12月に進む
月末
11/02/日
孫娘とともに日帰りのバスツアー。猿橋、勝沼ぶどう圓、鐘山の滝、河口湖紅葉祭を回った。空は曇っていたのだが高層の雲で、富士山の全容が眺められた。孫娘にとってはよい思い出になったと思う。ドジャース対ブルージェイズの試合は、スマホで経過を見ていた。猿橋のあたりで延長戦になり、山本が登板した。猿橋から勝沼に向かうところでドジャースの勝利を知った。すごい試合だった。山本はチーム4勝のうち3勝したのだからすごい。昔の日本の野球では、西鉄の稲生が4勝したり、南海の杉浦が4連勝したりしたが、現代野球では先発投手が次の試合でリリーフするなどということは考えられない。その考えられないことが起こって勝ってしまったのだから奇蹟というべきだろう。
11/03/月
月曜日はFootballの結果がわかる。カウボーイズ対カーディナルスは明日だが、両カンファのシード候補を見ておく。Aカンファは2敗がペイトリオッツ、ブロンコス、コルツ、3敗がスティーラーズ。これが地区優勝。ワイルドカードは2敗のビルズ、3敗のジャガーズとチャージャーズ。要するに3敗まででプレーオフ出場枠が埋まっている。本日ビルズに負けて4敗となったチーフスは圏外にいる。まだ1差だから、可能性は充分に残っているが、負けられない試合が続く。5敗のレイブンズはもう1つも落とせない状況になっている。Nカンファは、2敗がイーグルス、バッカニアーズ、それに西地区のラムズとシーホークス。2敗1分のパッカーズ。西地区が2チーム並んでいるので残りは2枠。3敗のライオンズ、ベアーズ、49ナーズ。1チームが余ってしまう。ここまでで、開幕前の評価が低かったのにここに残っているチームを挙げると、ペイトリオッツがQBのメイの活躍で地区のトップに立っている。コルツもQBダニエル・ジョーンズがジャイアンツ時代の汚名を晴らしている。ブロンコスもボー・ニクスの成長で地区のトップに立っている。ベアーズのケイレブ・ウィリアムスはようやく2年前のドラ1の実力を発揮している。これらのチームの上昇によって、下位に甘んじているのはレイブンズとチーフス。テキサンズも予想外の不振。Aカンファ、Nカンファともに西地区で3チームが競い合っているところは見逃せない。車を動かすために深川のショッピングセンターへ。2週間に1度、車を動かすのだが、妻が緊急で名古屋に行っていたので、3週間になってしまった。ちゃんと動いてくれた。もうすぐ10万キロになる車だが、元気に動いてくれている。祝日で混んでいたので何も買わず食料品だけ買って帰る。旺文社のコンクールを読み始めた。候補作を読む仕事が年に5件ほどあるが、これが最後。
11/04/火
妻と孫娘は有楽町のパスポートセンターへ。無事にパスポートを貰えた。これでスペインに戻れる。こちらは旺文社の選考結果をファックスで送る。ファックスを使うなんて年に一回くらいではないか。家の電話線を2本引いて、1つをファックス専用にしているのだが、これは無駄なような気もする。外からファックスが入るということももうなくなった。以前は著作権情報センターがファックスでのやりとりだったのだが、いまはメールで対応できる。昔は原稿をファックスで送っていたことがあった。手書きの原稿をファックスで送っていた。パソコンを使うようになると、初期のパソコンは電話線につなぐようになっていて、ファックスの機能ももっていた。パソコンとファックスを直列でつないであって、原稿を書いてファックスで送ることができた。何かの拍子にうまく届かないことがあって、あわててプリントしたものを手差しでファックスで送ったこともあった。大昔のことだ。そういえば昔はルーターも有線でつないでいた気がする。電波が飛ばないルーターだった。あれは何だったのか。ファックスがなかったころは、編集者に原稿をとりにきてもらうか、郵便で送るしかなかった。芥川賞受賞直後に朝日新聞に連載していた時には、週に一度、オートバイの人が一週間ぶんの原稿を取りに来た。何か、昔だなあ、と思う。ぼくは35歳の時にワープロ専用機を買った。芥川賞を貰ってプロの作家になったのが29歳だったので、手書きで仕事をしたのは6年間ということになる。ワープロ専用機はプリントできるだけでえらく手間がかかった。そのうち東芝ルポで書いた原稿を、ワードに変換できるようになった。パソコンにつないでプリンターが使えるようになったので、東芝ルポはプリンター機能のないノート型のものに変えた。これはいまのノートパソコンよりもコンパクトなもので、実に便利だった。いまは机の上にやや大型のラップトップを置いて使っている。いまの住居に引っ越した時に買ったパソコンで、ということは12年使っていることになる。スペースキーがぼくの左手親指の形に凹んでいる。
