「カラマーゾフ」創作ノート19

2014年7月

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07/01/火
7月になった。火曜日なので朝1限の授業。本日は能楽資料センターの会議。去年はセンター長だったのだが、今年はただの委員なので気持が軽い。自宅に戻って入力作業。夜中、アルゼンチンとスイスは好ゲームになると思ってリアルタイムで見ていた。PK戦を期待していたのだが、延長終了間際にメッシのアシストで決勝点。試合中はテレビの画面は見ずに学生の宿題を見る。いよいよこの季節がやってきた。

07/02/水
授業はないが学部長会議。あとは入力作業。電車の中でメモしたものの中にはやたらと重複が多いものがあるのでどんどんカットしていく。ある時期、電車の中でしか仕事ができなかった。大丈夫かなと思うが、とにかく入力してプリントしたものをチェックしたい。サッカーはベスト8が出揃った。各リーグの1位が順当に勝ち残ったが、延長が5試合あるなど接戦が多かった。しかし強いチームが競り勝つという当然の結果になった。ヨーロッパのゲルマン系が4チーム、中南米のラテン系が4チーム。このうち、ラテン対決はブラジル対コロンビア、ゲルマン対決がフランス対ドイツ。残り2試合はゲルマン対ラテンの対決。地元のラテン勢が有利だろうが、わたしはオランダとベルギーが勝ち残ると思っている。ゲルマン対決はフランスが昇り調子。ベスト4はゲルマン3チームとブラジルということになるのではないか。準決勝がブラジル対フランスになれば、フランス大会の決勝戦と同じだが、ここはブラジルだからブラジルが勝つだろう。ブラジルが危ないとすればコロンビア戦だ。コロンビアには勢いがある。予選が弱いリーグだったのであまり疲れていないように見える。これはベルギーについてもいえる。決勝戦がコロンビア対ベルギーになったりすると愉しいのだが、まあ、順当ならブラジル対オランダだろう。これは見応えのある試合になる。わたしはしかし、コロンビアとベルギーを応援したい。

07/03/木
3年ゼミは学生のプレゼンテーション。皆、しっかりと自分の作品について語ることができる。先週、プレゼンテーションの大切さを話したので、効果が出たようだ。4年ゼミは参加者1人。内定が決まったそうで、その会社について雑談。大学院のゼミは佐多稲子を読む。3コマ終わるとほっとする。自宅で入力作業。アリョーシャとイワンの対話がようやく終わった。これでいいのかという疑問はつねに残るのだが、先に進むしかない。 07/04/金
この週末も仕事が入っていないので本日から3連休だが、羽田プロジェクトの会議がある。1967年に羽田弁天橋で亡くなった山崎博昭くんを追悼して、記念碑と記念文集を作ろうというプロジェクト。大阪府立大手前高校の同窓生が中心となって、数ヵ月前から会議を開いている。本日は公式スタートの日。われわれの呼びかけに応じて発起人に加わっていただいた方との顔合わせだが、結局、大手前関係者が中心になることは以前と同じ。蒲田の会議室で打ち合わせをしたあと、近所の飲み屋で二次会。詩人佐々木幹朗の地元の大森で三次会。同窓生4人で深夜まで飲んだ。ちころで本日いただいた資料の中に、山崎くんの日記に書かれたメモのようなものが採録されていた。いまから47年前、18歳だったわたしは、週刊誌か何かに掲載されたその文章を確かに読んだ記憶がある。『小説を書こうと思う。犯罪論的なもの。無限の想像力。「罪と罰」の現代的意義。地球上に生を受けて、十八年と十ヶ月私はは一体何をして生きて来たのだ。現在にすら責任をもたず、未来に対する責任もなく、ひたすら懐疑と無関心の間を揺れ動き他人の言葉で自己弁護する。この私は一体誰だ。』この文章を読んだ18歳のわたしは、自分と同じことを考えている若者がいて、彼はもはや「小説を書く」という夢を実現することができないのだということを、重く受け止めないといけないと考えていた。だからどうするということではないのだが、わたしも、ドストエフスキーのような小説を書くということを、自分に課して、ここまで生きてきた気がする。結局のところ、ドストエフスキーのような小説を(日本を舞台にして)書くことはできなかったが、いまわたしは「罪と罰の現在的意義」については『新釈罪と罰』を書き、いまは『カラマーゾフの兄弟』の続篇を書こうとしている。10月には、山崎君追悼の50年の節目に向けて、あと3年の決起集会を開くことになっているのだが、それまでにこの仕事を完成させたいと願っている。

