● (EISEI.21) ケプラーの法則について (1993年 12月30日)
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下記資料(*1)の JR1SWB/中山氏 の「AO-10の軌道と姿勢制御(1)」、と題する
原稿において、AO-13等の衛星や 一般の天体にも通ずる概念が、わかりやすく
明快に解説されています。以前、この資料をJJ1WTK/坂本氏に紹介され、解説等も
いただきました。
本編(21),(22),(23)において、その基礎部分を資料(*2)を使って私なりに補足して
いきますが、衛星通信‘入門’にしては数式が多く出てきますので、興味の湧かな
い方は読み流してもよいです。
まず、惑星の運動に関する次の有名な「ケプラーの三法則」をあげます。
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
| 1.各惑星は太陽を焦点とする楕円上を動く。 |
| 2.惑星と太陽とを結ぶ線分は等時間に等面積をおおう。 |
| 3.惑星の公転周期の2乗は軌道の半長径の3乗に比例する。|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
我々は、この三法則の中の惑星を「衛星」に、太陽を「地球」という言葉に置き換
えて考えていきます。そうするとケプラーの第1法則から、地球は衛星の楕円軌道
の焦点の一つになります。
楕円の方程式は一般に x2/a2+y2/b2=1(a>b)で、その焦点は2つあり、
その座標は、F'(-ae,0) と F(ae,0) です。ここで、e は離心率を表し、
e=root(a2−b2)/a です。
焦点Fに原点Oを移動すると (x+ae)2/a2+y2/b2=1 となります。
焦点Fに地球があると考え、地球と衛星の距離を r とし、近地点と地球と衛星の
なす角「真近点離角」を φ とし、これを極座標表示すると次のようになります。
(rcosφ+ae)2/a2+(rsinφ)2/b2=1 この式の分母を払って
e2=1−b2/a2 に注意して、rについて整理すると次の式が得られます。
(a2×sin2φ+b2×cos2φ)×r2+2(ab2×e×cosφ)×r−b4=0
この rの二次方程式 の判別式の部分は a2×b4 となるので、rについて解くと
r={−(ab2×e×cosφ)+ab2}/(a2×sin2φ+b2×cos2φ)
が得られ、sinφを消去してさらに式変形をしていくと次の綺麗な式が得られます。
《 r=a(1−e2)/(1+e×cosφ) 》 ... (a)
今、楕円軌道に外接する円を考え、衛星を通って楕円の長径に垂直な直線がこの円
と交わる点を考えます。この点と円の中心と近地点とのなす角を「離心近点離角」
と言い、τ で表すことにします。
ここで、次の関係式が得られることを証明してみましょう。
《 tan(φ/2)=root((1+e)/(1−e))×tan(τ/2) 》 ... (b)
まず、この 円と楕円に関する基礎的な公式から、次の2つの式が得られます。
r×sinφ=a×sinτ×(b/a)=a×sinτ×root(1−e2)
r×cosφ=a×cosτ−ae=a(cosτ−e)
辺々二乗して加えて整理すると、r2=a2(1−e×cosτ)2 すなわち、
r=a(1−e×cosτ) よって、cosτ=(a−r)/(ae) となります。
従って、半角の公式から次の式が得られます。
tan2(τ/2)=(1−cosτ)/(1+cosτ)=...=(ae−a+r)/(ae+a−r)
ところで《(a)》式より、cosφ=(a−ae2−r)/er、同じく半角の公式より
tan2(φ/2)=(1−cosφ)/(1+cosφ)
=...=(er−a+ae2+r)/(er+a−ae2−r)
={(1+e)(ae−a+r)}/{(1−e)(ae+a−r)}
これで《(b)》式が証明されましたが、これは次の式と同値です。
《 φ=2×tan(-1){root((1+e)/(1−e))×tan(τ/2)} 》 ... (b)'
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参考資料 (*1)JAMSAT Newsletter #96('86 5/25) JR1SWB/中山氏 記事
(*2)天文学通論 (鈴木敬信著 地人書館)
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