spring is here



光の春に、ついこの前行き会ったばかりだというのに、春一番が吹いて、本当の春がやってきました。

風は力強く、いろいろな匂いを運んで来ます。
それは冬には全然なかった匂い、植物たちの深呼吸、はるか大陸から吹く黄土の、夜に降る雨の、匂いです。

3月がやって来ました。
卒業式のリハーサルにかりだされたブラスバンド部で、講堂のキャットウォークにずっと詰めていた時にも、
先輩の金ボタンが欲しくて何時間も校門で待ち続けていた時にも、
この風は、吹いていました。



春の宵の、おぼろな水蒸気を月がまとう、そんな晩も近いです。
丸一年ぶりで、官女の白い顔と対面します。

春は、花の季節です。とりどりの、様々な、それぞれの花たちからのメッセージで、
空気はにぎやかに歌い始めます。
いよいよ、桜が、満開の出番に備えて、楽屋入りを始めたようです。


やっぱりもう、雪の斜面を滑り降りるより、南の海岸沿いのお花畑へでも花摘みに行きたくなってしまいました。
歌う風の声に耳を澄まし、地面からたちのぼる息吹きに包まれ、日の光を浴びて立ち尽くしていたくなります。
生きていることのよろこびを、長い冬を越えたよろこびを、大声で歌いたくなります。

spring is here、わが春はここに、と訳しましょうか。
新しい季節の到来が、こんなにもうれしいのは、春、だからなのです。


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