「青春小説」創作ノート後半の6

2006年06月

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年始年末は特別篇「スペインの孫2006」です。上の「年始年末」をクリックしてください。
06/01
大学。木曜は第二文学部の日。夜間学部の特質として、学士入学や社会人入学を受け入れているので、昼間の教室より、平均年齢が高い。わたしより年上の人もいる。社会経験があるだけに、書く作品にもリアリティーがあるのだが、材料の負けてしまうケースも少なくない。現実というものは、割合にパターン化している状況が多いので、これは事実だと思って書いても、よくある話になってしまう。そこを突き抜けていくためには、少し目の位置をずらすなど、工夫が必要だ。思いっきり個人的なディテールを入れてみるというのも、一つの工夫である。というようなことを、学生に指導している。

06/02
某有名作家と会食。この人の伝記を書く依頼を受けたのだが、とりあえずは顔合わせをしたいという出版社からの申し出で、本日の会食となった。ご本人にお目にかかると、仕事を引き受けざるを得ないので、いちおうやる気になっている。3時間以上、お話を聞いたので、情報は得られた。書くに値するテーマであるが、細部を煮詰めないといけない。これは秋の仕事。書きかけの「青春U」。主人公の視点に移ったのだが、それでは第二ヒロインの兄の描写ができないので、第二ヒロインの視点で書かれている部分にイメージショットを追加。これで段取りがよくなった。ここからは主人公の視点で押し切っていける。第二ヒロインの父の存在感を出したい。

06/03
酒を飲まない主人公が初めて酒を飲むシーン。暗い人間なので酒を飲まない人物ということにしていたのだが、ずっと飲まないのも寂しいので、ビールを一杯だけ飲むことにした。ビール一杯だけでやめるというのは、大変なセルフコントロールだと思う。野辺山の電波天文台にいる甥が来ているのだが、甥の母(妻の妹)も来ている。ずっと天文台に引きこもっている息子の将来を心配しているようだ。研究者というのは、就職の時期が遅い。そのため大学教授の定年も遅くなっている。文学部でも、大学院、留学、助手、講師、よその大学の講師といった手順を踏んで、運が良ければ専任講師から、時教授、教授ということになる。その間、予備校の講師などのアルバイトをすることもある。しかし甥は理科系で、野辺山にいるので、アルバイトなどはできない。結局、親の負担が大きくなる。気の毒である。それにつけても思うのは、うちの二人の息子がフリーターにもならずに、ちゃんと社会に出ているということを、天に感謝したい。わたしが自分の仕事に専念できるのも、息子たちのおかげである。
ところで、いま書いているこのノートは、もうずいぶん続いている。「空海」のノートが終わってから、「青春小説」というタイトルで始めたのだが、その間、「父親が教える算数」も書いたし、「永遠の放課後(青春小説T)」そして現在の「青春U」と続けてきた。このノートも今月で終わりにしたい。来月からどんなタイトルにするか、まだ考えていないが、とにかくノートのタイトルが変わるのは喜ばしいことだ。

06/04
日曜日。下北沢まで散歩。ビレッジ・バンガードという面白い本屋がハンバーガーの店を出したというので行ってみる。店の前にたたずんでメニューを見ただけだが。三軒茶屋のハンバーガー屋は、しょっぱくてまずかった。減塩を心がけている老人としては、二度と行かないと思った。で、この店はどうかと思うのだが、今度、妻と散歩した時に来てみようと思う。