11/05/水
新宿のマッサージに行く。以前は月に一度くらいのペースで通っていたのだが、予約が入りづらくなって、隔月ということになっている。次回は来年の予約をとった。1時間半ほどのマッサージで全身がリフレッシュするのだが、パソコンに向かっているか、プリントのチェックをしているかという作業ばかりなので、机に向かって座っていることが多く、身体にはよくないことをしている。精神的にもよくないことをしているのかもしれないが、17歳の高校生のころから小説を書き始めて、77歳の今日まで、60年にわたってこの作業を続けてきたので、この状態以外の生き方が想像がつかなくなっている。これでもワードプロセッサのおかげて姿勢がよくなったくらいで、35歳でワープロ専用機を使うまでは、手で書いていた。これはもっと体によくない作業だった。まあ、それでも後期高齢者になるまで生きてこられたので、これでよかったのだと思っている。
11/06/木
近所の医者に行っていつもの薬の処方箋を書いてもらう。先月はインフルエンザの予防接種をしてもらったのだが、今回はコロナだ。千代田区はこの種の予防接種は、高齢者は無料にしてくれる。地方ではそうではないという話も聞く。千代田区に住んでいてよかったと思う。コロナの注射は久し振りだ。流行期には半年に一度くらい摂取を受けていた。最初に受けた時は、夜になると腕が腫れて痛かった。そういう後遺症がもっとひどく出る人もいたようだ。いまは流行が収まっているので、少しうすめたものを使っているようで、痛みはそれほどでもないのだが、コロナの予防接種独特の腕の腫れはあって、ああ、痛かったな、ということを思い出した。本日は日本文芸家協会の理事会だったが、その前に著作権について話してくれた頼まれたので、早めに出向いてビデオの撮影に対応した。そのうち協会のホームページにアップされると思う。
11/07/金
昨日、コロナの予防接種をしたのだが、今日になって高熱と寒気、全身の痛みを感じた。初めてコロナの予防接種を受けた時もそんな感じだったが、あらかじめ解熱剤を用意していたので何とかしのいだ。その後、何回も接種して、そんな症状はなくなったのだが、久し振りだったので、体が反応したのか。柴胡桂枝湯と解熱剤和呑んで夕方からベッドに入っていた。夜中に起きて熱を測ったら下がっていたので、寝酒を軽く飲んでまた寝た。まったく何が起こるかわからない。
11/08/土
熱は下がったがまだ万全ではない。それでも日常生活に問題はない。『角王戦記』(崇神天皇)のプリントチェックは終盤に入っている。思えばこのネット上のノートを「崇神天皇」として、20年前の作品のリライトを始めたのは今年の正月だった。もう11月に入っているのだが、まだ全体は完成しない。完成した途端にデッドストックになる作業なので急ぐ必要はない。ただ昨日のように急に熱が出ると、自分の死のことを考える。胸の苦しさみたいなものも感じたからだ。たかがコロナの予防接種くらいでこんなに苦しくなるのかと思うと、いつまでも健康でいられるわけではないということを痛感する。死というもののことを考える。17歳の時、登校拒否をして引きこもっていた。そのころは死というものは身近にあった。いつ死んでもいいという気分でいた。芥川賞を貰ってプロの作家になってからは、頭のなかにいくつかの構想があったので、これを実現するまでは死ねないという気分になった。「空海」「日蓮」「親鸞」を書き、ドストエフスキー四部作を書き、思いがけず「デーヴァ」を書いたあとは、もう書くべきことは何もないという気分になった。何もないということでは寂しいので、旧作をリライトしているのだが、リライトするといい作品になっていくので、この作業は完成させたいと思っている。死というのは何かといえば、デスクトップのパソコンの電源が切れるようなもので、プレインストールされている情報は別として、パソコン上で作業していた情報はすべて失われる。ぼくの脳のなかにあるさまざまな記憶が末梢されるので、「ぼく」というものが失われる。それだけのことだ。ぼくにとって親しい人、たとえばいまいっしょに暮らしている孫娘は、医者として生きていくだろう。