大英帝国の旧植民地シエラレオネの内紛(3)

混迷の紛争、急転解決か(速報)
カバ大統領、近日和平会談開催を表明


シエラ・レオネの内紛について2回にわたり、過去の経緯と問題点を
解説してきたが、ここ数ヶ月は寄せ集めの国連平和維持軍が反政府
軍に捕虜になるなど混乱を極めていた。

最近では「West Boys」と呼ばれる若者の武装無法者の集団が現
れ、社会の混乱が一層進んでいた。政治思想もなく、ドラッグを吸い、
金のためなら政府軍にも反政府軍にもつき、何でもするという若者た
ちが発生していた。
(政府軍・反政府軍ともに無理に少年たちを狩りたて兵にしたしっぺ
返しかもしれない)

一方、アフリカ諸国など発展途上国の参加を主とした国連平和維持
軍は、装備も軍事能力も劣り、武力では反政府軍を抑えることは出来
ず、旧宗主国の英国政府に再び軍事支援を求め、英国政府は500名
の派兵を内定していた。

ところが急転直下、和平の兆しが出てきた。
背後で誰がどう動いたのか?



2000年11月4日のBBC News WORLDによれば、カバ大統領
はこの水曜日に、反政府軍のRUF(革命統一戦線)とナイジェリアで
和平会談を開催すると表明した。

これは本年5月に内戦が再発以来、初めての両派トップクラスの会談
であり、国連代表とシエラ・レオネ経済界代表も参加するようである。

会談に先立ちカバ大統領は
「予定されている会談で懸案の恒久和平を実現し、政府が全力をあげ
てこの国から貧困を根絶することに注力転換できるよう希求祈念して
いる」と述べている。

"We are hoping and praying that this scheduled meeting will finally
result in the achievement of sustainable peace in our country so the
government can turn its efforts to eradicating poverty," he said.

事態が急遽解決に向かうようになったのは、両派に次の背景があり、
勢力の均衡(Balance of Power)が変化したと BBC特派員は解
説している。

政府側の要因
(1)国連平和維持軍に対し、支援国からの軍事支援に限界があるの
  で軍事力ではもはや反政府勢力の鎮圧は至難であると感じている。

RUF側の要因
(1)前指導者サンコン(Foday Sankoh)が政府軍に逮捕拘留されて以
  来RUF内部の結束が乱れ、新指導者Issa Seesayの統率に限界が
  ある。
(2)RUFの資金源であったダイヤモンドの密貿易が、世界の市場から
  締め出され、軍備資金が不足してきた。
(3)背後でRUFを支援してきたリベリアが国際非難にあって、孤立化し
  ている。特に西アフリカの諸問題では、リベリアが背後にあるという
  認識がアフリカ諸国や国連でも問題となっており、これ以上RUFは
  リベリアの支援はえられない。


20世紀の終幕を目前に、ここでも十年越しの内戦の幕引きが行われ
そうである。

両者をテーブルにつかせる手配をしているのは、ブレア首相ではなか
ろうかというのが、憶良氏の推論である。
何故ならば、英国政府は歴史的にシエラ・レオネには巨額の投資をし
てきており、保守・労働党政権を問わず、旧植民地としては1人当りで
最高の支援をしてきている。
そのため、軍事支援にも「もうこれ以上軍事的な支援はいかがなもの
か」という英国内の世論があるので、早期和平が望まれている。

かっては西アフリカの中心都市国家として沿岸貿易で栄えたシエラ・レ
オネが、和平になれば、直接間接に英国は実利を得ることになる。

「貧困の根絶」を合言葉にまとまるのは、意外に近いかもしれない。
今週の会談の推移が見物である。


大英帝国の旧植民地シエラレオネの内紛(1)
大英帝国の旧植民地シエラレオネの内紛(2)

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