06/05
文藝家協会の理事会。報告事項が多く疲れる。何事もなし。

06/06
今日は休日。お台場で映画を見る。「嫌われ松子の一生」。面白かった。ヒロインがわたしと同世代である。うへー、と思いながら見る。

06/07
大学。涼しくて気持ちのよい日。「青春U」徐々に山場に近づきつつある。

06/08
大学。夜間の日は、夕方まで仕事ができるので、作業がはかどる気がする。

06/09
雨。夕方散歩。山場の直前まで来る。ここからがこの作品の力仕事が必要な部分だ。本日は金曜だが公用がないので、週末にかけて集中できる。ワールドカップが始まった。わたしはヨーロッパ時間で生活しているので、全部見られる。べつに画面に集中して見ているわけではない。目はパソコンの画面を見ながら、音だけ聞いている。とりあえずわたしの予想をここに書いておく。
ベスト4を考えるために、まずA組1位(以下A1と記す)、B2、C1、D2が入るトーナメントの山を考える。各組、いちばん強い国が1位通過すると考えれば、A1対C1の勝者がこの山で勝ち抜くことになる。具体的にいえばドイツとアルゼンチンということにるのだが、問題は死のリーグといわれるC組で、アルゼンチンが勝てるかということだ。わたしは1位オランダ、2位コートジボワール、3位アルゼンチンと予想する。で、ここはオランダが出てくる。ドイツ対オランダになれば、勝つのはオランダ。よってこの山から出てくるベスト4は「オランダ」
次にE1、F2、G1、H2の山。E組の死のリーグで、イタリア、チェコ、アメリカのどこが1位になっておかしくない。F2は日本なので(と断定する)日本のやりやすい相手を考えるとイタリアかな。チェコはコラーという2メートルのフォワードがいるし、アメリカとは練習試合で3−0で負けている。で、イタリアが相手なら、引き分けにもちこんでPK戦で日本の勝ち。G組はシードはシセが骨折したとはいえフランスだろう。問題はHで、スペインとウクライナのどちらが1位になるか。シェフチェンコのいるウクライナとは当たりたくないという理由で、Hの2位はスペインと見る。フランス対スペインはスペインの勝ち。ということで、日本とスペインが当たることになる。孫が日本とスペインのハーフなので、わたしとしては困った試合になるが、今回のスペインは若手中心で、ここまで勝ち上がると調子がピークになっている。たぶんイタリアが相手でも勝つだろう。ということで、この山は「スペイン」
B1が入っている山は文句なく「イングランド」、もう一つの山は「ブラジル」。そこでベスト4はオランダ、スペイン、イングランド、ブラジルとなる。可能性としては、オランダのかわりにアルゼンチン、スペインのかわりにウクライナまたはイタリアということもあるだろうが、このイタリアのところにチェコが入った場合には最強ではないか。要するに、E組というのは、2位になるとトーナメントでいきなりブラジルと当たるので、何としても1位にならないといけない、まさに「死のリーグ」だ。ここでチェコがイタリアに勝って(アメリカはダメだろう)日本のいる側に回ると、準決勝はオランダ対チェコになる。これが理想の組み合わせ。
結論として、オランダ対チェコ、イングランド対ブラジルというのが準決勝で、優勝はイングランド対ブラジルの勝者だろう。ブラジルは圧倒的に有利だが、わたしはイングランドを応援したい。わたしが応援したい国のベスト5を書く。@日本、Aスペイン、Bイングランド、Cウクライナ、Dコートジボワール。応援はしないが、強そうだと感じられるのはオランダとチェコ。
ここまで書いてから、実際に試合が始まった。ドイツは圧勝。この組の2位と思われたポーランドはエクアドルに負けた。確かにエクアドルは南米予選で強かったが、勝ったのは高地の地元キトーだから、平地のドイツでは勝てないと思っていた。これでポーランドはドイツに勝たないといけなくなった。この組はエクアドルが1位になるかもしれない。

06/10
応援しているコートジボワールがアルゼンチンに負けた。身体能力では圧倒的に勝っていたのに詰めが甘かった。しかしまだオランダに勝てばチャンスはある。しかしこの組はセルビアモンテネグロも強いので、象牙海岸魂(そんなものがあるか?)で頑張らないといけない。

06/11
オランダとセルビアはオランダの勝ち。コートジボワールはオランダに勝たねばならなくなった。もちろんセルビアにも勝つ。それしかない。ところで自分の仕事だが、いよいよ山場の導入部に来た。この作品は1章の終わりに第1の山場があるが、2章に入ってからはやや退屈である。嵐の前の静けさである。その静けさがきわまったところで、突然、不穏な風が吹き渡ることになる。その風が吹くところまでを書いた。ここから山場だが、うーん、明日は飲み会だ。まあ、サッカーがあるから早めに帰るつもりだが、仕事にはならない。週の後半に期待をかけたい。