孫は6人いる。名古屋の2人はレゴの天才ではあるがそれだけでは生きていけないので少し心配している。孫の最も年下なのはスペインにいる男児で中学1年だが、上の3人がお姉さんの大学生なので、女性恐怖症になっているのではないかと心配している。ぼくにも年の離れた姉が2人いて、女性というのは怖いものだと思ってしまった。それはいまでも払拭されていない。死を恐れる人がいる。子どもがまだ小さい働き手が癌になったりすると、絶望的な気分になるということはあるだろう。世の中からリタイアした老人が死にたくないと恐れるのは、死というものを充分に認識していないからだろう。パソコンの電源が切れる。初期のパソコンを使っていた時に、時にパソコンが貼り付いて、シャットダウンするしかないという状況があった。作業は失われるが、パソコンそのものは再起動すれば動く。人間という生体機械は再起動できない。50歳くらいの時に、事故に遭って一時、記憶喪失になったことがある。妻の顔を見て誰か思い出せなかった。自分が誰かもわからなかった。それは30分間くらいの瞬間的な記憶喪失だった。そこから少しずつ自分というものを認識していく過程はおもしろかった。自分が自分であるということを肯定的にとらえることができた。いやなことはしないという鉄則に従って生きてきたので、当面のいやなことは何もなかった。いまの自分もそういう状態で、いやなことは何もしていない。面倒なことはいろいろあるのだが、それは3000メートル障害のハードルや水濠みたいなもので、越えられないものではないし、越えてしまえば達成感が得られたりもする。それは小さな達成感でしかないが、日々はそのようにして過ぎていくものだ。後期高齢者になっても、少し忙しいと思うくらいにいろいろと雑用があるということは、気が紛れるし、時々飲み会ができる相手がいるというのは楽しいことだと思っている。それでも、体を壊せば、飲み会に参加できないし、寝酒も飲めない。医学部の学生の孫娘は、ぼくが寝酒を飲んでいるといい顔をしないのだが、長生きしたいとは思っていないので、飲みながら少しずつ死に近づいていければと思っている。
11/09/日
日曜日。散髪に行く。雨だったのですいていた。値上がりしていた。1300円だから文句は言えない。ここは時間が短いのが何よりだ。「新釈白痴」と「新釈悪霊」を読んだので、「続カラマーゾフ」を読み始めた。半分くらいのところまできたが、これが一番おもしろい。ぼくが読んだすべての作品のなかでこれが一番だ。自作だけではない。すべての作品のなかでということだ。ということはドストエフスキーの原典よりもおもしろいということだろう。ただ原典なしにこの作品は成立しない。30年前に書いた「地に火を放つ者」はイエスキリストを描いた作品だが、そこには十二使徒が登場する。12人すべてを個性的に描くというところが難しかった。ただ外典の「トマスによる福音書」を下敷きにしているので、トマスとマグダラのマリアがクローズアップされている。「続カラマーゾフ」も十二使徒が出てくる。ここに出てくるトマスは、ロシアふうにフォマと呼ばれているのだが、なかなかいい味を出している。後半には実在の人物が出てくる。皇帝暗殺の実行犯やその仲間たちだ。最終的に物語は皇帝暗殺に向かって進んでいく。これはいまの時代の人々にとっては、反社会的な物語ということになるのだろうか。元首相の殺人犯がいま裁かれているが、彼のことを英雄視する人はいないだろう。元首相を殺しても、別の人間が首相になるだけのことだからだ。いくはその元首相の弟子みたいな女性が首相となって、同じことを繰り返そうとしている。ぼくの作品のなかの狙撃犯も、結局のところは自己満足に終わることになる。しかしおそらくドストエフスキーは、そういう反社会的な若者たちにある程度の共感をもっていたはずだ。ドストエフスキー自身が一度は死刑の判決を受け、処刑場に引き出された経験をもっているからだ。ぼくは「愛の行方」という連続爆破事件の犯行集団を描いた作品も書いている。歴史小説を書いているのも、ある意味で歴史的な偉人たちは当時としては反社会的な人物だったのだと思っている。「道鏡」や「菅原道真」はもとより、「頼朝」や「尼将軍」だって、伊豆の国司長官を殺害した反社会的集団を率いていたことになる。まだ半分しか読んでいないけれども、ここには反社会的な若者たちが大挙して登場する。夢のような作品だ。ただ舞台はロシアだ。それを日本を舞台にして描けないのか。いま読み返している『角王戦記』や『日本武尊』はそういった試みなのかもしれない。まあ、まだ生きているので、できるかぎりの仕事は残しておきたい。
