●「僕は天使に嘘をつかない」
●松苗あけみ
●ぶーけコミックス
●全1巻
●集英社
●「ふりむいてねゴードン」

(C)Akemi Matsunae

この「僕は天使に嘘をつかない」は、ちょうど「草迷宮」(内田善美)のが巻頭で掲載された号から連載が始まりました。松苗先生の淡い色彩のカラーは、「草迷宮」でボーとした頭を幻想的な世界へと誘うには十分過ぎるほど魅力的でした。単行本では、あのカラーは再現されていないんですよね。ああ、スクラップしておけばよかった。

すでに使用されなくなった西校舎は、新生徒会長の生方鮫行の手により生徒たちの愛の交歓場となっていた。そんな鮫行が、校舎の窓から見た天使、それが一年生の佐井藤契だった。付き合っている好(このみ)とのすれ違いに疲れた鮫行は、ガラでもない契との清らかな恋に憧れる。しかし契の思い人は、鮫行がこき使っている副会長の和夢先輩。早くも憧れがガラガラと崩れる鮫行だが、学校の教師である契の兄の勘違いで、なぜか契と付き合っていることに。契は、和夢先輩のことを想いながらも、妙に母性本能をくすぐる鮫行のことが気になり、二人は急接近するのだが……。果たして鮫行は想いを遂げる事ができるのだろうか? なんてことよりも、個人的には不倫の恋に悩む好ちゃん(右イラスト)のことが気になっていたのでした。

正直なところ和夢くんは男としては頼りなく、鮫行にしても責任感のかけらもない子供です。結局、和夢くんや鮫行がぐずぐずしている間に、契は少女から女性へのステップを一段登ってしまいます。やはり、この年頃は女性の方が男性よりも大きく成長しているということなのでしょう。

この作品は、松苗先生がこの後「ぶ〜け」で描かれる「純情クレイジーフルーツ」や「山田くんと佐藤さん」といった世の中をちょっと斜に見ている少年少女たちを、ありのままに描いていく松苗流の学園ラブコメのルーツともいえます。人生に疲れた大人たちを見て、夢は持つまい、現実を見ようと言葉にしながらも、夢や憧れを捨てきれない少年少女たち。そんな彼女たちを同じ高さの視点から描くことによって、松苗先生は「ぶ〜け」読者から絶大な人気を獲得しました。最近では、活躍の場を少し読者の年齢層が上がった雑誌へと移してしまいましたが、基本的に描いているのは学園モノと同じ、夢と現実のギャップの中で強く生きていく女性たちのような気がします。


松苗あけみ(まつなえ・あけみ)

デビュー作/「やくそく」1977年(リリカ)
主な掲載誌/「リリカ」「ぶ〜け」「YOUNG YOU」
主な作品等/「マジックラブ・チャイルド」「僕は天使に嘘をつかない」
白白白白白白「純情クレイジーフルーツ」「ロマンスの王国」
現在の活動/集英社、白泉社、講談社といろいろ描かれてます。
白白白白白白最新刊は「結婚よそうよ」講談社(1999.5)


戻る