06/12
目医者。4月のあたまに手術したところを、最初に診断してもらった医者に見てもらう。手術した医者に、まだ完全ではないので微調整が必要だと言われたのだが、確かに微調整が必要だということは間違いない。でも、もう1回手術するのは大変なので、このままでいくことにした。その後、出版社の著作権担当者と飲み会。帰ってサッカーを見る。途中まではリードしていたが、守りきれなかった。うーん、それが人生だ。なかなか思い通りにならない。選手はよくがんばったが、相手もタフだった。イングランドも、オランダも、ポルトガルも、1点を守りきった。点が入るかどうかは偶然が関わってくるのだが、守備は個々の選手のパワーが結集すれば守りきれる。守ろうとした時に守れるというのが実力だろう。

06/13
今日は公用がない。「青春U」。いよいよ山場に突入した。この作品は、穏やかな日常性の中に、突然、カタストロフが侵入するといった仕掛けになっている。そのスリリングな場面がこれから始まる。

06/14
大学。蒸し暑くてやりきれない。作品は山場。サッカーを見ながら頑張っている。予選リーグの1回戦がすべて終了。この時点で強そうなところは、Aはドイツ、Bはイングランド、Cはアルゼンチンとオランダ、Dはポルトガル、Eはチェコとイタリア、Fはもちろんブラジル、Gは韓国、Hはスペイン。で、ここでベスト4の予想。最初の山はドイツと、C組のアルゼンチンとオランダの勝者になる。ドイツは弱いので、アルゼンチンかオランダだが、C組でどちらが1位になるかは、引き分け得失点差になるケースがあるので予測不能。次の山は日本が入るゾーンだが、スペインがウクライナに勝ってしまったので、ここはウクライナとチェコの勝者だろう。ウクライナが意外と弱かったので、ここはチェコか。次の山はイングランドだが、ポルトガル、C組の2位(アルゼンチン、オランダ、コートジボワールにもまだ可能性はある)にもチャンスはある。最後の山はブラジルにスペインが挑む。スペインは地方ごとの結束が強く、国家意識が希薄な国だ。しかし今回は若手の登用で、全員にヤル気がある。スペインを応援したい。決勝戦はチェコ対スペインで、スペインの優勝、という夢を抱いて、テレビ観戦を楽しみたい。

06/15
大学。木曜の夜間の授業、エネルギー切れになることがある。疲れ気味。土曜に講演があるので体調を調えないといけない。

06/16
妻の運転で12時半に出発。富士川で運転を交代して4時に三ヶ日着。夜、四日市にいる次男が来る。誕生日のプレゼントをもらう。抱き枕。嬉しい。次男といっしょにサッカーを見る。

06/17
近江八幡で講演。妻に東海道線の鷲津まで送ってもらう。豊橋でひかりに乗り換え、米原から各駅停車。講演は久しぶりに老人問題。帰りは各駅停車、ひかり、こだま、各駅停車と乗り継いで、六時に鷲津着。鷲津のイタリア料理店で食事。疲れたのでサッカーは見ずに寝る。あとで結果だけチェックしたのだが、G組はえらいことになっている。チェコがガーナに負け、イタリアとアメリカが引き分けたので、どのチームにも予選突破のチャンスがある。アメリカ以外は勝てば予選突破だ。アメリカは勝っても、チェコがイタリアに勝つと、イタリアとの得失点差になる。イタリアは引き分けでもオーケー。二試合とも引き分けだとチェコとガーナの得失点差だが、これはチェコの勝ち。しかし、アメリカがガーナに大勝すると、得失点差で負ける可能性があるので、チェコは勝たないといけない。ガーナは引き分けでは苦しいので勝ちにいくだろう。意欲の点で、ガーナとチェコが勝つのではないか。