11/10/月
Footballの結果。今週はチーフスはバイウィークというお休み。この休養日は昔はなかった。シーズンが17試合になったのも最近のことで、バイウィークが一つ挟まるので18週でシーズンが終わる。大相撲なら勝ち越すのが一つの目標で給金直しと呼ばれるのだが、Footballの場合はプレーオフ出場が目標なので、10勝7敗が一つの基準になる。これでも直接対決の勝ち負けなどでだめなことがあるので、11勝6敗が安全圏ということだろう。チーフスは4敗、レイブンズは5敗なので、まだ少し余裕があるが、とにかく負けられない試合が続くことになる。Aカンファではビルズがなぜか絶不調のドルフィンズに負けて3敗となった。同地区のペイトリオッツが2敗のままで、直接対決では負けているので、地区優勝が苦しくなってきた。他地区のチームの場合、地区優勝してもシード4位でビルズと当たることになるとかなりつらい。地区優勝するにしても、シード上位に入らないと安心できない。地区優勝争いのトップは2敗のペイトリオッツ、コルツ、ブロンコスが並んでいる。第4シードは北地区のスティーラーズ5勝4敗、レイブンズとは1差になったので逆転される可能性が出てきた。ワイルドカードの3枠は3敗がビルズ、チャージャーズ、残り1枠は4敗のジャガーズとチーフスだが、チーフスはジャガーズに負けているのでまだ圏外だ。Nカンファはまだ明日の試合が残っているが地区優勝が2敗のイーグルスとパッカーズ(明日対決する)それに西地区のラムズとシーホークス。第4シードは3敗のバッカニアーズ。ワイルドカードは3敗のライオンズとベアーズ。これですべての枠が埋まった。明日、パッカーズがイーグルスに負けると3敗1分になるのでシード7位ということになる。4敗の49ナーズは圏外。残りのチームは今シーズンは無理みたいだ。歴時協会理事会と飲み会。この会の理事会は必ず飲み会をやる。よい傾向だと思う。少し飲みすぎて、どうやって帰ったか記憶が欠落している。
11/11/火
長男の戸籍の個人番号をとりに下北沢の出張所に行く。そんなものがあることを知らなかった。これがあると外国にいても戸籍謄本が得られるらしい。それから三田和代さんの朗読会。うまい。孫娘もいっしょに行ったのだが、やはり難しかったようだ。
11/12/水
今週は割りとひま。コロナの予防接種と、やや宿酔で、低下していた体調もほぼ戻った。『続カラマーゾフ』を読み終えた。すごい作品だ。イワンが言葉を発するところ、ドミトリーが未来のレーニンにシベリアのレナ河の話をするところ、それと皇帝暗殺のシーン、どれも素晴らしい。よくこんなものを書いたなと驚嘆する。しかも学部長と文藝家協会の仕事をしながら書いたので、信じられない気持だ。90歳になったら読もうと思っていたのだが、いま読んでよかった。本が重いし字が小さいので90歳になったら読めないだろう。この作品は漢字にロシア語のルビがついている。サンスクリットのルビがついた『デーバ』ほどではないが、頭がロシア語になっていたなと思う。ドストエフスキー四部作の『罪と罰』以外を読んだことになるが、『罪と罰』は内容をかなり憶えているので、読み返すこともないかなといまは思っている。『空海』を読んでみたいかなと思っている。『釈迦と維摩』も読んでみたい。
11/13/木
明日はジェッツ対ペイトリオッツの試合があるが、シーズンも後半戦に入った。Aカンファは少し意外な展開になっている。ビルズのジョシュ・アレン、チーフスのマホームズ、レイブンズのラマ―・ジャクソンという3強QBがいずれも不調だ。ビルズ3敗、チーフス4敗、レイブンズ5敗ということで、シード1位争いも難しくなっている。代わってシード1位に近いのが2敗ペイトリオッツ、コルツ、ブロンコスだ。ペイトリオッツは2年目QBのメイが見違えるような活躍をしている。ビルズに勝った試合が印象的だ。怪我がなければこのまま最終戦まで安定したプレーを続けるだろう。コルツはジャイアンツから移籍したダニエル・ジョーンズが別人の活躍だがここはランニングバックのテイラーに助けられている。ブロンコスも2年目ボー・ニクスが安定している。月曜の試合でチーフスと対戦する。チーフスはパチェコが負傷しているのだが、レシーバーは揃っている。