● (EISEI.22) ケプラーの方程式について (1994年 1月8日)
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前編(21)の 《(b)》式、 tan(φ/2)=root{(1+e)/(1−e)}×tan(τ/2) の両辺を
時間tで微分(合成関数の微分法)すると、
(1/2)sec2(φ/2)×(dφ/dt)=root(〃)×(1/2)sec2(τ/2)×(dτ/dt)
すなわち、
(1/cos2(φ/2))×(dφ/dt)=root(〃)×(1/cos2(τ/2))×(dτ/dt)
さらに半角の公式を用いて、
{(2/(1+cosφ)}×(dφ/dt)=root(〃)×(2/(1+cosτ))×(dτ/dt)
すなわち、
dφ/dt=root(〃)×{(1+cosφ)/(1+cosτ)}(dτ/dt)
という式を得ます。
ところで、衛星の楕円軌道の長半径a、短半径b とすると、楕円の面積は πab で
あり、衛星の周期をPとすると、ケプラーの第2法則から、
(1/2)r2×(dφ/dt)=const.=πab/P となります。
この式に上式を代入すると、
(1/2)r2×root(〃)×{(1+cosφ)/(1+cosτ)}(dτ/dt)=πab/P
ここで前編(21)より、b=a×root(1−e2)、 r=a(1−e×cosτ)、そして
cosφ=a(cosτ−e)/r=(cosτ−e)/(1−e×cosτ) だから、さらに
これらを代入して、
(1−e×cosτ)2×(1−e)(-1)×[{1+(cosτ−e)/(1−e×cosτ)}/(1+cosτ)]
×(dτ/dt)=2π/P
となり、これをさらに変形すると左辺が綺麗に整理されて次の式が得られます。
(1−e×cosτ)×(dτ/dt)=2π/P
両辺を時間tで積分すると、τ−e×sinτ=(2π/P)(t−C) (C:積分定数)
tを衛星が近地点を通過したときからの時間とすると、τ=0 のとき 左辺=0 で、
t=0 ですから C=0 となり、次のようになります。
《 τ−e×sinτ=2π(t/P) 》 ... (c)
以上、本編(21),(22)をまとめて、次の式が得られました。
【r=a(1−e2)/(1+e×cosφ) ... (a) 】
【φ=2×tan(-1)[root{(1+e)/(1−e)}×tan(τ/2)] ... (b)'】
【τ−e×sinτ=2π(t/P) ... (c) 】
この《(c)》式がいわゆる『ケプラーの方程式』と呼ばれる式です。《(c)》式の
右辺の 2π(t/P) が、衛星AO-13などでおなじみの、『MA(平均近点角
Mean Anomaly)』で、時間tに正比例して増加することがわかります。
MAは 0〜2π の間の数値を取りますが、衛星では 0〜255 の間の数値に対応を
させます。たとえば、近地点(τ=0)では MA=0、遠地点(τ=π)では
MA=128、1周(τ=2π)してMA=256 で、すなわち MA=0 に戻ります。
AO-13の周期は 約699.5分 ですから、MAは1時間当たり約22増加します。
理論的には、MAを与えて《(c)》式から τ を求め、その τ を《(b)'》式に
代入して φ を求め、さらに《(a)》式から r を求めることができて、衛星の
具体的な位置を計算することができるのですが、実際には、MAを与えたとき、
《(c)》式から簡単には τ を求めることができません。
数学的には、《(c)》式の近似解を得るためにいろいろな方法が考えられており、
微分改正法,ニュートン法が良いとされています。 (資料(*1)P.8〜83 参照)
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参考資料 (*1)JAMSAT Newsletter #96('86 5/25) JR1SWB/中山氏 記事
(*2)天文学通論 (鈴木敬信著 地人書館)
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