06/18
誕生日だ。58歳になった。とくに感慨もない。豊橋で妻と食事。朝からひたすらパソコンを叩いていた。山場が終わった。というか、一番スリリングな山場が終わって、あとはエンディングに向けての、もう一つの大きな山場があるだけだ。しかしこのシーンが、全体を通じての最難関ということができる。主人公の出番は終わった。この最後の山場は、女二人の対話になる。ここからが、本当の山場だ。ここをどうするかは、何も考えていない。女が女を説得し、論破する。短いが密度のある議論小説が展開される。ここまで、ある程度はセンチメンタルに書いてきた。読者にシンパシーをもってもらいたいので、議論めいたものは避けてきた。このシーンも、議論にはしたくない。表面上は感性で台詞が展開され、その奥に、思想がある、というものにしたい。ちょうどこの山場まで来たので、本日は作業はここまで。あとはサッカーを見ながら寝酒を飲んで寝ることにする。
いま日本のゲームが終わった。劣勢だったが、よくがんばった。引き分けは仕方がない。あのオーストラリア戦、最後の数分をがんばって勝っていればと思う。しかしたとえオーストラリアに勝っていても、クロアチアがオーストラリアに大勝すれば、結果は同じことだ。そう思って自らを慰めたい。オーストラリアはブラジル相手に善戦している。もしこのゲームが引き分けなら、あるいはオーストラリアが大敗すれば、さらにはオーストラリアが勝ったらと、いろんな条件を考えたが、結局はブラジルの勝ち。これで日本はオーストラリアが負けるか引き分けたとしても、ブラジルに3点差以上で勝たないとだめということになった。まあ、気が楽になった。すでにわたしが応援しているコートジボワールも負けたので、スペインにがんばってほしい。ところで、酒を飲んで寝るつもりだったが、頭が冴えているので、ブラジルの試合を見ながら、ワープロを打ち続けている。第二ヒロインの視点で書くエンディングの部分がスタートした。文体を確認するために、第2章の冒頭の第二ヒロインが視点になっている部分を読み返し、若干の修正をした。それからいよいよエンディングに突入。女と女の対決のシーンの導入部まで。これでもう主人公は登場しない。まったく変な小説だ。というか、野心的な構成の作品というべきだろう。いい感じでここまで来ている。

6/19
朝少し仕事。エンディングの山場、どんどん書ける。あまり調子が出すぎると心配なので、仕事場からの帰り、御殿場のアウトレットに寄る。妻が買い物をしている間、ぼうっとしている。いい休養になった。本日からまた三宿での日常が始まる。

6/20
文化庁の会議。IPマルチキャスト放送について。文芸家の場合は、ドラマの原作等で関わるだけなので、大した問題ではない。何も発言せず弁当を食べて帰ってきた。「父親が教えるツルカメ算」(いつのまにかタイトルが変わっている)の最終ゲラが届く。本日はひたすらこれに取り組む。明け方のイングランド対スウェーデン戦まで起きていられるか。明日は大学なので、寝不足になりそうだ。

6/21
大学。歴史に沿って話していくと、いくらでも話題があるのだが、間に夏休みが入るので、前期のまとめみたいなことを話さなければならない。ということで、話ながらまとめの方向に行かなければならず、いつもより頭を使ったので疲れた。妻と都庁で待ち合わせをしていたので、大学から大江戸線の若松河田まで歩く。意外と近かった。都庁で申請していたパスポートを受け取る。今年の正月、スペインに行ったあとで切れていた。すぐにどこへ行くというあてはないが、緊急の場合もあるので、とりあえず申請しておいた。10年後まで生きているかどうかはわからないが。明け方、ウォッカを飲んで景気をつけると、山場を通り過ぎた気がした。あとはほんとのエンディング、まとめのシーンを書くだけだ。

6/22
文藝家協会で映像ソフト協会と協議。この件は映像原作委員長の浅田次郎さんに任せたので、こちらはオブザーバー。まだ結論に到らず。夜は大学。著作権の仕事から大学に向かう時は気持ちの切り替えが必要で疲れる。いつものように妻が迎えに来てくれる。サッカーのE組はどの国にも決勝トーナメント進出のチャンスがあるので面白かった。イタリアのしだいに調子を上げてきた。ガーナも強い。前評判の高かったチェコは長身フォワードのコラーの欠場が響いた。アメリカも意外に弱かった。練習試合で日本に3−0で勝ったチームだ。日本がもっと弱かったということか。
F組もどのチームにも可能性はあったが、ブラジルに2点差で勝つのは難しい。たらればの話だが、オーストラリア戦の最後の10分間を守り抜いていればと思う。そうするとオーストラリアはモチベーションが切れて、最終戦はクロアチアが大勝していただろう。日本はブラジルと引き分けるしかない状況だが、それで1点とって守りに守るということだと、後半まで楽しみが持続したかもしれないが、結局は力が尽きていたかなと思う。後半は画面を見るのがつらくなったので仕事をした。するといつの間にか、「青春U」の草稿が完了した。「生きるために大切なこと」(仮題)という作品だ。これは数日、放っておいてから、プリントして読み返すことにする。で、試しに次の仕事に取り組んでみる。「星の王子さま」の翻訳。子供向けなので、文体が勝負だ。1ページほどやってみたが、いい感じだ。楽しめそうな仕事だ。

