Margaret Organ-Kean。WotC社の提供してくれるデータが「Autumn Willowの秘密」だけだったりするものだから非常にフラストレーションがたまっていたわけですが、最近絵師ラヴなインタビュー記事を立て続けに掲載してくれるナイスサイトとなったmtgnews.comがかなり気合いの入ったインタビューをものにしてくれました。今回も彼女のこだわりに満ちた衝撃の些末事実が次々と判明します。
しばらく大がかりな翻訳から遠ざかって(=怠けて)おりましたらすっかり絵師文体模写ができなくなっておりまして、代わりに「抄訳をうまくごまかすDJ風セルフスクラッチ&BeatManiax文体」がマイブームになっております。特徴としては;
1)わたくし的関心レベルが一定以下の段落は任意にカットアウトされます
2)論理構成に従ってパラグラフの順序が随時入れ替わります
3)内容の素描に紛れて謎の一人ボケ&ツッコミがcoooolなタイミングで挿入されます
4)明治時代に横行したといわれる「翻案」よりは遥かに良心的だと思いたいのですが真面目なトランスレートだとは到底言えません(以上言い訳)
ワシントン州Everettに1960年1月5日生まれ。わたくしと誕生日が同じだぜ!現在は実家に程近い北シアトルに、ダンナのBruce氏と暮らしている。母親が友人の誰かから送られた Kay Nielsen のイラスト入り絵はがきを眼にしたとき、プロになることを意識したという。彼の著作である East of the Sun and West of the Moon(邦題「太陽の東、月の西」)を図書館で見て『その豪奢な色使い、複雑な構図、そして何よりセンス・オヴ・ワンダーを自分のものにしたいと思った』。同時代の画家であるRackhamやDulac、先達であるビアズリー、日本の浮世絵にも関心が深いという。初めて絵を売ったのが13歳のとき、SF・ファンタジー畑での最初の仕事はTuscon World Fantasy ConventionでのCopper Starというアンソロジー本、プロダム系での最初の仕事はマリオン・ジマー・ブラッドリーのファンタジー本だそうだ。Wizards of the Coast社の名前はかねてから聞き及んでいたが、93年のサンフランシスコにおけるWorld SF-Con(ConFrancisco)でMagicを目撃、その週のうちにJesper Myrforsに作品を送っていたそうだ。彼女の迅速な営業活動は即座に身を結び、Antiquitiesには早くも作品が採用されている。第6版でついに落ちてしまった<<Amulet of Kroog / クルーグの護符>>と<<Ivory Tower / 象牙の塔>>である。
・・・セットとしてはMirageが気に入っているようだ。4枚のカードが論理的に対をなしているのがとても美しいし、<<Zebra Unicorn / 一角ゼブラ>>が会心の出来だからだそうだ。
自分の描いたカードでどれか1枚を選ぶのはとても難しいながら、でもやっぱり Kaja Foglio を描けて自分の作品の中でも屈指の出来映えだと自負する<<Autumn Willow>>や<<Cloak of Confusion / 困惑の外套>>、<<Lion's Eye Diamond / ライオンの瞳のダイアモンド>>、<<Mana Prism / マナ・プリズム>>、<<Hipparion / ヒッパリオン>>などが気に入っているらしい。<<Dwarven Pony>>(ホームランド)は彼女自身のかつての愛馬、Smokeyを描いたものだ。<<Implements of Sacrifice>>(フォーレンエンパイアのカードだ)は彼女自身を描いた最初のポートレイトである。原画は決して手放さないそうだ。
しばらくカードアートから遠ざかっていたものの、Legends of the Five Rings(L5R)やLegend of Burning Sandsなどで復帰を計っている。Magicに戻ってくるかどうかは・・・↓のコメントから察するしかないだろう。
(よく聞けよ>某社)かつては友人と昼休みのほとんどを使ってMagicに興じ、アメジストとシトリンをライフカウンター代わりに購入したくらいだった彼女も、今はもうMagicをする気にはなれない、という。『率直にいうと、Wizards of the Coast社がかつて行い、わたしが言える限りにおいても今なお行われているアーティストたちへの、そしてほかのクリエイティブな人たちへの仕打ちを見て、ゲームそれ自体に対する興味が著しく損なわれてしまったの』・・・現役の絵師にしては非常に率直なコメントではないだろうか。