チーフスも4敗しているのでもう負けられないと本気で頑張るだろう。3強に次ぐと見られていたベンガルズのバローが負傷、テキサンズのストラウドは不調、スティーラーズのロジャースも往年の輝きが見られない。チャージャーズのハーバートは頑張っている。ジャガーズのトレバー・ローレンスは出だしはよかったのだが負けが込んできた。Nカンファはイーグルスはそこそこ頑張っているが、ライオンズ、バッカニアーズは安定していない。いま調子がいいのは西地区のラムズとシーホークス。ベテランのスタッフォードが完全復調、バイキングから移籍のダーノルドも好調を維持している。やはりFootballはQBの出来がカギになる。この2チームがプレーオフでイーグルスやライオンズと当たるのが楽しみ。咋シーズン大活躍のコマンダーズのダニエルズは不調。ベアーズの2年目ケイレブ・ウィリアムスの調子が出てきた。QBがまったくいなかったセインツは、ショーという新人QBでやっと勝てた。いずれにしても、トップチームでも2敗しているし、1勝しかしていないのはドラ1を抱えたタイタンズだけなので、チーム力の差がそれほど開いていない。これから「死に馬に蹴られる」ような試合が頻出するような気がする。
11/14/金
「釈迦と維摩」を読みかけたのだが、『デーヴァ』を書いたあとで読むとやはり甘さが目立つ。読むのをやめにした。それで『新釈罪と罰』を読み始めたのだが、こちらはいい。文体が引き締まっているし、最初からラスコーリニコフの怪しいところと、ザミョートフの鬱屈とがしっかり文章のなかにこめられていて、二人の人物の対立と緊張感が文章から伝わっていく。これはいい作品だ。あと読みたいものとしては、『地に火を放つ者』と『デイドリームビリーバー』があるが、これは読むものがなくなった時に読むためのストックとしておく。『角王』は結局、『崇神戦記』というタイトルにしたい。プリントのチェックが終わったので、赤字入力をしたいのだが、これはいつでもできるので、少し間を置きたい。年末年始の仕事にしてもいい。いまは『女が築いた日本国』のストックを少し先まで用意しておく作業に集中したい。
11/15/土
穏やかな週末。『新釈罪と罰』を読んでいる。これは完璧な作品だね。すごいものを書いた。で、このころが自分のピークだったのだろう。いまの自分はやや枯れている。『崇神戦記』もすごい作品だが、昔の作品をリライトしたものだから、オリジナルをいまの自分が書いたわけではない。『女が築いた日本国』の連載が平安時代に入ったので、自分の書いた『なりひらの恋』も読み返してみたが、これは最高の作品だ。何か、自分の書いたものはすべて最高の作品に見えてしまうけれども、この作品の最後の、なりひらの歌が胸にしみた。「心の中にたまった思いは言葉にしないほうがいい。わかってくれる人なんてどこにもいないのだからね」(思ふこと言はでただにやみぬべきわれとひとしき゜ひとしなければ)……これはもとの歌は在原業平だけれど、いまの自分の気持にぴったりだ。
11/16/日
Footballも後半戦に入ってきた。トレード期間も終わったが昨年のバークレーの移籍のような大きな動きはなかった。今シーズンはジョシュ・アレン、マホームズ、ラマ―・ジャクソン、ロジャース、バローといったAカンファのQBビッグネームではなく、新しいQBの活躍が目立つ。2敗でカンファ首位に並んでいるペイトリオッツのメイ、コルツのダニエル・ジョーンズ、ブロンコスのボー・ニックスは、シーズン前にはこれほど勝つとは予想できなかった。QBのビッグネームはギャラが高いので、チームの戦力が弱まっていく。ブレイディーのいたころのペイトリオッツは、ブレイディー以外の選手は次々と新陳代謝していた。ただQBを守るオフェンスラインだけはしっかりと補強しないと、足が衰えつつあるベテランQBを守れない。若いQBのいるチームは、QBのギャラが安いので、全体を補強できる。ただプレーオフになるとやはりベテランの勝負強さが発揮されるのではないかと思う。問題は、レイブンズやチーフスがプレーオフに残れるかどうかだ。11勝6敗というのが、当確ラインだろう。10勝7敗では苦しい。