6/23
三島・山本賞のパーティー。この種のパーティーはあまり出ないのだが、山本賞の宇月原くんは、『早稲田文学』のかつての学生編集者なので、ひとこと、お祝いを述べに行った。いろんな人に挨拶したが、考えてみると著作権関係の人の方が多い。それでも新潮新書の編集長など、当面の仕事の関係者にも挨拶できたのでよかった。

6/24
土曜日。ひたすら「星の王子さま」の翻訳。翻訳というの右から左へ言葉をうつしかえていくだけの作業だから、パソコンをかかえている時間だけ、仕事ができていく。楽な仕事だなあ。もちろん、わからない言葉や表現が出てくれば、そこで行き詰まることになるので、専門の翻訳家の人は大変だと思う。わたしがやっているのは童話だし、訳本もたくさん出ている。ただ小学生向けの文庫という制約があるので、難しい言葉を使えないという縛りがあるのだが、だから大胆に割り切って、わかりやすさに徹することも可能だし、そこに象徴的な意味合いをこめることもできる。このあたりはすでに「星の王子さまの恋愛論」で一度、考えたことなので、問題はない。
ということで、創作ノートにもならないので、本日はサッカーのことを書く。日本が敗退したので、これからは純粋にサッカーを楽しむことができる。トーナメントのベスト16が出そろったわけだが、意外に番狂わせがなかった。4年前は、ヨーロッパのチームにとっては長旅だし、調整不足の選手が多く、強豪チームがコロッと負けることがあった。今回はヨーロッパなので、実力のあるチームがそれなりに力を出している。この16チームを見て、予想外だったのは、エクアドル、ガーナ、オーストラリアの3チームだけだ。
それにしてもエクアドルは、南米予選ではブラジル、アルゼンチンにも善戦していた。何しろ地元のキトーでは負けなしだったのだ。ただしここは高地なので、地元選手が有利だといわれていた。しかし平地のドイツでも、ポーランドに圧勝した。やっぱり強いチームだった。ガーナは何年か前のユースで準優勝した若手が主力ということで、ある程度、期待はされていたが、イタリア、チェコ、アメリカのいる「死のリーグ」なので、ビリだろうと思っていたのだが、アメリカが不調、チェコも2メートルのコラーがダウンしたらチームががたがたになった。とにかくガーナが強いことは間違いない。あとはオーストラリアだが、ここは1強3弱で、日本にもチャンスがあると言われていた。実際に、あと10分ほどもちこたえていれば、日本にも勝つか引き分けるチャンスがあった。気の毒なのはクロアチアで、オーストラリアとは優勢だったのに引き分け、日本ともかなり優勢だったのに引き分けた。それで、日本がオーストラリアに負けたせいで、クロアチアも敗退ということになった。実力はクロアチアが一番(もちろんブラジルをべつとすればということだが)だったのではないか。ということで、ラッキーだったのはオーストラリアだけで、あとは順当と見ていいだろう。
三田誠広の予想。ベスト8は、ドイツ、アルゼンチン、イタリア、ウクライナ、イングランド、オランダ(ここはポルトガルも強い)、ブラジル、スペイン。ベスト4はアルゼンチン、イタリア、イングランド、ブラジル(スペインに勝ってほしいが)。決勝戦はアルゼンチンとブラジルということになれば、すごい盛り上がりになるだろう。前回大会みたいに、トルコや韓国が入り込む余地はない。ただヒディングの神がかり的な采配で、オーストラリアがイタリアに勝つ可能性はある。すると勢いでウクライナとスイスの勝者も撃破するだろう。ラッキーなことに、このゾーンは、八百長問題で揺れるイタリアを含めて、圧倒的に有利なチームがない。オーストラリアがダークホースになる可能性はあるが、わたしとしては、シェフチェンコのいるウクライナにがんばってほしい。いずれにしても、決勝戦に出るのはドイツとアルゼンチンの勝者だろう。もう一方のゾーンは、イングランドとブラジルの勝者ということになるが、準々決勝でスペインがブラジルに勝つことを期待したい。これは孫がスペインにいるということのほかに、若手中心にきりかえたスペインの動きが、かなりいいと見えるからだ。まずいのは、日本がデブのロナウドを調子に乗せてしまった。しかしブラジルはその前にガーナの挑戦も受けなければならない。負傷者が出たり、疲労が残るようだと、ラウールが控えメンバーだというスペインにもチャンスがある。
などとどうでもいいことを書いているが、「青春U」はどうなったと、担当者は心配しているだろう。実は、読み返すのがコワイので、まだプリントもしていない。心を静めてから、決意をして読み返したい。少し時間をあけて、頭を白紙にして、読者の立場で読むという意味合いもある。読者に伝わるかどうかが最大のポイントだから、何を書いたか忘れてしまうくらい時間をあけたい。だが、実際に、もう何を書いたか忘れてしまっている。頭の中は、「星の王子さま」(とサッカー)でいっぱいだ。空白期間をとるにはいい状態だと思う。
いま明け方。ドイツは強かった。イングランドが引き分けたスウェーデンに圧勝。アルゼンチンはメキシコに苦戦。そのメキシコに勝ったポルトガルは意外に強いのではないか。