07/05/土
夜中にドイツ対フランスを見て、仮眠してからブラジル対コロンビアを見る。ブラジルが2点目を入れたので、また寝た。従ってネイマールが負傷するところは見ていない。脊椎を損傷するというのは致命的な怪我ではないか。優勝候補だったブラジルが一気に暗転した。ロドリゲスがPKで1点入れたので、2点差をつけて単独首位になった。ネイマールはもう出られない。ドイツはあと2試合、アルゼンチンは勝てば準々決勝を含めて3試合あるが、ベルギーに負けそうな気がする。オランダの2人がコスタリカ相手に大量点を入れそうな気もするが、ロドリゲスがこのまま得点王になるのかもしれない。そのうちの1点は日本戦なので、これから何度もそのシーンが再現されるのではないか。ヴェーラ・フィグネルが出てくるシーン、出だしを入力したのだが、何かが足りない。彼女の個性が出ていない。『新釈悪霊』を読み返してみようと思う。

07/06/日
アルゼンチンは偶然のチャンスで入れた1点を守り切った。終盤、ベルギーの怒濤の攻撃を必死で守り抜いた。アルゼンチンはオフサイドトラップをかけるのが巧妙で、ベルギーの選手は何どもひっかかった。先に点を取られて気持にあせりがあったのだろう。コスタリカはオランドの攻撃をついに無得点に凌いだ。PK戦になればナバスという超能力をもったキーパーのいるコスタリカにチャンスがあると思えたのだが、オランダの監督は交代枠を一つ残して、ぎりぎりでキーパーを交替させた。PK戦だけのためのキーパーを用意していたのだ。これはW杯の歴史でも初めてのことだろう。そして交替したキーパーが2本も止めてオランダに勝利をもたらした。そして、準決勝はブラジル対ドイツ、アルゼンチン対オランダになった。南米ラテン系とヨーロッパのゲルマン系の闘いとなった。ドイツとオランダが勝つような気がする。南米の地でゲルマン系同士の決勝というのも前代未聞だろう。さて、入力作業。ヴェーラ・フィグネルの登場で少し作業が滞っている。『新釈悪霊』では少女のヴェーラ・フィグネルが登場する。ヴェーラ・フィグネルは実在の女性革命家だ。残された写真を見る限りすごい美人だ。本当はその美人を『悪霊』に登場させたかったのだが、実在の人物なので年齢をごまかすわけにはてかない。それで中学生になってしまったが、かえって効果的だった。生意気な女子中学生が主人公とからむくだりは楽しいものになった。その女子中学生が今度は大人になって登場するのだが、中学生の時と、がらっと変わった印象になった方がいいのではないかと考え顔した。昨日、『悪霊』を読み返してみてそう思った。ということで、これでイメージが決まったので先に進めそうだ。

07/07/月
1限は構造主義、2限は白河天皇、この2コマ連続の重い講義の時間はあと3回ということになった。正確に言うと、実はあと1回だ。21日の海の日は大学の授業はあるのだが寄付講座はお休み。この日で1限の講座はおしまいになる。寄付講座はさらに2回あるのだが、とにかく2コマ連続となるのは来週が最後だ。来週は1限が南米文学、2限が保元の乱。このテーマを連続で話すのは、かなりのプレッシャーだ。さて、3・4限はアキ時間なのだが、学生のレポートで時間を費やした。5限は学科会。月曜日はいつも疲れる。

07/08/火
2限のあとしばらく研究室で雑務。それから文藝家協会へ。評議員会と常務理事会。自宅に帰って少しだけ入力作業。すでに入力した部分に不備が見つかったので修復。アリョーシャの父親に対する見解が甘かった。もっと追い詰めないといけない。

