6BQ5 島田式cspp アンプ






  このアンプは回路的な興味というよりは、

 島田式CSPPの試作過程で使用した長期在

 庫の安物OPTが案外良い結果を出したので

 同じく昔安く買って、長らく埃を被っていた

 ジャンクPTと組み合わせる事で、長期在庫

 トランスを一挙に整理しつつ、市販の通常用

 OPTで高性能なCSPPアンプに仕上げて

 しまおうという、製作動機が少々不純でかつ

 性能的にも欲張ったセットです。

 そのような訳で、回路的には前章の6CW5島田式CSPPアンプと同じ島田式CSPPですが、今回

は市販の通常(DEPP)用OPTを使うのでインピーダンスを合わせる為に、出力管を6BQ5に変更

し、さらに両出力式としました。このプレート側からもカソード側からも出力を取り出す両出力式で二次

側の巻線を直列接続とすれば、OPTの1次側インピーダンスとしては、DEPPの場合に適合していた

出力管をそのまま使う事が出来ます。この辺りの詳しい事は、先に試作機を組んだ時のレポートを文末に

リンクした別章に纏めましたので、そちらの説明も併せてご覧下さい。重複するので更なる説明は省きま

すが、増幅部の回路は以下のようになりました。




 次に電源部の回路ですが、むかしジャンクで買ったPTがテレコ用のトランスだったようで、巻線電圧

が30V程度しかないので、6倍圧の両波整流や倍圧整流等を組み合わせて必要な電圧が得られるように

しています。この6倍圧整流回路は少々工夫したところで、通常のコッククロフト回路で6倍圧とすると

トランス側からは両波整流になっていても、平滑回路側から見ると半波整流となってノイズの多い電源と

なってしまうのです。その点、今回の回路だとトランス側からも平滑側からも両波整流となるので、ノイ

ズの少ない電源を得る事が出来ます。また平滑コンデンサーの容量も回路に流れる電流を考えて配分して

いるので、高倍圧整流にも拘わらず計算通りの出力電圧を得ています。

 なおヒーター用のトランスは12V巻線しかないので、2本づつシリーズで供給するようにして巻線の

接地は6DJ8の中点を接地しています。




 もっとも、こんな電源回路を組んだのは手持ちPTの整理の為ですから、もしも追試を考えられる方は

通常の電源トランスを使う方が良いと思います。例えばノグチのPMC190Mや、春日のKmB250

F2等が使えますが、春日のPTの場合もヒーター配線は本機と同様にすればOKです。さらに負電源や

前段用の低電圧電源については小型トランスを追加すれば良いと思います。ただしB電圧は本機のように

280V程度に抑えて下さい。出力管6BQ5のEhkは100Vなので、10W以上の出力ではこれ

が耐圧オーバーとなってしまうからです。

 一方、今回のセットではOPTを4つとB電源用PTにヒーター用トランスと、合計6個もの裸のトラ

ンスをシャーシ上に並べるので、これを今までのような弁当箱シャーシで体裁良く組むのは困難と思い、

パネル付きケースに組む事にしました。これで全体の外観はすっきりするのですが、メインアンプなので

操作ノブが電源SWとボリュームだけしかなく、デザイン的に広い前面パネルが寂しいので、飾りを兼ね

てレベルメーターを付けました。このメーターも当初は適当に振れていれば良いと思っていたのですが、

アンプの方が意外と良い結果を見せたのでメーターの振れ方にも欲が出てしまい、メーターアンプは簡易

型ながら対数アンプとしました。


 これで入力4V/2W/8Ωでフルスイングさせる事が出来ました。アンプの最大出力は10W強です

が、我が家での夜間の常用出力は0.1W 程度のようで、この位の感度にしないとメーターの針が動かな

くて面白くないのです。その代わりメーターの過大入力保護用にゲルマダイオードを抱かせています。

 このメーターは使わなくなったソニーのカセットデンスケから取り外したもので、約200μAで振り

切れます。さらにDC抵抗が220Ωなので、ゲルマダイオードの順方向電圧0.1Vでほぼフルスケール

となり、それ以上の電圧が掛かるのを防いでいます。



諸 特 性


 DEPP用のOPTをCSPP 

で使う時の泣き所は出力ロスが増 

える事ですが、何とかノンクリッ 

プで10W強が得られました。

 一方の歪率特性も、残留ノイズ 

の低いお陰か小出力域では低歪で 

推移しているのが目を惹きます。 

 さらにDFも高い値を示しCS 

PPアンプの本領発揮というべき 

特性を見せています。



無歪出力10.6W THD1.4%1kHz 

利得 17.5dB(7.5倍) 1kHz

NFB  11.4dB

DF=14.3 on-off法1kHz 1V 

残留ノイズ 0.15mV

F特 10Hz〜120kHz/-3dB 


 次に周波数特性で、高域の100kHz付近に緩い盛り上がりがあるのですが、そこから急峻に落ち込む

カーブを見せています。本機は違う種類のOPTを組み合わせて使っているので、当然高域の特性も違い

特に東栄のOPTは高域が伸びないので、初段の高域特性と近くなってピークを生じ生じてしまったよう

です。

 その所為か補正無しの負荷開放では、大したピークでもないのに発振を起こしてしまいます。ただこの

発振は、初段に積分補正を掛ける事で完全に止める事が出来ましたが、それでも最低限の補正にしたので

補正後でも僅かに盛り上がりが残ってしまいました。

 最終的な高域特性としては、10〜120kHz/−3dBとなりました。




 方形波応答を見ると、補正後でも僅かにオーバーシュートがありますが、これは80kHz付近の急激

な落ち込みの所為ではないかと思います。それでもリギンクなどはなく負荷開放でもほとんど乱れはあり

ませんでした。




 負荷開放時に不安定になるのは別章の試作アンプでは見られませんでしたので、高域の伸びない東栄の

OPTを組み合わせた所為だと思います。初段が五極管特性のFETで動作電流も0.5mAと絞ってい

るので、この段の高域特性は数十kHz程度と思われ、出力段は出来れば上下とも春日のOPTを使えば

補正が無くても平坦な特性になったと思います。これを安定させるのに、ゾベル補正も含めて出力段側の

補正は当然ですが全てNGでした。OPTに強力なKNFを掛けて高域を伸ばしているので出力側の補正

は逆効果になる為で、本機は幸いにも初段の補正がよく効いて安定に動作しています。

 もっとも、これを追試する方はいないとは思うのですが、やるとしても、同じOPTを4っつも持って

いる方は稀で今回のように違う種類のOPTを組み合わせて使う事になると思うので、その時の参考には

なるのではないかと思います。



 雑 感

 夜になるとバックライトに照らし出されるレベルメーターが意外と綺麗ですし、その針が音楽に合わせ

て小気味良く動く様をぼんやり見ているのも良いものです。また真空管アンプというと、最近は真空管を

見せるように配置するのがセオリーみたいになっていますが、昔はこのようなケース入りの真空管アンプ

が多く見られたものです。そんな懐かしさも覚えて、相変わらずの自画自賛ではありますが、デザイン的

にも成功したのではないかと思っています。