QUdrive 6BQ5 CSPPアンプ




 前章の12BH7AのCSPPアンプも

音は良かったのですが、今回は高感度五極

管の6BQ5に載せ換えてみました。出力

管の感度が上がり強力なKNFが掛かる事

で、メリハリの効いた低音を狙いました。

またOPTが前回のままでは出力が7Wに

抑えられ、6BQ5にとっては容量不足な

ので、ついでにOPTも変更しました。

 今回のOPTは染谷電子のASTR−20で、8kΩ使用時の出力容量が14Wという6BQ5に

は丁度ピッタリのOPTになっています。これで出力管周りの配線とOPTを変更して終わりなら良

いのですが、今回の6BQ5に以前のような300V強のB電圧を掛けてフルスイングしたら20W

近く出てしまうので、出力段の電源電圧を下げなければなりません。一方、ドライブ段の電源電圧は

逆にさらに上げたいので、電源回路は倍圧整流を組み合わせた高低二段の電源としました。

 ドライブ段は引き続きQuadU式位相反転回路ですが、一箇所だけ「〇印の抵抗」の値を変更し

ています。この抵抗はACバランスを取る抵抗で、本機は高感度な出力管の採用により増幅部の利得

が上がり負帰還量も増えているので、前回の値のままではACバランスがズレてしまいます。本来は

計算で適正値が出せるようですが、私は歪率を見ながら抵抗値を変更して現物合わせでACバランス

をとりました。

 という事で以下のような回路になりました。



 このQuadU式ドライブ段の解説についてはAyumiさんのページに詳しく載っているので、

興味があるようでしたら参照して見て下さい。



 製作のポイントとしては

1.本機に新しく採用したOPTは、染谷電子から発売されているCSPP用のトランスで、詳細に

  ついては染谷電子のページをご覧下さい。

2.電源トランスは引き続き型番のないジャンク品を使いましたが、既製品ならゼネラルトランスの

  PMC-190Mを使えば簡潔で良いと思います。なおゼネラルトランスのページはこちらです。

  以下に電源回路例を挙げておきます。




3.出力管は既に述べているように6BQ5で、この出力管をそのまま動作させたら20W近く出て

  しまうのですが、HK耐圧の制限で出力は10W程度に抑えた方が「吉」で、上記の電源回路の

  ように6BQ5への供給電圧は280V程度に抑えて下さい。



諸 特 性


 まずは各周波数の歪率特性で、前章

でもQuadU式ドライブ回路らしく

高域の数値が良くなかったのですが、

本機でも高域だけ離れた値になってい

ます。出力管の静電流を増やせば数値

も良くなるのですが、現状でも音的に

悪くないのでこれで良しとしました。

 なお出力波形がクリップを始めるポ

イントを無歪出力とし、歪率5%の時

を最大出力として併記しています


利得 16.5 dB (6.7倍)

NFB 8.0 dB (2.5倍)

DF= 15.4 on-off法 /1kHz 1V

無歪出力10.6W THD 2.7%/1kHz

最大出力11.3W THD 5%/1kHz

残留ノイズ 0.38mV

F特 10〜93kHz/−3dB






 さらに周波数特性ですが、前章同様のドライブ段なのでそれほど広帯域という訳には行きませんが、

途中に山谷はなく滑らかに落ちているのは特筆ものです。さらに僅かですがNFが増えたので、最終的

に10〜93kHz/−3dBの素直な特性が得られました。




 上記のように素直なF特なので見るまでもないのですが、一応は高域安定度の確認で10kHzの方形

波応答も見たのですが、負荷開放でも全く問題なく整った方形波を出力していました。



 なお、本機のドライブ段にはまだ余裕があるようで、出力段の電源電圧を上げれば最大出力も連動

して増加します。しかし6BQ5のヒーター、カソード間耐圧の関係で、これ以上の出力を望むのは

止めておいた方が良いです。或るCSPPアンプを愛用されている方の6CA7csppアンプで、

HK耐圧を見逃して高出力動作で鳴らしていたところ、いつのまにか、アンプから「プツブツという

ノイズ」が出るようになったそうです。有名なマッキントッシュのアンプでも、様々な出力管が使用

されましたが6CA7/EL34だけは使われなかったのも、同様の問題があったからでしょう。



 後  記

 本機は前章の回路を踏襲しつつ、なるべく少ない改造で出力管を6BQ5に変更したのですが、得

られた音の印象は大分変わったように感じます。出力が増えた事も影響しているのでしょうが、KN

Fが増えた事で低域がさらにエネルギッシュになったように感じます。電源部が二段電源になって、

前章のセットよりもやや複雑になりましたが、それだけの効果は得られたように思います。