07/09/水
隔週の学部長会議は今日はないのだが、別の会議がある。中国からの編入学希望者の書類選考。今年度から入試委員が中国人の漢文の先生などで、的確なアドバイスが得られる。15分で会議はおしまい。この15分のために往復1時間ずつの通勤。しかし電車の中でメモがとれた。アリョーシャの教団は《黒よもぎ団》というのだが、チェルノブイリを意識している言うまでもない。『黙示録』に出てくる悪魔の星が落下する地名だ。星の落下で河と水源が《毒の水》で汚染される。この《毒の水》についてアリョーシャとコーリャが議論する場面を追加。どこに入れるかはこれから考えることとして、とにかくメモを書いていく。このメモの追加で、作品のスケールが倍くらいになる。ところで、15分の会議を終えて帰宅して、パソコンでメールを取ろうとするとネットにつながらなかった。妻がアイパッドをもっているのでネットにつながるか確認したのだが、さっきまでつながっていたのにいまはダメとのこと。ネットというものは、時々つながらなくなる。原因はわからない。昨年転居したこのマンションは、玄関横のクロゼットの上の配電盤の奥にルーターがある。そこから各部屋に配線があって、わたしのパソコンは配線にコードを差し込んで使っている。妻のパソコンも有線だが、アイパッドとアイポッド(ラインが入っている)のために無線ルーターも設置してある。これは次男の嫁さんが設置してくれたもの。この嫁さんは父親がシステムエンジニアで、IT機器に強いので助かっている。無線ルーターだけの問題なら電源を一度抜けばいいのだが、有線がつながらないということは、クロゼットの本体を初期化しなければならない。クロゼットには荷物が詰まっているのでこれが一苦労の作業になる。とにかく初期化に成功。このマンションに引っ越して1年と2ヵ月ほどだが、これで3回目の初期化だ。これであとしばらくはもってくれるだろう。

07/10/木
台風が近づいているようだが、雨が降っていないので、近所の医者に行く。月に一度の町医者通いだ。薬をもらう。べつにこれがなくては生きていけないという薬ではないが、もう老人だから、薬の世話になって生きていくことになる。大学3コマ。木曜日は疲れるが、4年ゼミの学生から就職が決まったという報告を受けると嬉しくなる。小説家ではメシは食えない。このわたしでさえ、大学卒業後4年ほどサラリーマンをしていたのだし、その期間に多くのことを学んだ。ずっと作家しかやってこなかった人や、研究しかやってこなかった大学教授とは違う。お金の稼ぎ方を知っている。これはとても大切なことだ。だから学生たちには、とにかく就職しようと語りかけている。社会から学ぶことは多い。給料を貰って学ぶこともできるのだから、とりあえず2年でも3年でもいいから、労働というものを体験した方がいい。たとえブラック企業でも、体験したことは必ず役に立つ。定年まで働く必要はない。勉強のために、短期間、学ばせてもらうというくらいのスタンスでいいのだ。さて、明日からは3連休。このところ週末の仕事がないのでありがたい。入力作業が遅れているので、ここで一気にゴールに迫りたい。ヴェーラ・フィグネルについて、あまりしゃべり過ぎるとイメージが壊れるので、ほとんどしゃべらせないことにした。もうエピローグに入っているので、テンポを上げてゴールを目指した方がいい。テンポを加速したい。昨日思いついた《毒の水》については早い段階で伏線を入れることにした。そして本格的な語るところはこれから入力する部分で展開すればいい。そうすれば大幅な直しをせずに先に進むことができる。