(ちなみに貴石、半貴石と呼ばれるアメジストなどの綺麗な石は、「ミネラルショー」に代表されるイベントや採石地近くの土産物屋で驚くほどの低価格でゲットする事が可能・・でありましたが昨今の石ブームお宝ブームによって値段もつり上がる傾向にあります。彼女も言ってますがこういう石をカウンターに使うと「マヂ?それホンモノ?」という会話で5分はデュエルが中断しますのでトーナメント環境下では使用が禁止されているくらいです(ウソ)。)
絵を描いていないときはWebクリエイションの仕事をしたり、SF・ファンタジー系の本を読んだり、靴箱7箱分のガラスビーズや石のビーズでアクセサリーを作っているようだ。このアクセサリーは自分用だったり友人用だったりするようだが、Autumn Willowのイラストに描かれているネックレスはこのようにして実際に制作され、ときどき自分で身につけたりしているらしい。最近の会心のお買い物は日本の絹羽織だそうで、オンライン・オークションでゲットしたんだそうだ。
イラストを手がけるプロセスを教えて欲しい、と言われて彼女は「Autumn WillowやIvory Towerの話は2度はしたから・・」と言ってHipparionの制作過程を語ってくれる。ところでIvory Towerの裏話を御存知の方は御一報下さい。Hipparionにはこんな話がある;
どういうわけか、Hipparionが馬の祖先だと言う事を彼女は知っていた。情報をInternetで収集しようにも、サーチ結果に出てくるのはMagicのカードばかりだ!しょうがないのでワシントン大学まで出向き、最大の特徴が足の先の蹄が3本に分岐していることだと知る。現代種の馬は蹄が一本ね、為念。筒井康隆も確か指摘していた事だが、恐竜がアーミーグリーンか灰色の体色を割り振られるのと同じくらいのワンパターンさで有史以前の馬はぜんぶ焦げ茶色の体毛を生やしていた事になっている、ナゼナゼ?ところが彼女が閲覧した資料ではHipparionがなぜか白馬だった。気まぐれ?へそ曲がり?酒の飲み過ぎ?いえいえこれは冬毛なのね、そうよ冬になれば猫の毛だって生えかわるし兎だってあざらしだって冬毛になるし、馬の祖先が同じことをしなかった筈ないものね、というわけで彼女の作品中のHipparionは元いた「夏の」世界から傍若無人なウィザードの召還に応じて「冬の」世界に呼び出され、ゲートをくぐる瞬間に冬毛に衣替えしている様子が描かれたという次第。3本蹄がジャンプしているときどう見えるかを決めるのにずいぶんかかったそうだ。
背景描きにはなんとびっくりMac互換機でぐりぐり動くBryceを使ってみたそうだ。夏バージョンの土地を作ってプリントアウト、それに雪をかぶせてもっぺんプリント、両方を参照しながらイラストを起こした。同様の事は、凝った地形や景観を再現するときしばしば用いるということだ。
さあ彼女のイラストで有名なアクセントになっているタイル・パターンについて彼女はどう語っているだろうか?
「わたしがルネサンス以来の西洋絵画に常につきまとってきた根本的矛盾だと思っているある要素に関係があるの・・・絵は窓である、という考え方ね。ほんの子供でさえ、絵は平らで窓とは全然違うと指摘する事ができるでしょうけど、『リアル』な事物や風景を『リアルじゃない』タイル文様の枠に収めることで2つの矛盾が絵の中で対置されるようにしているの。本来3次元の事物をリアルに描いたほうが*本当に*リアルに見えるのかしら?表面を覆うタイルパターンは真実、フラットなのに」
・・・あと、パッチワークのような織物のアートが好きなのもある、という。白状すると布地をまっすぐ縫えた試しがないので、多少腕に覚えのある水彩で似たようなことをしているんだそうだ。
ちなみにMirageでは四角のパターンの代わりに、バックグラウンドストーリーに顕著に表れている3角とダイアモンド様を使ってみたそうだ。芸が細かいぜ!
Ivory Towerの裏話も是非読みたいところですが、どこに行けば読めるんでしょうねえ?彼女のこの記事を読む限り、第6版に新作のイラストが収録される可能性は・・・薄いんでしょうか。