レイブンズは5敗しているのであと1つしか負けられない。チーフスは4敗なので少しはましだが、同地区にブロンコス、チャージャーズがいるので、すでにプレーオフに入っている状況だと考え、同地区対決は全勝するしかない。明日、チーフス対ブロンコスがある。これはもうプレーオフの初戦みたいな試合だ。負けたら終わりだと思ってがんばってほしい。Nカンファはスタッフォードのラムズと、ダーノルドのシーホークスが予想外に好調だ。これにイーグルスが2敗で並んでいる。3敗のライオンズ、ベアーズ、3敗1分のパッカーズと北地区の3強の争いも熾烈だ。同じく3敗のバッカニアーズは弱い地区なのでプレーオフ進出はまちがいないが、プレーオフの初戦で北地区、西地区のワイルドカードトップのチームと当たると苦しくなる。今シーズンはチーム力が接近していて、プレーオフは充実した闘いになるだろう。ケイレブ・ウィリアムスのベアーズにも注目したい。
11/17/月
昨日、「負けたら終わり」と書いたブロンコス戦に負けてしまった。惜敗。まあゲームだから辛勝もあれば惜しい負けもある。これまでチーフスは競り合いに強かったのだが、今シーズンは競り負けることが多い。オフェンスラインの整備が及ばなかったのと、ランニングバックのパチェコの負傷。5勝5敗と5分の成績になってしまった。残り7戦を6勝1敗でいけるか。来週は2敗のコルツだ。ランニングバックのテイラーが200ヤード走るすごいチームだ。カウボーイズ、テキサンズ、タイタンズ、レイダーズには必ず勝つとして、来週のコルツ、あと同地区のチャージャーズとブロンコス。この2チームに今シーズンは負けている。チーム力はそれほど違いはないので、競り勝つしかないが、オフェンスラインをどうすればいいのか。パチェコは復帰できるのか。ダメかもしれない、とちょっと思ってしまっている自分がいる。もう来年のことを考えてしまっているが、マホームズ以外の全体を思いきった若返らせるというのが、いちばん可能性のある考え方だろう。ペイトリオッツはそうやって黄金期を作ってきた。まあ、今シーズンはペイトリオッツ、コルツ、ブロンコスと予想外のチームが活躍しているので、楽しいプレーオフになるだろうと期待しているのだが、ビルズ、レイブンズ、チーフスという3強が、いずれもワイルドカード狙いということになっているので、ワイルドカードの争いが厳しくなる。11勝6敗。ここがリミットだろう。
11/18/火
今年もあと一箇月半を残すのみとなった。正月にこのノートを始めて、「崇神天皇」四部作を完成させるつもりだったが、既存のリライトもまだ終わっていない。締切のない仕事なのでのんびりしているということもあるが、歴時協会のホームページに『女が築いた日本国』という連載を始めたので、毎週10枚くらいの原稿を書いている。ストックはかなり先までたまっているので、これで時間をとられた面もあるし、旧作を読み返したりしているので、作業のペースが落ちている。第三部の「日本武尊」と第一部の「崇神戦記」は完成する予定で、第二部の「活目伝説」も草稿はできている。つまり第三部まではほぼできているので、来年は第四部を書き始めることになる。『デーヴァ』を書き終えた時に、これが遺作だと宣言したのだが、たぶん第四部が遺作になるだろう。「持統女帝」をリメイクしたいという思いはあるのだが、モチベーションが高まらない気もする。来年は文藝家協会の百周年事業もあって、少し忙しくなるかもしれない。いまは文藝家協会、SARTRAS、歴時協会と三つの組織に関わっているので、やたらと会議が多いのだが、ボケ防止には役立っていると思う。
11/19/水
5勝5敗となったチーフスのヘッドコーチの談話が出ていたが、何を成すべきかはわかっている、といった落ち着いたようすだった。得失点差を見る限りは、チーフスの調子はけっして悪くない。ただ終盤に競り負けるようになった。オフェンスラインの弱さもあるが、ディフェンスもどこかパワーを出し惜しみしているようなところがある。来週は2敗のコルツ相手だが、ランニングバックのテイラーが走りまくっているチームだ。QBのダニエル・ジョーンズもジュシュ・アレンほどではないが走ることを苦にしないので、テイラーばかりを警戒しているとQBに走られてしまう。これがプレーオフの初戦だという気持になって、負けたら終わりの捨て身の闘いをしてほしい。ランニングバックのパチェコがいないのであれば、マホームズが走るしかない。
11/20/木
SARTRAS理事会。何事もなし。文藝家協会関係いくつかメールを発信。何やら忙しい。
11/21/金
教育NPOとの定期協議。会議のあと高齢の飲み会。控え目に飲む。明日の朝が早い。
11/22/土