07/11/金
本日から3連休。ひたすら入力。台風一過の猛暑。自宅は密閉されたマンションなのでエアコンを入れれば快適で、入力作業に支障はない。ヴェーラ・フィグネルとアリョーシャの対話。メモには新しい着想がわいてきて、いい感じに仕上がった。久々に気分がいい。このヴェーラ・フィグネルをここに出したのは、わたしが書いた『新釈悪霊』とこの作品とをつなぐためで、ニコライ・スタヴローギンとアリョーシャが似ているということを発言させるためだ。そのセリフはメモで書いてあるので、明日はその部分を入力すればいい。まだ巡礼の途中の独白とか、最後の演説とか、山場はいくつかあるし、皇帝暗殺のシーンはメモも書かずに最後にとってあるのだが、とにかく一つ一つ、入力作業を終えて、パソコンの中に言葉を封入していく。すごい作業をしているなという気はするが、わたし一人だけが楽しんでいるだけのことなのだ。一人で楽しめるということは、とても幸福なことだと思うし、とにかく編集者がいて本を出してくれるということは、もっとすごいことだ。

07/12/土
昨日は入力作業に集中していたので、明け方の4時までキーボードを叩いていた。そろそろ寝ないといけないと思いベッドに入った途端、天井や壁がギシギシと軋み始めた。悪い夢でも見ているのかと思ったが、何となく船酔いのような感じになってきた。台風は去ったはずなので風ではない。これは地震かと思った。妻も目を覚ましたのでリビングに行ってテレビを点けた。震度3程度の地震だったが、テレビを見ている時もまだゆっくりと部屋全体がスイングしていた。わたしの部屋は高層住宅の中ほどにあるのだが、地震の振動数と、部屋の位置がシンクロして、揺れが大きかったのかもしれない。昨年の4月に転居してから、何度か地震は体験しているのだが、今回のが一番はっきりと体に感じた地震だった。まあ、ものが落ちるというほどではないのだが、ゆったりとスイングするという高層住宅の揺れを初めて体験した気がした。さて、本日はマッサージのために新宿に行った以外はひたすら仕事。イーブックジャパンの連載を片づけた。月に2回の締切なのですぐに締切が来る感じだ。このネットのサイトでは、読者の作品の指導もしている。大学での指導の延長みたいなもので、このサイトに学生たちの作品を出してもらっているので、サービスでやっている。今週は学生の作品が少ない。まだ前期なので、こんなものか。2年ゼミのクラスは、3年になる時に人数を減らすので、後期の10月くらいに作品提出のピークが来る。学生はなかなかいいものを書く。レベルは毎年高くなっていくと感じられる。高校生の作品を募集するなど、大学の知名度を上げる努力をしているので、年ごとにいい学生が集まってくるのではないかと期待している。

07/13/日
本日から妻がいない。妻がいないと仕事ははかどるのだが、不便ではある。本日は外食。明日に備えて早めに寝る。

07/14/月
早朝4時に起きてサッカーを見る。アルゼンチンはよく守った。1日休みが多いドイツの方が後半は疲れていた。しかしドイツは交替選手の活躍で延長終了直前に決勝点を挙げた。ドイツの層が厚かったということだろう。ドイツのパスサッカーは傑出していた。まるでスペインのようにバスをするのに、スペインにはない縦に切れ込むパワーがあった。決勝戦はいい試合だった。4年前のスペイン対オランダ戦に匹敵する充実した決勝戦だった。いつもより30分早く家を出て大学に向かったが、けっこう混んでいた。マンションのエレベータが混んでいた。遠くの学校に通う高校生がいるのだ。1限は南米文学、2限は保元の乱。これで1限と2限の連続は修了。来週は2限が祭日で休み。大学はあるので1限の最終授業となる。それ以後は2限だけが2回残っているが、とにかく2コマ連続の授業はこれで終わった。3限は講演会の最初の挨拶という役目があった。無事に終わる。学科会はいつもより長びいた。やれやれ。4限の空き時間に25ページぶんプリント。自宅に帰ってチェック。エンディングに近くなり息切れしてパワーが落ちているのではないかと心配したが、むしろ密度が上がっている。ここに盛り上がりがあるというのは、作品がさらにパワーアップしたことになる。深夜に近く、妻が四日市から帰ってきた。次男の嫁さんの手助けに行っていたのだ。

07/15/火
1限のあと研究室に戻らずに自宅に戻りひたすら入力作業。夕方、ひさしぶりにペンクラブへ。ペンの理事会は議論が白熱するからおもしろい。深夜まで入力作業。メモにはなかったが、巡礼が出発する日に雪を降らすことにした。いいシーンになる。

