晴耕庵の談話室

NO.27


HELLO AND REQUEST

99/3/13
標題:シェークスピアの“Titus Andronicus”

ロンドン憶良様


 今日は。僕は現在、ニューヨークでアテもないフリーランスのデザイナー
をしている者です。つい先日、シェークスピアの“Titus Andronicus”という
近々ブロードウェイで公演されるミュージカルの広告(ポスターなどを含む)
のデザインを依頼され、リサーチに力を注ぎたく詳しい方に伺ってみようと
思い立ち、お手紙した次第です。また、憶良様御自身がどの様なポスター
だったら劇場に向かってみようかしら、と思われるか率直な御意見を戴け
たら幸いです。

 お恥かしいことに、僕自身シェークスピアなどという高尚なブンガクとは
ほとんど縁がなかったものですから、できればこの物語のあらすじを、小さ
な子供に噛んで含むように御教授を賜わりたいのですが...

 このプロジェクトを機に僕もブンガクに興味がもてたらと淡い期待を持っ
て取り組んでいます。

 それではご返事をお待ちしております。突然のワガママをお許しください。

草々
                                          M.I.


ANSWER

99/3/15

M.I.様

メールありがとうございました。
ちょっと海外へ出ており今日15日帰国して拝見しました。

ブロードウェイで公演されるミュージカルの広告(ポスターなどを含む)
のデザインを依頼されているとのこと。ご活躍をお祈りします。

私はシェークスピアの専門家ではないので、ホームページを通じて最近
知り合ったシェークスピアを原書で読む会の方に早速協力を求めました。
その方のご返事有り次第連絡します。

手許の百科事典ではシェークスピア初期の人気あった悲劇とかで、シェ
ークスピア作品最初の挿絵として掲載されていました。

私もこの機会にタイタス・アンドロニカスを読んで、私なりにまとめて見ます。


                            ロンドン憶良


THANKS

99/3/16

ロンドン憶良様

 早速のご返事どうもありがとうございます。
海外から帰られたばかりの忙しい中、こんな見ず知らずの無学者のため
にお時間を割いてくれることを心から感謝しています。

 憶良様自身もタイタスに挑戦なさるそうで、もし可能なら、読後どの場面
が最も印象的だったかを教えていただければ、よりいっそううれしいのです
が... 頑張ってください。

 今後ますますの御活躍をお祈りします。

草々
                                  M.I.


INFORMATION

M.I.様

昨日木下順二訳のタイタス・アンドロニカスを読みました。
登場人物が多数過ぎてごちゃごちゃしていますが、これはシェイクスピア
の若い時の作品で、初めての悲劇物という解説に納得しました。
(蛇足ながら訳者木下順二氏の文末解説が面白い)

人のよい将軍タイタス・アンドロニカスは後のオセロに、またムーア人の極
悪人エアロンはイアーゴにと置きかえられるでしょう。オセロ以上に面白い
のは同時に妖婦女王タモラの存在でしょうか。

興味を持ったのは、悪人にも一部の言い分をいわせまた善人サイドにも
人間的マイナス面を出していることでしょうか。

また強姦とか不倫とか極めて猥雑かつ責め苦の生殺しなどエログロが多
く、文学作品としてはどうかと思いますが人間の奥底の本能を剥き出しに
しているとも読めます。

ミュージカルは多分何人か整理され、かつ登場人物の性格や発言も取捨
選択されて、すっきりした形に仕上げるのでしょう。そうすれば現代的な素
晴らしい作品になりそうですね。

黒人のエアロンの白人社会に対する自虐的かつ復讐的発言はそのまま
上演されるのでしょうか。ブロードウエイの反応が興味ぶかいです。

絵になるのは錯乱のタイタスが、強姦され両腕舌を切られた愛娘ラヴィニ
アを刺す最終シーン。女王タモラ極悪人エアロン皇帝サターナイナスに報
復するタイタスの息子ルーシャスやマーカスを配すれば、面白いポスター
になりそうですね。

近日アップロードする画像を描かないといけないので、筋書きのまとめは
少し先になりますが、・・・

                    ロンドン憶良


THANKS

99/3/19

ロンドン憶良様

 どうもどうも。タイタスについて色々調べて下さり、誠にありがとうございます。
さらに絵になるシーンをイメージして下さるなど、さすがご自分で描かれるだ
けあって絵ゴコロがわかっていらっしゃると感じました。

 憶良様もホームページ作りを始め色々お忙しいでしょうが、新しい分野へ
の挑戦など今後もますます御活躍下さい。又、新作も期待しています。

                                   M.I.


INFORMATION

M.I.様

1)現代風タイタス・アンドロニカスのポスターについて

タイタスについてシェイクスピア読書会のH・Mさんから参考資料を頂きま
した。その中に現代風の解釈で上演された際のポスターがありますが、そ
れはコック姿のタイタスが人肉(タモラの息子)のパイを出してタモラとサタ
ーナイナス夫妻が食べ、関係者が見守っているシーンでした。
シャンゼリーゼにみかけるようなしゃれた道路際のカフェ・テラスの設定で
す。

H・Mさんのおっしゃるように、どのような解釈で上演されるかによって、押
さえ方が異なるのでしょうね。

2)現代企業内紛風タイタス・アンドロニカス

電車の中でふっと思いつきました。
ローマ皇帝とか護民官とかゴート族とかをちょっと置き換えてみれば、意外
に身近な劇かもしれないと。

先帝=先代社長
サターナイナス=社長の椅子を狙う無能の先代の長男
バシェイナス=同じ権勢欲の先代の次男
タイタス・アンドロニカス=海外勤務で実績をあげ社内外の人望ある実力
                専務ただし古風な道徳観で策謀に弱い
マーカス・アンドロニカス=兄思いの誠実な常務
タモラ=タイタスが倒産させた競合先の年増美人社長
エアロン=タモラのお抱え運転手
ルーシャス=一旦会社を去り力をつけ旧勢力を一掃する人望ある新社長
ラヴィニア=可愛いいがちょっと婚約に軽率だった専務タイタスの愛娘

これは私がもとビジネスマンだったからでしょうか。
ではまた
                              ロンドン憶良

INFORMATION

M.I.様

シェイクスピアを読む会のH.M.さんから下記のアドヴァイスを頂きましたの
で、ご参考までに転送します。

どのようなミュージカルに仕立て上げられるのか興味があります。ご成功を
祈ります。

『メールを頂きながら、関西へ出張しておりまして失礼いたしました。
タイタス・アンドロニカスについてシェイクスピアの会で話題に出しましたが、
この作品は日本で上演されることはまれで、チューターの関場理一先生も
これまでに一度見た事があるだけだと言っておられました。
通常のブロドウエー・ミュージカルに仕立てるには恐らくかなりの翻案がな
されるものとおもいますので、演出家とのコミュニケーションが最も重要かと
考えます。何か情報が入ればお伝えいたします。ではまた。
                                   H.M  』

                            ロンドン憶良

            
晴耕庵の談話室(目次)へ戻る

ホームページへ戻る