06/25
日曜。漢方の診察を受けにきていた義父を羽田まで送っていく。それからビアホールでのんびりビールでもと思っていたのだが、すごい人込みなので、空弁を買って帰る。まだ翻訳を続けているが、そろそろ「青春U」を読み返してみたいという気分になってきた。

06/26
昨日の夕方は、軽くビールを飲んで仮眠。夜中に起きてテレビを見る。ベッカムの芸術的フリーキックに間に合った。ひたすら翻訳。頭がフランス語になる。明け方のポルトガル対オランダ。まるで異種格闘技のような肉弾戦。ポルトガルはかったが司令塔のデコがレッドカードでイングランド戦に出られない。イングランドを応援しているわたしとしては、それでよし。オランダは卑怯なチームだった。まるでプロレスの悪役みたいに、アンフェアなことばかりする。そのまま午前中の会議へ。神楽坂の書協まで妻に送ってもらう。午後は代々木八幡のジャスラックでまた会議。終わってから三宿まで歩いたが、30分もかからなかった。寝不足で半分死んでいたのだが、汗をかいて歩くと元気になった。今夜の夕食のあとに仮眠して、スペイン戦にそなえる。書協での会議、少し早くついたので、「青春U」のプリントを少し読む。出だしの文体、パーフェクトだ。どんどん読みたくなる作品である。
イタリアは後半、一人少なくなったのに、オーストリアの猛攻に耐えた。まだ暑い時間である。それでロスタイム1秒残しで、わざと倒れてPKを得た。ウクライナはPK戦でシェフチェンコがはずしたのに、その次からの全員が落ち着いていた。スイスは真ん中めがけて蹴ったのがアダになった。PKではキーパーは右すみか左すみか、どちらかをめがけて飛ぶものだ。スイスのキーパーがそれでシェフチェンコを止めたのが頭にあったのだろう。真ん中に蹴ればキーパーがどちらに飛んでも入ると思ったのだろうが、ウクライナのキーパーは飛ぶと見せて、重心をまんなかに残していたので、ことごとく止めることができた。PK戦で全滅というのは珍しい。

06/27
会議一件。軽い散歩のようなものだが、暑かった。シャワーを浴びて、「青春U」を読み返す。3ページ目くらいで、つまずいた。書き始めた時と、書き終えた時とで、この作品に取り組むこちらの姿勢が少し変わっているので、やはり出だしのところ、ムード、テンポともにいいのだが、細かいところでは調整が必要だ。けっこう大変な作業になるという予感。

06/28
わー、スペインが負けてしまった。フランスが突然、強くなった。スペイン、韓国と引き分けて2位になったフランスだ。そのスイスとウクライナはPK戦でウクライナが勝ったのだが、そのウクライナにスペインは4対0の圧勝だった。どういうことだ。これで、当初、わたしが応援すると宣言した5チームのうち、3チームが敗退してしまった。残るのはイングランドとウクライナ。さて、ベストエイトが出そろったが、番狂わせはフランスとポルトガル。しかしもともと実力のあるチームだ。スペイン、オランダがまさかの敗退。ガーナはボールを支配していたのに点が入らず、ブラジルの逆襲にあって3対0の負け。結果だけ見ると完敗みたいだが、動きだけ見ているとガーナの方が上みたいだった。そこがサッカーの面白いとこる。オーストラリアもイタリアを圧倒していたのに負けてしまった。さて、今夜から明け方にかけて、本日はサッカーが休みだ。ワールドカップが始まる前、この時間、何をしていたのか記憶がない。ぼんやりとテレビのチャンネルをいじっていると、「イルマーレ」という韓国映画をやっていた。タイムパラドックスの話で、頭が混乱したが、女の子が魅力的だった。それにしても、本日は猛暑。いよいよ夏が来たかという感じだが、まだクーラーはつけないぞ。