07/16/水
学部長会議。これだけのために大学まで往復する。あとは入力作業。かなり進んだ。メモがない領域に入ってきた。重要なセリフなどはメモがあるのだが、巡礼団の旅程に従う部分はメモがない。いきなりパソコンに打ち込んでいく。淡々と作業を進めるばかりだ。

07/17/木
大学。3年ゼミは次回は研究室でやることにして、教室での最後の授業。まあ、必要なことは話せた。3年生は少しダレているかな。4年ゼミは出席者2人。まだ半数以上が就活中。それでも去年のいまごろはほぼ全員が決まっていなかったが、今年は銀行、郵便局、信用金庫などに決まった学生がいるので、順調な状況といえる。昔、早稲田で教えていた時、卒論を見た全員がフリーターになったことがあった。それにくらべれば武蔵野大学の学生諸君は人生に対して意欲的だ。本日は大学院ゼミは飲み会とする。総勢6人のところ、2年生と卒業生が加わり、8人で近所の店へ。全員、個性的な人物で白熱した飲み会になった。

07/18/金
文藝家協会で出版社との話し合い。定期的に続けている会議。著作権法改正について出版社側からの説明があった。終わって岳真也さんとソバ屋に行ったら他のメンバーもずらっといた。岳さんと個人的な話がしたかったので隣の席で話をする。ここのハイボールは、いやに濃い感じで、思いがけなく酔ってしまった。

07/19/土
この週末は2連休。もうエンディングに入っている。10歳の少年が出てくる場面。この少年が将来の大物になるのだが、作品の最後にどこまで書いていいのか。とにかくどんどんコンパクトにしていって、スピード感の中でゴールインしたい。

07/20/日
夕方。ついにゴールイン。最後はすごいスピードだった。このスピード感が大事だ。この勢いが文体にも反映される。読者にも伝わるはずだ。時間の流れが速くなり、作品の最後のページが閉じられる。しかし時間の流れが速くなっているので、読者は一挙に、作品を読んでいる「いま」という時間を意識することになる。作品内の時間と、読者の時間をつなげるために、エンディング間際の時間の流れをスピードアップしなければならない。たぶんうまくいったと思う。さて、昨年の秋から書き始めた作品が一年以内に終わった。入力が終わったという段階で、まだプリントしたものを修正して、最終的な入力をしなければならないのだが、直前までは一度、文字校正はしてあるので、赤字の入っているゲラを見るような感じで、もう一度、最初から読み返していけばいい。編集者には修正前の文書をとりあえず送ることにした。全体の分量がわかるし、ざっと読んでもらえば何が書いてあるかがわかる。ふつう、少し間を置いてから、最初から読み返すことにしているのだが、いまは気持が前向きになっているので、とりあえず最後までの文字校正が終わったら、最初から読み返してみたい。夜、近所のビアホールで妻と祝杯をあげる。

07/21/月
大学。本日は1限だけで、2限の寄付講座は休み。1限は最終授業。あと2週間、2限だけの授業が残った。学生のレポートを見て、1限の成績をつける。100人ほどいるので成績をつけるだけでもたいへんだ。昨日、入力を終えた部分をプリント。20ページほどある。これを最後まで読めば、最初から読み返す作業に入れる。教授会などを終えて自宅に帰ると、なぜか孫がいる。四日市の次男のところの長男が一人で来た。やれやれ、たいへんだ。