来日中のスペインの孫娘へのサービスで2泊3日の旅行に出ることにした。旅行を決めたのが遅かったので早朝の新幹線しか取れなかった。暗い内から自宅を出て東京駅へ。東京駅に近いところに住んでいるのでありがたい。金沢行きの新幹線に乗り込む。東京は快晴で大宮あたりまで富士山が見えた。自宅から見える富士山とは角度が違うのでおもしろかった。それだけで旅に出た気分になった。軽井沢は霧に包まれていた。晴れているのは関東だけかと思ったら、金沢も快晴だった。まずは兼六園。犀川を渡って西茶屋街。五十年前に行ったことのある忍者寺。本日の行程終了。1万2000歩。夜は海鮮を食べ、すぐに寝た。
11/23/日
21世紀美術館と県立美術館。よいものがたくさんあった。疲れた。
11/24/月
東茶屋街から金沢城公園。武家屋敷街。今日もよく歩いた。駅ビルで寿司を食べて新幹線に乗り込む。寿司屋でビールを飲み、座席に座ってウイスキーを飲んだので、あっという間に東京に着いた。さて、明日からはまた日常が始まる。
11/25/火
昨日の朝、ホテルで起きた時にネットで結果を確認。2敗でカンファのトップにいるコルツ相手に、チーフスはぎりぎりで追いついて延長に持ち込み、キックで辛勝していた。これで6勝5敗と、勝ち越しにはなったが、まだ道は遠い。Aカンファはペイトリオッツが10勝2敗で1位、バイウィークが1つあるブロンコスが9勝2敗でほぼ並んでいる。次が3敗になったコルツで、北地区はスティーラーズが失速して6勝5敗となり、ラマ―・ジャクソンが復活したレイブンスと並んだ。これから直接対決があるのだが、レイブンズは勝ち続けるだろう。スティーラーズは現状の6勝5敗ではワイルドカードにも入らない。現状のワイルドカード枠は7勝4敗の3チーム、ビルズ、ジャガーズ、チャージャーズ。6勝5敗はレイブンズとスティーラーズのうち地区優勝を逃した方と、チーフス、テキサンズ。とにかくワイルドカードの3チームが安定しているうえ、チーフスはこの3チームに負けているので、勝ち星が並んだだけでは追い越せない。あと6試合。ブロンコスとチャージャーズという直接対決に必勝して、残りを全勝すればプレーオフ進出のチャンスがあるが、どちらかに負けるようだと敗退のピンチとなる。パチェコはまだ戻らずハントが100ヤード走ったのと、ライスへのパスが通ってはいるが、マホームズはパスによるタッチダウンがない。守備はテイラーのラン攻撃をきっちり防いで辛勝ということになったが、まだ万全の状態ではない。数年前に自主対談していたヒレアーが復帰したようだ。ドラ1巡でパチェコの前年に入団したものの、翌年の7巡だったパチェコに追い越されて退団していた。どこまで復帰できるか。あまり期待できないので、ハントに頼ることが多くなるが、ぼくは新人のころからハントを応援していた。体は小さいのだがガッツがある。精神的に過激なところがあって心配になることもあるが、ブラウンズでチャブのサブとして辛抱強く働いていた。とくにゴール直前の短い距離で威力を発揮する。ただマホームズのサックが多い。オフェンスラインが弱い。このままではプレーオフに出ても初戦で敗退ということになるのかもしれない。あと一人、ラインを補強できないかと思う。
11/26/水
昨日は姉の旧い友人の招待で孫娘とともに焼き鳥屋に行った。いい店だった。個室で静かに話ができた。孫娘の滞在もあと一週間となった。猛暑の八月に来日して暑い日が続いたが、すっかり寒くなった。さて、本日はペンクラブの90周年のイベント。文藝家協会の副理事長として招待されているので出席する。桐野さんと林さんの対談があることになっている。実際に出席してみると、なかなかおもしろい対談だった。林真理子さんの発言のなかで、文士劇の責任者として、文芸家の墓地について、二度、こちらの名前が出てきたのでドキッとした。ペンクラブは昔、理事をしていたことがあり、言論表現委員会にも参加していたことがある。去年は視覚障害者の本を読む権利の問題で3回くらいシンポジウムをやってもらったので、知り合いが増えた。こういう集まりで知人と旧交を温めるというのが、大事なことだとはわかっているのだが、どれくらいの親しさなのかとっさにわからず、対応に苦慮することがある。誰かがこちらに近づいてきた時に、知人なのか初対面なのかとっさにわからないこともある。テレビなどで見かける有名な人もいて、テレビで見かけただけなのか、実際に会ったことがあって会話もしたことがある人なのか、これもとっさにはわからない。とりあえず文藝家協会の事務局長と経理部長がいたので、その近くにいた。共通の知人が来るとわかりやすい。どうもパーティーというのは苦手だ。