06/29
大学。暑い。暑い。でも、学生が熱心に質問してくれるので、元気です。「空海」の8版が届いた。空海も元気だ。

06/30
今月も終わりだ。この「青春小説」というタイトルのノートは、本日で終了する。次のタイトルは、この時点では考えていないが、とりあえず7月と8月は、「夏休み孫日記」になるのではないか。9月からは、できれば「日蓮」のノートを始めたい。しかし実際には、「青春U」はまだ草稿の段階だし、出だしのところを読み返しながら、もっと緊張感が必要だと考えている。ストーリーはこれでいいので、主人公とヒロインの断片的な会話を挿入していけばいいと思う。神経症的な要素をもっと加えないと、スリルが出てこない。孫が来るのは7月の後半なので、それまでにこの暗い小説は完成させてしまいたい。「星の王子さま」の翻訳は、すごいスピードで進んでいる。問題は何もない。「青春U」のチェックを並行させているのと、7月の1週、2週と、第二文学部の学生の宿題を読まなければならないので時間をとられるが、とにかく作業にあたればすらすらと文章が書けるので、翻訳というのは楽な商売だ。もちろん、まったくの新訳だと、意味不明の箇所にぶつかる度に、思い迷うことになるのだろうが、「星の王子さま」は既訳がある。むしろ既訳を見てしまうと、同じ訳ができないので、なるべく見ないようにしている。例えば、「涙の国」という箇所について、内藤さんと池沢さんの訳を参照するといったことはする。お二人は「涙の国」と訳している。わたしがやろうとしているのは、小学生高学年を読者に想定する児童向きの文庫なので、「涙の国」にはしない。というような作業は、たぶん7月中に終わるだろう。8月、9月に、それぞれ一本ずつ、新書ふうの仕事を予定している。それから「日蓮」ということになるのだが、その前に某有名作家の伝記という仕事がある。これは編集者任せでスタートするしかない。どれだけ情報が得られるかを見て、作業の進め具合を考える。ということで、「孫日記」は9月まで延ばすかもしれない。
いまこれを書いているのは夕方である。夜中にサッカーの準々決勝がある。そこでぎりぎりの時点での予想。ドイツとアルゼンチン。どちらはW杯が始まるまでは、歴史はあるが今年のチームはどうかといわれていた(少なくともわたしはそう思っていた)。とくにドイツは、練習で日本と引き分けたりしたので、ダメではないかと思っていたのだが、予選に入ってから急速に調子を上げていった。しかし、弱いところと当たってきたということを考慮しないといけない。一方、アルゼンチンは「死のリーグ」を一位で突破した。とはいえ、予選でアンゴラに引き分けたメキシコに辛勝した試合は、何だかなあ、という感じであって、ここは調子を上げつつあるドイツに分が出てきたというべきだろう。
イタリアとウクライナも、運でここまで来た。運でいえば、PK戦を制したウクライナが上り調子か。結論、準決勝はドイツ対ウクライナ。これは勢いを重視した見方で、本来の実力からすればアルゼンチンとイタリアだろう。結局のところ、ようわからん、というしかないので、とりあえず、ドイツとウクライナを応援したい、といっておく。明日の試合は、ポルトガルのデコが出られないのでイングランドの勝ち。ブラジルとフランスは、ブラジルの方が強いのはわかっているが、フランスを応援したい。で、こちらの準決勝は、イングランドとフランス。わたしは最初からイングランドを応援していたのだが、判官贔屓的な気分でいうと、ポルトガルにもがんばってほしい。
いま明け方。サッカーの結果がわかった。ドイツのPK戦勝利は順当。ウクライナは終始責め続けたのだがイタリアの速攻で結果としては惨敗。ドイツ対イタリアの準決勝、「カギをかける」といわれるイタリアの守備はかたいが、ドイツの守備もかたい。PK戦でドイツの勝ちか。


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