07/22/火
大学。1限を終えて研究室で雑用をこなす。図書館問題についての調査に応じる。学生と対応したりして時間がつぶれる。夕方に自宅に帰る。まだ次男が休暇をとっていて、孫をつれてお台場のレゴランドに行ったとのこと。帰りにヨドバシカメラに寄ってレゴを買ってきた。これを明日組み立てるのか。誰が? 深夜、次男を秋葉原のバス停まで送っていく。いつものことだ。いや、いつもは日曜が多い。本日はウィークデーで、まだ街には賑わいが残っている。メイドの衣装の呼び込みもいるし、おでんやからは道路の歩道にまで客があふれている。バスを送って一人で帰る。孫が寝ているので妻は来なかった。次男と二人で街を歩くというのもヘンな感じ。昔、長男がブリュッセルに留学していた時、次男と二人で長男のところに行った。親子二人だけのいい旅だった。次男が子どものころはよく野球を見に行った。そんなことを想い出した。さて、自分の仕事。いよいよプリントしたものを最初から読み返す。いちおう入力が進むにつれて紙にプリントして文字の校正は済ませてある。修正を入力していないので、校正の赤字の入ったプリントを最初から読んでいく。第1章は何度も読み返したはずだが、まだチェックが入る。エンディングまで書き終えているので、一人称の語り手の立ち位置がようやくはっきりしたし、主人公がどうなるかということもようやく確定した。小説を書く時、エンディングの詳細については考えないことにしている。「これからどうなるのだろう」というわくわくした感じを書き手ももっている必要があるから。エンディングの設計図を先に作ってしまうと、伸びしろがなくなってしまう。で、日曜日に最終部分を入力するまでは、語り手の立ち位置がはっきりしていなかった。エンディングには、なぜこの語り手が物語を語ることになったのかという経緯を短く示されているので、エンディングがオープニングにつながる円環構造ができることになる。とにかく、すべてが確定してからこの冒頭部分を読み返すのは初めてなので新鮮な感じがする。

07/23/水
休みだが孫がいる。プラネタリウムを見たいと言ったので押上のスカイツリーの下につれていく。ついでに水族館も見た。何だか熱気で霞んだような空でスカイツリーそのものもすいていたみたいだ。とにかく本日は孫へのサービスの日。夜、プリントした作品の第一章を読み終える。ここまでは何度も読み返したところなので、文字の間違いはないのだが、語句の統一とか解釈の問題で引っかかるところがある。エンディングまで書き終えたことで、全体の語句の統一をどうするかが見えてきた。たとえばイエス・キリストについては、キリストで統一することにした。ロシア正教だとハリストスなのだが、これでは読者にはわからない。イエスという名前は用いないことにした。イエスは国によって呼び方が違う。イエスと呼んでいるのは日本だけだ。英語ではジーザスだし、フランス語だとジェズだ。スペイン語ではヘススだ。キリストも国によって呼び方が違うのだが、とにかくキリストという語だけを使う。修道士という言葉も使わないことにした。修道院にいる人のすべてが修道士ではない。内部に資格による序列がある。なるべく修行者という語を使うことにした。というような語句の統一をこれからもチェックしていかないといけない。

07/24/木
大学。4年ゼミは来週飲み会なので本日は休み。大学院ゼミは先週のゼミで前期はおしまいにした。本日は3年ゼミだけだが、作品を提出するだけでいいということにして、研究室で希望者のみ個人指導ということにしたら、学生が5人来た。いつもこれくらいの人数で授業ができればいいね。来週の寄付講座のための最後の系図づくり。これを黒板に書いてから話をスタートさせる。その次の最終回は仏教の話をするので系図は必要ない。親鸞だけは系図を書こうと思えば書けるのだが、鎌倉仏教の概略を語るだけなのでそこまでの話は必要ないだろう。自宅に帰ると孫がいる。いろいろと疲れる。

07/25/金
本日は大学は休みだが、ジャスラックで創作者団体協議会の幹部会があって出かけていく。わたしはこの団体の議長をつとめている。必要な話し合いをして無事に会議を終えた。去年まで住んでいた三宿の旧宅からジャスラックまでは徒歩で30分だった。いまの自宅からは40分くらいかかる。ただ千代田線に乗れば乗り換えなしで行けるので、楽になったことは確かだ。夕方、次男の嫁さんの妹が来て、嫁さんの実家の方に孫をつれていってくれた。やれやれ。これで落ち着く。