11/27/木
昨日のパーティーで多くの人と言葉を交わしたが、だんだん世の中が悪くなっていくというのが、多くの人々の共通認識となっていた。トランプとか習近平とか、政治の問題もあるし、言論統制が強くなるのではという危機感もあるし、本が売れなくなっているという切実な問題もある。ぼくが作家としてデビューした50年ほど前は、出版文化の全盛期だった。それは政治的、社会的テーマがいろいろあった時代であり、人数の多い団塊の世代が本をよく読む人々であったということもある。インターネットというものがなかったので、本や雑誌を読むしか情報を交換する手段がなかったということもある。その当時の編集者は皆、リタイアしてしまって、作家だけがかろうじて生き残っている。何か問題があればどうすれば改善されるかを考えるべきだが、政治の問題も、言論統制の問題も、本が売れないという問題も、不可逆の趨勢だと思えてしまうので、そこが何よりの問題だと思われる。
11/28/金
アメリカはサンクスギビングの木曜日。通常の木曜日はナイトゲーム1試合だが、この日は午後から試合が始まって3試合ある。で、ネットで結果を確認。チーフスはカウボーイズに惜敗。6勝6敗となった。ついに土俵際に追い詰められた。11勝6敗がプレーオフの当確ライン。もう1つも負けられない。まだチャンスはある。トーナメントになれば1つも負けられないのだから、来週からプレーオフに入ったと考えればいい。パチェコが少しだけ出場できた。オフェンスラインがまだ弱そうだが、マホームズはパスを投げまくっている。ここからは自分で走ることも解禁しないといけない。1つ負ければシーズンが終わる。すごい状況になってきた。レイブンズもベンガルズに負けて土俵際だ。いったいAカンファはどうなるんだ。このままペイトリオッツがスーパーボウルまで駆け上がるのか。ブロンコスが台頭するのか。
11/29/土
孫娘の滞在もあと数日になった。もともと子どものころからよくしゃべる子だったが、三ヵ月の滞在で、すらすらと言葉が出てくるようになった。ただ漢語はわからない。漢字というものを学んでいないから、仕方がない。われわれは小学校から少しずつ漢語を習って日本語の教養を身につけてきた。これには長い年月が必要だ。病院での研修は、他国からの留学生もいるので基本は英語なのだが、わが孫娘は日本語がある程度できるので、医学用語だけ英語で言ってもらえば理解できる。この研修はよい体験になったと思う。考えてみると、ぼくの作家としてのデビュー作は、高校時代に発表した作品は別として、『僕って何』というタイトルの作品で芥川賞をもらったのが出発点だった。子どもが大人になって何ものかになっている。その過程の不安を描いたものだったが、ぼく自身は作家という不安定な仕事をずっと続けてきたので、自分が何ものであるかが、よくわからないままだった。長男がスペインに行き、長女が生まれ、妻と二人でスペインに行って、長距離バスから下りて迎えを待っていると、遠くから孫娘がぼくを見つけて、「じいちゃん」と声をかけてくれた。その時に、ぼくは「僕って何」の答えが見つかったと思った。ぼくは「じいちゃん」なのだ。この三ヵ月、ぼくの一人称は、「じいちゃん」だった。「じいちゃんはね……」と語りだして、思いを伝える。三ヵ月間、ずっとじいちゃんだったのだ。あと数日で、孫娘は帰国する。ぼくも「じいちゃん」を卒業させてもらって、もとの自分に還りたいと思っている。
11/30/日
今月も月末になった。「崇神天皇」というタイトルのノートもまだ続いているが、第一作のタイトルは『崇神戦記』とすることにした。原典のタイトルは「角王」だったのだが、これでは意味不明だ。主人公は角のある勇者だが、「日本書紀」に記されている崇神天皇の業績を踏まえて書いているので「崇神」の文字は入れた方がいいと考えた。ただ「天皇」は入れたくないので、「崇神戦記」とした。この巻は戦さの記述が多いので「戦記」でいいだろう。第二作は垂仁天皇の業績を書いているのだが、戦さはあまり出てこないので「垂仁伝説」とするかなと考えている。三作目は「日本武尊」、四作目は「神宮皇后」でいいと思っている。
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