UKを知ろう


映画の台詞に出る「タイタス・アンドロニカス」

(知っていれば場面が一層面白い)


最近見た二つの映画に、談話室第27回第28回で紹介しましたシェークス
ピアの初期の作品「タイタス・アンドロニカス」が、延べ三度登場しました。

いずれも、作品や監督や出演者がアカデミー賞受賞やノミネートされた有名
作品ですから、すでに皆さんご鑑賞済みと思います。
「タイタス」が英米豪の人々の常識の範囲になっているのかなと推定されます
ので、参考までにまとめました。

まずオーストラリアの生んだ名監督ピーター・ウィアーの「いまを生きる」
(原題DEAD POETS SOCIETY)(第62回アカデミー賞最優秀オリジナル
脚本賞) のなかで、ロビン・ウィリアムズ演ずる英語の教師ジョン・キーティ
ングが生徒に、詩を創らせたり、自分もシェークスピアの文章などを朗読します。

厳格な進学校の生徒らに、さまざまな方法で『思慮深く生きる』
ということを、考えさせ人間的成長を促していく教師の姿が、
私には印象深い作品でした。

さまざまな、文学作品(詩が中心ですが)が、織り込まれていましたが
彼が授業の中でマーロン・ブランドを真似て「おータイタス・・・・・・」と呼び
かける場面がありました。

もう一つは第71回アカデミー賞最優秀作品賞など多数受賞した「恋におち
たシェークスピア」の中で、鼠を猫に食べさせる女形志望の少年俳優が、
シェークスピアに「タイタス・アンドロニカスに出演して、首を切られた役
をした。芝居はドバッと血を流さないと面白くない」
というこましゃくれた意見を言うシーンがあります。



さらにシェークスピアが、友人マーローを恋敵ウェセックス伯に殺されたと
慨嘆し、悩むシーンがあります。
その時彼は
「わが作品タイタス・アンドロニカスはマーローに影響されたところが大きい」
と友人の死を惜しみます。

蛇足ながら、シェークスピアが劇団の仲間と淫売屋に繰り込むシーンでは、
シェークスピアの傍に来た売春婦の「殿方は・・」という問いに、
「ウィリアム征服王(コンクェラー)」
と応えるシーンがあります。
シェークスピアのファースト・ネームと、ヴァイオラと夜を過ごした洒落でしょう。
グウィネス・パルトロウ演ずる男装のヴァイオラを前にしてこれも面白いと思い
ました。

タイタス・アンドロニカスには多くの復讐や猜疑の殺人があります。
シェークスピアの作品としてはドタバタ過ぎて、日本での評価は低いかも知
れません。しかし、その英米豪人への影響は意外に大きいようです。
ブロードウェイで今なお上演されるのもこの証左でしょう。
『大石蔵之助』の討ち入りのように、「タイタス」は報復殺人をイメージさせる
代名詞になっているのでしょうか。

今後も英米の演劇や映画の台詞のどこかに引用されることがあるでしょう。

談話室第27回
標題:シェークスピアの“Titus Andronicus”
談話室第28回
標題:シェークスピアの“Titus Andronicus” (あらすじ)

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