07/26/土
年に一回、宇都宮で講演をする。宇都宮の専門学校の顧問をしていて、いつもこの時期に小説の書き方の講演をする。宇都宮はいつ行っても猛暑だが、今年も暑かった。もっとも出かける東京駅も猛暑だった。毎年、同じことをしゃべるわけにもいかないので、今年はテキストを用意して、文章について語った。テキストがあると間がもつのでいい。

07/27/日

本日は大学。有明キャンパスで大学院の説明会。4人が来た。このうち1人でも来てくれればいいのだが。この有明キャンパス。三宿にいたころは妻に車で恵比寿まで送ってもらった。恵比寿からなら埼京線から直通でお台場に行ける。いま住んでいるお茶の水からの経路はいまもってどれがいいかわからない。秋葉原から京浜東北で大井町乗り換えのりんかい線、これが1回乗り換えでよさそうで、大学からの出張旅費もこの計算になっている。中央線で東京に出て京葉線という手もあるが乗り換えにものすごく時間がかかる。とにかく往路はりんかい線の国際展示場駅に行くのだが、帰りは「ゆりかもめ」で豊洲から有楽町線に乗る。有楽町の改札を出ると目の前に三田線の改札があって思わずそこに入ってしまうことが多い。これだと神保町で乗り換えて小川町ということになる。乗り換えが増える。本日は豊洲でパラパラと雨が降っていたので、千代田線の日比谷駅に向かうことにした。これは少し離れているのだけれども、新御茶ノ水で下りると濡れずに自宅に戻ることができる。時間を測ってみたがこれが最短かもしれない。今度は往路で使ってみよう。次回、秋卒業の卒業式かな。

07/28/月
大学。2限の寄付講座だけの授業。あとは研究室で雑用をこなし、同窓会の人々と打ち合わせをしたあと、学科会。研究室でかなり時間があったのだが、雑用に追われて仕事は進まず。夜中に少しプリントを読む。どうも作業が遅れ気味だ。

07/29/火
大学。2限に教務との打ち合わせが入った。来年度から4期制に移行するという話。カリキュラムをそっくり変えないといけない。大変な作業だ。しかしゼミなどは対応できない。創作関係の講座も難しいだろう。そのことを大声で主張したのだが、テレビ会議なのでどこまで声が届いたか。会議が終わるとただちに自宅に帰ってプリントを読む。夜は歴史時代作家クラブの打ち合わせ。軽く飲んで帰る。軽く飲んだつもりだったが夜中の仕事はできず。

07/30/水
日大文芸賞の授賞式。市ヶ谷の私学会館アルカディア。選評を述べる。その後、食事をしながら受賞者と歓談。楽しく語れた。今年は増田みず子さんが元気よくしゃべった。『星の王子さま』増刷の報せ。いつも夏休み前に『いちご同盟』は必ず増刷になるのだが、『星の王子さま』の増刷は嬉しい。講談社青い鳥文庫は色刷りではないので不利なのだが、この翻訳には自信がある。

07/31/木
3年ゼミの飲み会。ゼミの学生が仕切ってくれたので、宴会場が用意されている。総勢15人。よく集まった。この学年で初めての飲み会だ。2年生の時は未成年者がいるので飲み会はできない。皆、大人になったのだなと思う。総勢15人だが、男はわたしを含めて3人だけだ。あれ、男ってこんなに少なかったかな、と思うのだけれど、欠席者に1人男子がいるだけで、結局18人のゼミ生の中で男子は3人だけだ。2年の時から少し人数を減らしたのだが、気がつくと男子を減らしたのかもしれない。意図的ではない。提出された作品で選んだので、女子の方が出来がよかったということだ。まあ、仕方がない。女の子の書くものの方がおもしろいのは一般的な傾向だ。とにかく15人で楽しく宴会をした。これで今年度の前期も終わった。そして今月も終わった。月末までに入力を終えるというのが目標だったのだが、月半ばに達成したし、締切のあった雑文もすべて片づけた。あとは前期の成績づけが残っている。それと寄付講座のテープ起こしを見る作業があるが、あと1回、寄付講座そのものが残っている。大学はもう休みになっているのだが、寄付講座だけがなぜかあと1回あるのだ。とにかく「カラマーゾフ」は順調に進んでいる。



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