径(ちょっけい)9cmぐらいの丸いのを買います。
なければ,コーヒー用のフィルターペーパー(白いもの)を切りひらいて使います。
・スポイト。これも薬屋さんにあります。
・はさみ,またはナイフか包丁(ほうちょう)。
【観察しよう】
まずは,イモムシのフンをさがします。
図鑑で幼虫の「食草」をしらべて,さがしてみましょう。ミカンまたはサンショウの木でアゲハやクロアゲハの幼虫をさがしたり,クチナシの木でオオスカシバの幼虫をさがしたり,ニンジンでキアゲハの幼虫をさがしたり,いろいろ観察してみましょう。
幼虫が見つかったら,フンをひろって,幼虫の食べていた葉っぱもすこし,もらってきます。
さて,ここからは部屋の中での実験。
葉っぱをはさみや包丁で,できるだけこまかくきざみます。
(小さいお子さんは,おとなの人といっしょにやりましょう)
虫のフンも,ほぐしておくと,いいでしょう。
きざんだ葉っぱまたはフンを,濾紙のまんなかに,ちょっとだけのせます。
その上から,スポイトでゆっくり,アルコールを落としてゆき,濾紙にしみこませます。
オオスカシバのフン。スズメガのなかまの幼虫は,でっかいフンをする。
オオスカシバの幼虫が食べていた,クチナシの葉っぱ。
クチナシの葉っぱをきざんで,アルコールをたらしてゆくと,こんな色が出てきます。
いちばん外側の黄色いのががカロチノイド,その内側に葉緑素(ようりょくそ)。
フンをしらべてみます。……葉っぱとちがう色が出てきました。
葉っぱとくらべると,色がちょっとちがうようです。色の出てくる場所も,ちょっとちがいます。
【もう少し観察してみよう】(ちょっとくわしい説明)
うんこは食べ物を消化した残りカス?
……ほんとうは,それだけではないのです。
人や動物のうんこには,消化できなかった食べ物(繊維など)のほか,胃や腸から分泌された消化液とか,胆嚢(たんのう)から出た胆汁(たんじゅう),腸の中の細菌なども入っています。胆汁は,消化を助けるだけでなく,寿命が来て壊れた赤血球の色素の変化したものが胆汁の中に捨てられ,それがさらに腸内の菌によって変化して,うんこの色を作ります。
うんこは,食べたものの残りカスだけではないのです。
ここでは昆虫のフンを使って実験してみました。昆虫,特にイモムシの場合,食べている餌が1種類のことが多く,餌とフンをくらべるのが簡単なのです。昆虫のフンにも,元の餌にはない成分が含まれていることが,こんな単純な実験からも想像できます。
こんな実験をきっかけに,うんこが単純に食べ物の残りカスではないことに気づき,うんこの役割について,調べたり考えたりするきっかけになれば,いいかな,と思います。